元アドテク業者のマイク・ノーレット氏は、友人からネット広告詐欺の疑いのあるwebサイトが、驚異的なインプレッション数を表しているという画面のスクリーンショットを受け取った。
「michaelgolf.com」と呼ばれる、そのサイトは1億6千百万回もの広告インプレッションを稼ぎ、CPM 9.16ドル(約1100円)が支払われることになっていたという。総額にすると報酬は、1週間で約145万ドル(約1億7000万円)。このサイトは1週間で100万人以下という訪問者数だったのに、それらの訪問者たちに1億6100万回もの広告を閲覧させていた。これは、1人あたり約170本もの動画広告を見たことになる。
このようなケースに対し、Googleは「隠し広告」を専門に摘発する部隊を持っている。過去にもコンテンツ価値があまりに低いため、信用が無いと判断された数百万ものサイトへの広告出稿を拒否してきている。しかし、ノーレット氏はFacebook、AOLや他のサイトでも詐欺とみられる活動の事例を探知したと指摘し、楽観視できる課題ではない。
「私は詐欺が本当に嫌いだ」と、元アドテク業者のマイク・ノーレット氏は、業界を揺るがしかねない話題に関して、自らの気持ちを語る。
ノーレット氏は最近、友人から、ネット広告詐欺の疑いのあるWebサイトが、驚異的なインプレッション数を獲得しているという画面のスクリーンショットを受け取った。GoogleのDoubleClick Ad Exchangeにて、怪しいWebサイトが動画広告インプレッション数の週間トップになっていたのだ。
「michaelgolf.com」と呼ばれるその疑惑のWebサイトは、なんと1億6100万回もの広告インプレッションを稼ぎ、CPM 9.16ドル(約1100円)が支払われることになっていた。総額にすると1週間で約145万ドル(約1億7000万円)を稼いでいた可能性がある。
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Googleはすでにこの詐欺行動を検出
ノーレット氏は「問題は、犯人がどのくらいこういった詐欺を続けていて、どのくらい逃れているのかだ。数百万ドル規模の詐欺ビジネスが裏で動いているようだ」と、詐欺と思われるWebサイトについての記事をLinkedInに投稿した後、米DIGIDAYの取材に電話で応じた。
同氏がGoogleにコンタクトをとったところ、Googleはすでにこの詐欺行動を検出し、取り締まりに向けて動いていたという。また、同氏のレポート後、どの広告主も「michaelgofl.com」に広告料の支払いをするようなことはなかったと報告をしてくれた。アドテク業者の間では、Googleは独自の広告エコシステム内で行われる詐欺などの計画を素早く発見し、削除することに対してはもっとも秀でているとされている。
年間で被る被害額は、数十億ドル
いずれにしても、この150万ドルという今回の広告詐欺の仮想被害金額は、広告業界を脅かす問題のほんの小さな一部でしかない。この事案に似た詐欺は過去に幾度も発生している。正確な数字は知り得ないため推定にバラツキがあるが、広告業界が年間で被る被害額は、数十億ドルになるという。
今回のような詐欺事件は珍しいことではないのだが、問題は計画が極めて巧妙なことだと話す。犯人が「michaelgolf.com」のWebサイト立ち上げに、ジェネリックや海賊版コンテンツを使用してWebサイトを作成。そしてクリックファームなどを通じて広告閲覧数を稼ぐという手法だ。
視認すらできない大量の広告
ノーレット氏はその後、同様のダミーサイトを大量に発見。それらには食べ物やカメラ、旅行や自動車など、ニッチなトピックスの記事や動画ばかりが掲載されていたという。
ユーザーがこのような怪しいサイトに飛ばされた後、詐欺プレーヤーは訪問者に大量の広告を見せつける。しかし、これらの広告はスクリーンで視認できないものもあるうえ、人間によって操作されていないコンピューターにも被害が及ぶことがある。仮に人間が広告を見ていたとしても、それらのオーディエンスは、広告主が1000回のインプレッションでおよそ10ドル(約1200円)を支払ってまでターゲットとするオーディエンスではないのだ。
Googleは「隠し広告」専門部隊を組織
「michaelgolf.com」を例にして見てみると、このサイトは1週間で100万人以下という訪問者数であったのに、それらの訪問者たちに1億6100万回もの広告を閲覧させていた。これは、1人あたり約170本もの動画広告を見たことになる計算だ。また、ほかに問題があるとすれば、詐欺サイトで広告を打つためのビデオプレーヤーすら発見されないことだ。
不幸にも、「michaelgolf.com」の裏にいる犯人に接触するのはかなわず、彼らに送ったeメールも戻ってきてしまった。このようなケースに対し、Googleは「隠し広告」を専門に摘発する部隊を組織している。過去にもコンテンツ価値があまりに低いため、信用が無いと判断された数百万ものサイトへの広告出稿を拒否してきた。
すべての仲介サイトは詐欺被害の対象に
広告詐欺問題は業界にとって、常にまとわりつく問題だ。「ブルームバーグビジネス」ではつい最近、「偽装トラフィック計画」というタイトルがTOPを飾り、この話題は「アドバタイジングウィーク」の一面でも取り上げられた。
ノーレット氏はFacebook、AOLや他のサイトでも詐欺とみられる活動の事例を探知したと述べている。「すべての仲介サイトは詐欺被害の対象になり得る」と、ノーレットは予断を許さない状況にあることを強調した。
Garett Sloane(原文 / 訳:小嶋太一郎)
photo by Thinkstock / Getty Images