店舗が営業しているかどうか調べるときに、Googleで検索するのではなく、インスタグラムで店舗のページをチェックする人が増えている。インスタグラムはいまや、ネット上のショッピングモールになったといわれるだけでなく、市街地に店舗を構える中小企業にとって重要なソーシャルチャネルになっているのだ。
店舗が営業しているかどうか調べるときに、Googleで検索するのではなく、インスタグラムで店舗のページをチェックする人が増えている。インスタグラムはいまや、ネット上のショッピングモールになったといわれるだけでなく、市街地に店舗を構える中小企業にとって重要なソーシャルチャネルになっているのだ。
新型コロナウイルスの流行に見舞われた米国の中小企業は、生き残りをかけてeコマースとソーシャルメディアへの投資を増やさざるを得なくなった。そのような状況で、家族経営の小さな店舗が、営業時間、商品の在庫、営業再開時期などを知らせるのに欠かせない手段となっているのがインスタグラムだ。パンデミックが急速に広がるなかで情報をリアルタイムでアップデートするには、Googleよりインスタグラムのほうが適している(Googleプロフィールは、営業時間や営業ポリシーに関する情報がすぐに更新されないことが多い)。
企業によっては、Googleプロフィールの情報を最新に保つためにSEO対策や有料広告に投資したり、エージェンシーにお金を払ってそのような仕事を依頼したりしながら、ほかのソーシャルメディアキャンペーンを手がけるのは、費用と手間がかかりすぎて難しいことがある。そう指摘するのは、eコマースエージェンシーのテイク・サム・リスク(Take Some Risk)の創業者で戦略部門責任者も務めるデュアン・ブラウン氏だ。「そのような企業は、すべての取り組みを継続するだけのリソースを持っていないだろう」とブラウン氏はいう。
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実際、インスタグラムが企業のデジタル戦略に果たす役割は大きくなるばかりだ。8万社近い独立系小売業者と取引がある卸売マーケットプレイスのフェアー(Faire)によれば、取引先の53%が「新規または既存のオンラインチャネルに投資している」という。しかも、彼らのほとんどが「そのチャネルとしてインスタグラムかFacebookの名を挙げた」とフェアーは報告した。一方、マークル(Merkle)が公開した第2四半期のデジタルマーケティングレポートによれば、Facebookの広告インプレッション全体に占めるインスタグラムのシェアは35%で、インスタグラム広告全体のインプレッションは前年比で46%増加したという(広告支出は全体として30%の増加だった)。
ダイレクトメッセージ(DM)は最新の顧客体験ツール
インスタグラムが持っている最大の強みのひとつは、企業と顧客が直接やり取りできる手段を備えていることだ。ブランドがダイレクトメッセージ機能をカスタマーサービスに利用することは珍しくない。だが、ある程度のスタッフを抱える独立系企業にとって、ダイレクトメッセージは近隣エリアに住む顧客との関係を維持する効果的な手段のひとつでもある。ダイレクトメッセージに使われているアカウントの多くは、店舗のオーナーや従業員によって運営されているのが普通だ。多くのD2C(Direvt-to-consumer)ブランドのように、専任のソーシャルメディア管理者を置くことはない。また、こうした店舗はフォロワーの数が5000人程度と比較的少なく、近隣エリアの顧客を獲得することに注力しているケースが多い。
ソルトレイクシティを拠点とするブライダルショップのオフ・ホワイト(Off White)では、パンデミックの発生以来、インスタグラム経由での予約に関する問い合わせが急増している。オーナーのチェルシー・ゴス氏が米DIGIDAYの姉妹サイトであるモダン・リテール(Modern Retail)に語ったところによると、今年予定されていた結婚式の多くが延期されるなか、顧客は同社がウェディングドレスの試着を再開する時期やその方法について、最新の情報を知りたがっているのだという。
生活必需品ではない商品を扱っている企業の多くでは、店舗の休業がフォロワーの急増にもつながっている。ニューヨーク市を拠点とする420ストア(420 Store)も、最近になってフォロワーが増加したとオーナーのマルセル・フレイ氏は語った。その数は「まだ3000人足らず」だが、店舗があるソーホー地区は「オーディエンスが非常に特殊」であるため、新たな潜在顧客を獲得することが欠かせないとフレイ氏は説明した。
顧客とのやり取り以外でも、インスタグラムでの活動と潜在的なコンバージョンのあいだに相関性があることに米国の中小企業は気づいている。ペンシルベニア州ビーバー郡を拠点にオンラインのライフスタイルブティックを運営するジェピー(Jeppie)は、インスタグラムでの投稿頻度を増やしたところ、ストーリーズや写真を通じたエンゲージメントが大きく向上したとCEOのジェシー・アーリントン氏は述べている。同社のインスタグラムアカウントには、商品の在庫や注文に関する問い合わせも寄せられるようになり、その結果かなりの金額の新たな売上がもたらされたという。
オクラホマシティでキャンドルを製造しているOKコレクティブ・キャンドル(OKcollective Candle)も、「インスタグラムでの投稿頻度と販売数の増加には相関性がある」と、オーナーのジェシー・ニューサム氏とケリー・ニューサム氏は語っている。
中小企業向けの取り組みを進めるFacebook
Facebookは数カ月前から、新しいeコマースツールをリリースして、中小企業向けの取り組みに力を入れ始めた。Shopify(ショッピファイ)との提携もそのひとつだ。また、お気に入りの企業のストーリーズから直接商品を購入するインスタグラムユーザーを増やすため、ギフトカード機能やフードデリバリーサービスを追加した。7月16日には、ユーザーがブランドやクリエイターの商品を見つける場所である「発見」タブに、「Instagramショップ」機能を導入している。
また、Facebookが最近行った変更も中小企業を後押しするものだ。Facebookの広報担当者によれば、インスタグラムの「位置情報ベースのアルゴリズムは変更されていない」が、ユーザーが自分の投稿でスタンプを使用して企業をダグ付けすると、その投稿が共通のストーリーズに組み込まれ、ストーリーズトレイの最上部に表示されるようになったという。そのため、タグ付けされた企業は、そのユーザーのフォロワーに知ってもらえる確率が高くなる。
さらにFacebookは、近隣エリアにフォロワーを抱える企業向けの機能を増やすことで、中小企業への取り組みを強化している。数カ月前には、「スモールビジネスをサポート」スタンプをリリースし、近隣の中小企業に関する投稿をするユーザーに対し、このスタンプを利用して、その企業をタグ付けするよう促している。
こうした新しい戦略のおかげで、今後数カ月のあいだに、中小企業はますますインスタグラム、ひいてはFacebookを利用するようになるかもしれない。「当社はこれまで、(オンラインでのプレゼンスを高めるために)インスタグラムに力を入れたことはなかった」と、ジェピーのアーリントン氏はいう。だがいま、状況は刻々と変わりつつあるようだ。
[原文:How Instagram is overcoming Google to become the small business hub]
Gabriela Barkho(翻訳:佐藤卓/ガリレオ、編集:長田真)