Googleはここ数年、eコマース企業を念頭にさまざまな広告フォーマットを設計し、テストしてきた。そしていま少しずつ、そうした広告フォーマットのいくつかを整理し始めた。ここ数年のGoogleのショッピング広告戦略の進化の過程を紹介する。
Googleはここ数年、eコマース企業を念頭にさまざまな広告フォーマットを設計し、テストしてきた。そしていま少しずつ、そうした広告フォーマットのいくつかを整理し始めた。
Googleは先頃、広告主向けサポートフォーラムで、2017年に導入されたカタログ型広告であるショーケース広告グループを2021年4月1日に廃止することを通知した。だが、Googleの広報担当者によると、同社はショーケース広告のレイアウトを、個々の商品の広告である商品ショッピング広告グループに統合する計画だという。
Googleは長年にわたり、たとえば新しいランニングシューズやトランクを買おうとしているが、どの会社から購入したいかを明確に意識しているわけではない人々に向けたさまざまな広告フォーマットの実験を行ってきた。そうしたフォーマットのなかには、よりカタログ型の広告、YouTube内のショッピング広告と同様にネイティブ広告を模倣した広告が含まれている。そしてGoogleはいま、販売者がキャンペーンを実行しやすくするだけでなく、より多くのGoogleのプロパティにわたって広告を掲載できるようにするために、一部製品の合理化を進めている。
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パフォーマンスマーケティングエージェンシーのテイク・サム・リスク(Take Some Risk)の創業者、ドゥアン・ブラウン氏は「Googleはより多くの広告をどこに配置しようかと悩んでいるのだと思う。(中略)Googleはほとんどの自社プロパティに広告を掲載している」と話す。
ここ数年のGoogleのショッピング広告戦略の進化の過程を以下に紹介しよう。
Googleの新しい広告フォーマット
Googleの基盤となる広告フォーマットは長年、検索広告だった。Googleは検索広告が生み出す純粋な収入がどのくらいあるかを正確に明かしていないが、「Google検索ならびにその他」は、Googleの第4四半期の広告収入のほぼ7割、計426億ドル(約4兆5975億円)を占めていた。
検索広告は小売企業によって使用されることが多く、たとえば、マットレス会社を検索したときに、自社サイトが最初に表示されることを保証するものだ。しかし、検索広告は昔から、買いたいものが明確にわかっていない顧客にリーチしたり、ほかの会社からではなく特定の会社から製品を購入するよう説得したりするのには不向きだとされてきた。
「Googleを使えば、すでに存在する需要を捕捉できる――誰かがあなたの製品を検索しているのだから」とブラウン氏はいう。
Googleはこれに対処するために、ここ数年のあいだにいくつかのショッピング広告フォーマットを導入しようとしてきた。これらの広告フォーマットは、いくつかのタイプに分類される傾向がある。最初にできたのは、複数の製品を表示することによって、カタログを模倣することを意図した広告だった。
ショーケース広告はここに含まれ、たとえば「祝祭日の飾り付け(holiday decor)」のような一般的な検索をしたときに表示される。これを使えば、企業はこのタイプの広告で各アイテムの正確な名前や価格とともに、いくつかの種類の異なる製品イメージを取り扱える。このカテゴリーに属するものとして、2019年に導入された「ギャラリー(Gallery)」というモバイル広告フォーマットもあった。ギャラリー広告は、スクロール可能な4~8枚の画像で構成されていた。
近年Googleはまた、より多くの場所に広告を表示しようとしており、基本的には、Googleの広告は、自社製品を明示的に検索する人を超えて、より多くの人々にリーチするのに役立つことを広告主に納得させようとしている。たとえば2019年には、Googleはディスカバリー(Discovery)広告を導入した。これはGmail、Googleのディスカバリーフィード、YouTubeに表示され、小売企業がより多くのライフスタイルイメージを使用することを奨励している。
Googleが模索してきたショッピング広告合理化の最後の方法は、複数のプロパティでショッピング広告を簡単に掲載できるようにすることだ。Googleは2020年2月に、Gmail、ディスカバリー、YouTube全体で商品ショッピング広告の運用を開始すると発表した。そして2018年には、Googleは人工知能を使って、検索、ディスプレイ、YouTube、Gmailのうち、どこに最適な配置場所があるかを自動的に判断するスマートショッピング(Smart Shopping)をリリースした。
変更点
サーチ・エンジン・ランド(Search Engine Land)によると、Googleは、先頃のショーケース広告の変更のほかに、2020年5月にギャラリー広告を廃止したという。ブラウン氏は、彼のクライアントがショーケース広告で直面した主な課題はフォーマットではなく、Googleがこれらのタイプの広告での企業への課金方法だったと述べている。企業は、これまでGoogleが行ってきたように、クリック数ではなくエンゲージメント数に基づいて課金されていた。
つまり、たとえば顧客が広告に表示された画像をクリックしたら、それはエンゲージメントとしてカウントされるという意味だ。だが、ショーケース広告が商品ショッピング広告に統合されてしまうと、広告主は再びクリック数ベースで課金されることになるだろう。
マーケティングエージェンシー、デジショップガール・メディア(Digishopgirl Media)の創業者、カティア・コンスタンティン氏は、自身が抱えるクライアントの多くにとって、スマートショッピング広告は従来のGoogleのショッピング広告ユニットより優れており、スマートショッピングでクリックあたりのコストを約70%削減したクライアントもいると話す。「GoogleのAIに頼って、製品の関連性(を決めたり)、適切な顧客に表示したりしている」と、コンスタンティン氏は語る。
これは、ショッピング広告を表示できる場所をより多く見つけ、同時に最高のパフォーマンスを期待できるフォーマットに広告主を誘導するというGoogleの戦略について、ブラウン氏がいま感じていることにも絡んでくる。
だが、「Google広告を出す(出せる)場所がすべてハイインテントな場所だとか、コンバージョンを望める場所だとかいうわけではない」と、ブラウン氏は語った。
[原文:How Google has quietly streamlined its shopping ad formats]
ANNA HENSEL(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:長田真)