2019年1月にローンチした健康食品専門マーケットプレイスの バブル (Bubble)は健康志向のミレニアル世代やZ世代をターゲットに、規模よりも専門性に特化したニッチな商品を武器にAmazonと戦っている。現在このニッチなマーケットプレイスは取り扱う商品の種類が4倍に増加しセルフサービス販売にも投資している。
この記事は、DIGIDAY[日本版]のバーティカルサイト、小売業の変革の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。
健康食品専門マーケットプレイスのバブル(Bubble)は、規模よりも専門性に特化したニッチな商品を武器にAmazonと戦っている。
2019年1月、ジェシカ・ヤング氏はオンラインマーケットプレイス、バブルをローンチした。ターゲットは健康志向のミレニアル世代やZ世代で、コーヒーブランドのウォークン(Woken)やポップコーンブランドのビョルンコーン(BjornQorn)、フライバイジーン(Fly By Jing)をはじめとする100ブランドから、常温保存可能で「健康的」なスナック500品目を用意した。ローンチから2年半経過した現在、このニッチなマーケットプレイスは、取り扱う商品の種類が4倍に増加しており、新たなブランドをより迅速に追加していくために、セルフサービス販売にも投資している。ヤング氏は米モダンリテール(Modern Retail)共催の「マーケットプレイス・ストラテジーズ・フォーラム(Marketplace Strategies Forum)」に登壇し、バブルのような、あるカテゴリーに特化したニッチなマーケットプレイスが今後ますます重視するのは、「もっと厳選された商品の買い物体験を楽しみたい」と考える顧客の獲得に加え、Amazonと競合しない存在としてブランド各社からも注目されることだと説明した。
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ヤング氏はバブルをローンチする前、健康的で「クール」、そのうえわずかなSKUで済むフードブランドのeコマースに「ホワイトスペース」があることに気づいたという。儲けだけを考えると、その規模のフードブランド用にわざわざオンラインストアのスペースを作るのは理に適っていないかもしれない。かといって、Amazonで販売を展開する規模の大きなスナックブランドと渡り合うのも大変だ。
「肝になるのは、私たちが中堅と呼ぶブランドだ」とヤング氏は話す。「地域で流通しているのが特徴。それに間違いなくオンライン参入を画策しているものの、効率を考えて二の足を踏んでいる可能性が高い」。
スムージーのD2Cブランド、デイリー・ハーベスト(Daily Harvest)で、商品・販売の統括を担っていたヤング氏は、デイリー・ハーベストが展開するデジタルファースト戦略の一部を真似したいと考えているが、真似するのはブランドとしてではなく、マーケットプレイスとしてだと話す。
「これまでの経験から、健康志向の高いオンラインオーディエンスとつながる方法を知っている。ターゲットにする顧客は、デイリー・ハーベストの顧客と非常に類似点が多い」とバブルの最高技術責任者(CTO)を務めるサブリジ・シング氏は加えて述べている。
重視するのは品質
バブルも食料品を扱う数多くのeコマース会社のように、新型コロナウイルスのパンデミックで生じたオンラインショッピングの急激な増加に支えられた。しかしながら、インスタカート(Instacart)の二番煎じになるつもりはない。その代わりにバブルの経営陣が時間をかけたのは、商品の原材料に対する厳しいチェックである。人工甘味料や保存料、トランス脂肪酸などの原材料を禁止し、自社の基準を満たす商品しか扱わない。
「可能なアプローチは2通りある。さまざまな商品を扱う巨大なシステムを構築する、もしくは特定の顧客に向けた、極めて質の高い良いものだけを扱うシステムを構築する」とヤング氏。「私たちは後者に属する。重視するのは品質だ」。
ブランドを支える「サポートシステム」の役割も担いたいとヤング氏は話す。バブルでは最近、顧客の購買内容から有益な情報が得られるデータダッシュボードに加えて、ブランドが自社商品を出品することができるセルフサービスの機能も導入した。
「バブルは今、セルフサービスのプラットフォームをローンチしたところだ」とヤング氏。「これでブランド各社は迅速に出品と販売ができる。感覚的には、ちょうどAirbnb(エアビーアンドビー)で空き部屋を貸すような手軽さだ」。
ニッチなマーケットプレイスの台頭
買い手にとっても売り手にとってもより良い体験を厳選することは、バブルのようなバーティカルでカテゴリーをひとつに絞った小売業者にとって鍵になる――そう話すのは、ハーバード・ビジネス・スクール(Harvard Business School)の准教授で、全米経済研究所(National Bureau of Economic Research)の研究者でもあるスコット・コミナーズ氏だ。「規模の小さなマーケットプレイスやバーティカルなマーケットプレイスは、商品の厳選された品揃え、つまりキュレーションで注目を浴びている」。
顧客が何を買うのか決めるとき、キュレーションは必ずしももっとも重要な要因ではないが、「商品の品質が問われる」カテゴリーでは大いに重要だとコミナーズ氏は話す。トイレットペーパーの買い足しはAmazon、いつもの食料品はインスタカート、通常はそれで十分な顧客に対しても、ニッチなリテーラーならかゆいところに手が届くサービスを提供できる。
新型コロナウイルスのパンデミックで、より厳選された商品を提供するマーケットプレイスのニーズが特に高まったとコミナーズ氏は話す。「顧客がeコマースにとても慣れてきたのは明らかだ。その結果、これまでなら対面で購入していた種類の商品もオンラインの販売店で購入するようになった」という。「供給側としても、今回のパンデミックで、こういうキュレーションタイプのマーケットプレイスが必要になったといえる……数多くの弱小ブランドがこれまでの対面の販売チャネルを失った。何とか適応せざるを得ない状況だった」。
そうした状況を受けて、バブルでは今後もニッチな健康食品の取り扱いを中心にビジネスを展開するつもりだ。
経営陣はこれからも、オンラインで扱う商品の分類や顧客のセグメントを、食べ物のタイプ(ビーガンやケトジェニックなど)や商品のタイプで分けていこうと考えている。また、ビタミンやプロテインバーなど現在も取り扱っている商品やブランドの拡充を視野に入れ、ゆくゆくは生鮮食料品も取り扱おうと考えている。
「オレオ(Oleo)が食べたいとか、在庫がなくなりそうなものがあるというときにはインスタカートやAmazonにアクセスすればよい。そこにはまさに今必要としている商品が在庫としてあるのだから」とヤング氏。「でも、バブルの品揃えはまったく違う。バブルで取り扱うブランドの80%は、ほかの大規模なプラットフォームでは販売されていない。そういう商品を集めること、そして、[どこかよそで買った]オレオをさらにおいしくすることが私たちの役目だ」。
[原文:How Bubble is building a marketplace focused on health foods]
Maile McCann(翻訳:SI Japan、編集:戸田美子)