10月14日のVoxの報道によると、Eコマースの巨人Amazonは、プライム会員が翌日配送サービスを受けられる最低注文額を撤廃した。以前は注文をまとめなければサービス対象にならなかったが、現在は5ドル(約540円)以下の商品でも、単独で翌日配送の対象となる。
Amazonはプライムの利便性をさらに高めようとしている。そのコストを払うのは、セラーやブランドかもしれない。
10月14日のVoxの報道によると、eコマースの巨人Amazonは、プライム会員が翌日配送サービスを受けられる最低注文額を撤廃した。以前は注文をまとめなければサービス対象にならなかったが、現在は5ドル(約540円)以下の商品でも、単独で翌日配送の対象となる。
Amazonのこの動きは明らかに、実店舗小売とのさらなる競争を意識したものだ。消費者が安価な日用品をすぐに買いたいときに使うCVS(米コンビニエンスストアチェーン)などの小売店に、Amazonは照準を定めている。しかし、同プラットフォーム上の小規模ブランドやセラーは、さらなる変化を余儀なくされるだろう。
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この変更は、利益率改善よりも売上増加を重視する、Amazonの方針転換の一環だ。いまのところ、利益の見込めない低額商品を個別に配送するコストは、Amazonが負担しているようだ。ほかの商品とまとめた方が、当然ながら利益率は高くなる。
コメントの求めに応じ、Amazonの広報担当者は以下の声明を発表した。「顧客は我々の膨大な品揃え、低価格、プライムの無料翌日配送サービスを高く評価しており、我々は顧客体験の向上のためのイノベーションをつねに追求している。Amazonの顧客体験向上は、商品の半分以上を出品している、セラーへの支援と一体であり、セラービジネスをさらに成長させる機会を創造するものだ」。
送料無料でCVが上がる
eコマースマーケティングエージェンシーのニュアンストメディア(Nuanced Media)の創業者でありCEOを務める、ライアン・フラナガン氏によれば、これはAmazonのいつものやり方だ。送料を払うというハードルを取り去ることで、「Amazonはコンバージョン率が上がると知っている」と、同氏はいう。今回の動きは、プライムプログラム全体のサービス拡充として、対象商品を増やしたと考えれば、ごく自然な成り行きだ。
Amazonに特化したマーケティングエージェンシー、ポデアン(Podean)の創業者でありCEOを務めるマーク・パワー氏は、今回の変更が一部の日用品ブランドに影響を及ぼす可能性を指摘する。「この変更でもっとも影響を受ける可能性が高いのは、日用品カテゴリーだと思われる」と、同氏はいう。大規模ブランドにとっては、旧来の小売店に依存するのではなく、オンライン販売をより簡単にテストする機会といえそうだ。しかし、Amazonが合意条件にいつ変更を加えるかわからないというリスクもある。
「きわめて戦略的な転換だ」と、Amazonでココナッツウォーターを販売する主要ブランドのひとつ、ビタココ(Vita Coco)でEコマース担当責任者を務める、ジム・モーガン氏は話す。Amazonは長年、15~25ドル(約1600~2700円)の価格帯に狙いを定めてきたが、この最低額を引き下げて、さらに顧客を呼び込もうとしている。「いったんプライムの生態系に取り込まれたら、永遠にそのなかだ」と、モーガン氏はいう。
モーガン氏は、現在Amazonで利益をあげていない商品を新たに追加すべきではないと、ブランドに忠告する。「(翌日配送の最低注文額の撤廃は)Amazonで利益率の低い商品を追加する理由にはならない」と、彼は述べた。
「いずれコストは顕在化」
この変更を、来るべきさらなる変化の予兆と考えるセラーもいる。Amazonのある大手セラーは匿名を条件に、今回の変更はセラーの収益に打撃を与えるだけだと、不満を述べた。
「Amazonはじわじわとプラットフォーム上の販売コストを上げてきている」と、同氏はいう。Amazonは低額商品の配送コストは自分たちが負担していると主張するが、別の形でセラーがコストを払う可能性はある。「フルフィルメント by Amazon(FBA)の料金は毎年規則正しく上がっている」と、同氏は指摘する。配送コストを補填するため、Amazonは手数料を値上げするかもしれない。
「Amazonがこうした新プロジェクトを長期間、ときには数年にわたって棚上げしていることはよく知られている。いずれは手を打つ必要に迫られ、コストが顕在化する」。
セラーとブランドの大問題
パワー氏によれば、今回のような新展開によって、ブランドがAmazonに商品を出品する際に新たな計算が必要になる。新プログラムに飛びつき、売上増加と認知度アップにつなげるのは賢い手かもしれない。だが、風向きが変わり、利益率が落ち込む恐れもある。
「結局は誰かが配送料を払わなくてはならない。それがセラーとブランドの頭にいまある大問題だ。これを受け入れるとして、この先どんなコストを背負うことになるのか?」と、同氏は述べた。
Cale Guthrie Weissman(原文 / 訳:ガリレオ)