YouTubeをコネクテッドTVで視聴する人が増えていることに広告主が気づき始めている。しかし、YouTubeはチャネル横断的なプラットフォームとみなされており、テレビ視聴にどこまでの価値があるのかは不透明だ。コネクテッドTV用のインベントリーも多くはなく、広告主たちはその価値を慎重に見極めようとしている。
YouTubeをコネクテッドTVで視聴する人が増えていることに広告主が気づき始めている。だが、いまでもYouTubeは、テレビ画面で見られるサービスというより、さまざまなデバイスにまたがって多くの人にリーチできるデジタル動画プラットフォームとみなされている(コネクテッドTVでの展開を重視する戦略を採っているいくつかの例外的なケースを除く)。
「一般的に私たちがYouTube(の広告枠)を購入しているのは、リーチの獲得と特定のオーディエンスをターゲットにできる能力に期待してのことだ。人々がどのデバイスの画面を見ているのかは気にかけていない」と、あるエージェンシー幹部は語った。
ある意味で、広告主はYouTubeのクリエイターと似た状況に置かれている。コネクテッドTVでYouTubeを視聴する人の増加は注目すべきことだが、大きな戦略転換を正当化するほど数が多いわけではない。また、テレビの画面に合わせて動画を制作しているクリエイターはおそらくほとんどいないため、YouTubeのコンテンツやインベントリーを、広告主のコネクテッドTV戦略におけるテレビやストリーミングのコンテンツやインベントリーと同列には考えられないと、複数のエージェンシー幹部が述べている。
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「(有料でテレビネットワークの番組が視聴できる)『YouTube TV』を別にすれば、テレビ用の広告を組み込めるコネクテッドTVインベントリーはごく限られた数しかない」と、2人目のエージェンシー幹部は語った。
とはいえ、YouTubeをコネクテッドTVで視聴する人は著しく増えており、広告主によっては大規模イベントに関連したキャンペーンなど、特定の状況でYouTubeのコネクテッドTVインベントリーに目を向けるところもあると、エージェンシー幹部らは述べている。動画分析サービスを提供するコンビバ(Conviva)によれば、2020年第2四半期にはYouTubeの動画視聴時間の27%はテレビ経由での視聴が占めていたという。YouTubeも、毎月1億人以上の人々がテレビでYouTubeやYouTube TVを見ていると主張している。
広告主の関心も高まっているが
従来型TVの視聴率低下とストリーミング視聴者の急増が同時進行するなかで、広告主がコネクテッドTVに予算を振り向けているのは、ブランドの認知向上が期待できるテレビの能力とオーディエンスをターゲティングできるデジタルの能力をコネクテッドTVが併せ持っているからだ。そのため、大量にコネクテッドTVインベントリーを保有・販売している企業はどこも、広告主の注目を集めている。
YouTubeは2年前から、広告主へのプレゼンテーションでコネクテッドTVインベントリーを盛んに売り込んできた。2019年には、広告枠の先行販売パッケージである「YouTube Select(以前のGoogle Preferred)」にコネクテッドTVインベントリーを含めるかどうか決めるにあたって、ある人気チャンネルの視聴時間においてコネクテッドTVが占める割合を検討材料にした。今年のアップフロント(テレビ広告枠の先行販売イベント)では、コネクテッドTVインベントリーのみのパッケージを提供して、売り込みを強化している。
ただし、YouTubeのコネクテッドTVインベントリーが関心を集めている事実が、そのまま多くの需要があることを意味するわけではない。先に述べたように、YouTubeは広告主からチャネル横断的なプラットフォームとみなされており、コンテンツもテレビ向けのものとは異なっている。そのうえ、YouTubeはコネクテッドTVのみの先行販売パッケージにプレミアム料金を課している。3人目のエージェンシー幹部によれば、YouTubeはコネクテッドTVのみのインベントリーでCPMを10~15%引き上げるよう求めたという。一部の広告主には高すぎるプレミアムだが、コネクテッドTVでYouTubeを見る人々へのキャンペーンも含まれることに価値を見出す広告主もいるようだ。「(コネクテッドTVでYouTubeを見る人々は)外出中にモバイルを利用している人々より熱心なオーディエンスだ」と、4人目のエージェンシー幹部は語った。
YouTubeならではの価値も
広告主やキャンペーンのタイプによっては、YouTubeのコネクテッドTVインベントリーがとりわけ価値をもつこともある。一部の大手広告主は、ホリデーシーズンのキャンペーンや授賞式といった大規模イベントがらみのマーケティング活動でリーチや注目度を高める手段として、コネクテッドTVの広告枠に目を向けている。「ここぞという日にコネクテッドTVのみのインベントリー(の購入)をテストしたり、このインベントリーに注力したりしたいと考えるクライアントもいる」と、先の4人目のエージェンシー幹部は話す。
一方、小規模な広告主は、テレビに参入するきっかけとしてYouTubeのコネクテッドTVインベントリーに魅力を感じている。「従来型テレビの広告枠を正規の価格で購入する余裕のない広告主にとっては、コネクテッドTVがテレビに参入する手段となる」と、3人目のエージェンシー幹部は語った。
[原文:How advertisers are evaluating YouTube’s rising connected TV viewership]
TIM PETERSON(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:分島 翔平)