マインクラフトのインフルエンサーであるトビー・「トゥボ」・スミス氏が、大手広告主とタイアップした、独自のコンテンツやアイテムを持つマインクラフトサーバ「TubNet」を正式に立ち上げ。マインクラフトはブランドアクティベーションという点で、ほかのメタバースプラットフォームに追随する。
ブランドアクティベーションの点では、マインクラフト(Minecraft)はこれまで、ロブロックス(Roblox)やフォートナイト(Fortnite)など、ほかのメタバースプラットフォームに後れを取ってきた。だが、それが近い将来に変わる可能性もある。マインクラフトのインフルエンサーであるトビー・「トゥボ」・スミス氏が、11月25日にクラフト・ハインツ・カンパニー(Kraft Heinz Company)やソニー・ピクチャーズ( Sony Pictures)のような広告主とタイアップした、独自のコンテンツやアイテムを持つマインクラフトサーバ「TubNet」を正式に立ち上げるからだ。
TubNetは、もともと8月に開設予定だったが、TubNetのチーム(2月にスミス氏を採用したeスポーツ組織ミスフィッツ(Misfits)が後援する独立系企業)が、データセキュリティ保護の強化のために開設を11月まで延期していたのだ。その間、TubNetはすでに、いくつかのブランドアクティベーションを行い、オープンベータテストとコミュニティショーケースに参加するよう、スミス氏のDiscord(ディスコード)サーバから1度に最大1000人のプレイヤーを招待していた。TubNetのDiscordサーバは、ユーザー数が約9万人で、世界最大のマインクラフトサーバのひとつとなっている。
「ミスフィッツ・ゲーミング・グループ(Misfits Gaming Group)とTubNetのあいだで、TubNetに広告取引をもたらせる商業協定を結んでいる。ミスフィッツはTubNetに投資しており、TubNetの株式を保有している」とミスフィッツのCEO、ベン・スプーント氏は語る。
Advertisement
ゲーム内に広告の場を設置することで、厳しいガイドラインを守る
広告主を取り込むにあたってのTubNetの最初の課題は、マインクラフトの開発元モヤン(Mojang)の厳しいガイドラインに基づき、ゲーム内にブランドロゴを直接挿入することを制限しているエンドユーザーライセンス契約(EULA)に抵触しないことだった。
「マインクラフトは元来、ポリシー面だけでなく技術面でも、プラットフォームとしてロブロックスほどオープンではない」と、メタバース開発スタジオ「MELON(メロン)」の共同創設者デボン・トーメ氏は指摘する。「ロブロックスでは、モデラーにかつてないほど突飛なものを作らせて、プラットフォームにネイティブにインポートすることができ、そうなるように、ある程度のダウンスケーリングなどがある。一方、マインクラフトでは、それが非常に特殊化している。ポリシー上の制限だけでなく、技術上の制限にも対応することになる」
マインクラフトのEULAガイドラインを回避するため、TubNetは当初、インストリーム広告とオーバーレイ広告を組み合わせて、Twitch(ツイッチ)でTubNetのゲームプレイを視聴しているユーザー向けに、ゲーム内にブランドロゴを表示することを検討した。だが、最終的に、技術的にはこのゲーム外でのブランディング手法で回避を試みても、あまりにガイドラインに触れる恐れがあると判断。TubNetはその代わりに、明白なロゴ挿入やブランディングをせずに、広告パートナーに関係する場をゲーム内に設ける戦略に落ち着いた。
ブランドの影を感じさせないマルチプラットフォーム戦略
「クラフトの『ランチャブル(Lunchables)』ブランドの場合は、ゲーム内に『Snack Shack(軽食小屋)』が設けられた。明らかに、モヤンの規定や規則を完全に守っているので、そこにはクラフトのブランドは見つからない。だが、Snack Shackは、TubNetをめぐる活動においてクラフトの広告と結びついている」と、スプーント氏は語る。
Snack ShackのようなTubNetのゲーム内アクティベーションは、TubNetのDiscordチャンネルのような、ゲーム外の場所での補助的コンテンツに支えられている。そうしたコンテンツでは「TubNetの広告主について、より直接的に言及できる」とスプーント氏は述べ、「TubNetの公式な開設に取り組むなかで自社はモヤンと直接コミュニケーションをとってきた」と付け加えた。「協力的で、ある程度支援してくれた。彼らはサーバの開設にも興味を示していた」とスプーント氏はいう。
エンゲージメントを高めるためのインセンティブとして、Snack Shackのようなミニゲームをプレイするユーザーは、サーバ内のほかの場所で利用できる固有のゲーム内アイテムも入手できるため、TubNetでのブランド体験はサーバの有数の人気要素になっている。「皮肉なことに、クラフトのために制作したゲームは現在、サーバで最もリテンションが高いゲームだ」とスミス氏は語る。
スミス氏は、自身のマインクラフトサーバが成功するかどうかは、巨大なコマーシャルのように感じさせずにブランドを取り込めるかにかかっていると考えている。今のところ、TubNet内のプレイヤーは、広告を一切見ずにサーバで時間を過ごすことが完全に可能だ。スミス氏は、それが続くよう願っている。こうした軽いタッチのアプローチは、ブランドを制限するマインクラフトのEULAに無理なく適合するからだ。
「ブランド化された多くのものが、マインクラフトの構成要素から完全に切り離されており、そこにマルチプラットフォーム戦略が入り込んでいる。マインクラフトの構成要素は、TubNetのユーザー層が自然に楽しめる素晴らしいアクティベーションやミニゲーム、体験的な機能を作り出すことであり、ユーザーに向かってブランドを声高にアピールすることではない」と、スミス氏は語った。
[原文:How a Minecraft influencer is bringing advertisers to the platform]
Alexander Lee(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:島田涼平)