カリフォルニア州の裁判所は、Amazonのマーケットプレイスでサードパーティセラーが販売した欠陥商品について、Amazonは責任を問われうると裁定した。この判決は、4000万人の住人を抱えるカリフォルニア州で営業するオンラインマーケットプレイスが、今後同様の製造物責任を問われる可能性を示唆している。
カリフォルニア州の裁判所は、Amazonのマーケットプレイスでサードパーティセラーが販売した欠陥商品について、Amazonは責任を問われうると裁定した。この判決は、カリフォルニア州で営業するオンラインマーケットプレイスが、今後同様の製造物責任を問われる可能性を示唆している。
4月26日、ルーミス氏対Amazonの裁判に判決が下された。この訴訟は、原告のルーミス氏が2015年にAmazonセラーから購入したホバーボードが欠陥品だったとして提起されたものだ。同氏の息子がホバーボードをコンセントにつないだところ、家屋の一部が消失するほどの火災を引き起こしたという。この裁判は非常に複雑な争点をはらんでいた。
すなわち、Amazonはこの売買において単なる中立的な第三者にすぎないのか。それとも、製品の「販売者」に相当し、よって損害賠償責任を問われうるのか。裁判所は後者を支持した。Amazonは当該製品の販売において「垂直的な流通システム」の一部に位置づけられ、顧客に直接対応し、注文を処理し、売上の一部を受け取ったとして、当該製品の販売者に相当すると結論づけた。
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2例目となる対AmazonPL訴訟
Amazonが特定の第三者の製品に対して責任を問われうるという判決は、カリフォルニア州ではこの1年で2例目となる。Amazonにとっては憂慮すべき傾向だ。今回のケースは1例目とは異なり、Amazonがフルフィルメントを担当していない。それにもかかわらず、「流通システム」の一部と認定されたことから、1件目よりもさらに踏み込んだ判決と言える。これらふたつの判例は、ほかの州では拘束力を持たないものの、カリフォルニア州ではAmazonおよび同業のeコマース事業者にとって、製造物責任(PL)訴訟の新たな潮流が生まれつつあることを意味している。
Amazonは、米DIGIDAYの姉妹サイトであるモダンリテール(Modern Retail)宛ての文書のなかで、こう述べている。「Amazonは、ストアで販売するすべての商品の安全性と真正性に多大な投資を行っている。この投資には、商品の掲載に先だって、販売者と商品を積極的に審査し、懸念を示唆する兆候がないか、継続的にストアを監視することも含まれる」。
ルーミス判決のひとつの重要な注目点は、昨年にカリフォルニア州の裁判所が下したAmazon対ボルジャー氏訴訟の判決から、さらに一歩踏み込んだ点にある。ボルジャー判決でも、カリフォルニア州の別の裁判所がサードパーティセラーの商品に対してAmazonは責任を負うと認定したが、判決理由のひとつに、当該の商品がAmazonのフルフィルメントプログラム「フルフィルメントby Amazon(FBA)」を通じて出荷されたことが挙げられた。同裁判所は、「欠陥があるとされる製品の流通にAmazonが自ら関与した」、つまりAmazonが支払を処理し、当該製品を同社の倉庫に保管し、顧客宛てに出荷したという事実に基づいて、Amazonが販売者としての役割を果たしたと結論づけた。
ルーミス判決の特殊性
ルーミス判決は、ボルジャー判決よりさらに歩を進めた点で注目に値する。この判決では、Amazonが当該商品の支払処理や配送に関与していないにもかかわらず、同社をサードパーティセラーの商品の販売者に相当すると認定した。ルーミス氏のケースでは、欠陥のあるホバーボードのフルフィルメントは販売したサードパーティセラー自らが担当していた。つまり、顧客と直に接する店頭業務を担ったというだけで、Amazonは責任ある販売者と見なされたのだ。この判決は、Amazonを含むサードパーティマーケットプレイスが、今後同様の訴訟に直面する可能性を示唆している。
現段階で、ルーミス判決がほかの裁判に及ぼす影響を正確に判断するのは難しい。状況を複雑化させる要因のひとつに、カリフォルニア州の製造物責任法が他州と比べてやや特殊なことが挙げられる。カリフォルニア州では、責任ある販売者の認定において、裁判所に大幅な裁量権が委ねられている。一方、他州には販売者の定義をより明確に定めた厳格な法律がある。そして、その多くはeコマース事業者に有利な建て付けとなっている。
しかし少なくとも、このルーミス判決により、カリフォルニア州においてはAmazonが現実的に法的責任を問われるリスクが確定的となった。バトラー・スノウ法律事務所でPL訴訟を担当する弁護士のデレク・ラジャブリ氏は、カリフォルニア州のふたつの控訴裁判所がAmazonの法的責任を認定した事実に言及し、「この判決はカリフォルニア州では非常に大きな意味を持つことになるだろう」と指摘した。カリフォルニアは巨大な州だ。Amazonはいまや、4000万人にのぼる同州の住民の誰かが、危険な商品を購入し、Amazonに賠償金を支払えと要求するかもしれないリスクにさらされている。
サンタクララ大学法学部のエリック・ゴールドマン教授は、ある法律ブログに宛てた最近の寄稿文でこう書いている。「この判決により、Amazonは法的に極めて不安定な状況に置かれることとなった。業界を揺るがすような対抗手段に出ることも十分に考えられる」。ゴールドマン教授によると、そのひとつがサードパーティセラーの削減だという。同教授は、Amazonが法的責任を回避するために、「ストアで扱う商品や出品業者を拒否するケースが増えるのではないか」と指摘した。ただし、いまのところ、Amazonにそうした措置を取る兆候は見られない。
他州はカリフォルニアに追随するか?
ラジャブリ氏によると、カリフォルニア州以外でeコマース事業者の賠償責任を追及している弁護士たちは、自分たちが担当する訴訟でルーミスやボルジャーの判決を引用するかもしれないが、他州の裁判所にこれらの判例に従う義務はないという。「ルーミス判決の影響は、他州では予測しがたい」と同氏は述べている。
ラジャブリ氏は「密封状態の梱包 (sealed container)」原則を採用する諸州についても言及した。この原則は、eコマース事業者が検品できない状態に梱包された第三者の商品を販売する場合、開封しない限り、(州によって、例外はあるものの)一般的に不良品に対する責任を問われないとするものだ。「この原則に基づいて結審に至る州もある」とラジャブリ氏は話す。「この場合、Amazonは製品の設計、製造、または製品表示に関与しないかぎり、責任を問われることはない」。なお、コロラド州、デラウェア州、カンザス州、ケンタッキー州、メリーランド州、ミネソタ州などがこの原則を採用している。
ルーミス判決は、その影響がAmazonだけにとどまらないという点でも重要だ。カリフォルニア州で営業するほかのサードパーティマーケットプレイスも、同様の責任問題に直面する可能性がある。セラーサービスの提供に関与している場合はなおさらだ(昨今では、多くのeコマース事業者がこの種のサービスを提供している)。Amazonに限って言えば、同様のPL訴訟が続いても、金銭的には耐えられるだろう。中小のeコマース事業者に、それだけの資金力があろうはずもない。
Amazonの優位は変わらない?
実際、カリフォルニア州における潮流は、eコマース事業者の責任を問う方向へと向かいつつある。昨年、Amazonは、第三者が販売する商品の大部分について、eコマース事業者に損害賠償責任を負わせる法案を支持したが、Amazonによれば、同法がAmazonに限らず、すべてのeコマース事業者に適用されるならばという条件付きだという。
識者たちは、Amazonは自社が持つ巨大な財力を盾にしているだけだと批判する。この法案が通過したところで、Amazonには訴訟に対応しうる潤沢な資金があるというわけだ。一方、中小のマーケットプレイスの場合、第三者が販売した欠陥商品について損害賠償責任を負うとなれば、事業が破綻するケースも出てくるかもしれない。
この法案は昨年の会期末に廃案となり、これまでのところ再提出されていない。ルーミス判決にしろ、この法案にしろ、米国における製造物責任法が、今後ますます継ぎはぎだらけのものとなり、いわゆる法のパッチワーク化が進む可能性を示唆している。サードパーティマーケットプレイスの重要性が増大するに伴い、州によっては、eコマース事業者がPL訴訟に巻き込まれるケースは増えるかもしれない。
[原文:How a California court ruling could impact Amazon — and other e-commerce marketplaces]
Michael Waters(翻訳:英じゅんこ、編集:分島 翔平)