人気チャットアプリの栄枯盛衰、「ハウスパーティ」のいま : Facebookとの攻防戦

グループでのビデオチャットのためのアプリ、ハウスパーティ(Houseparty)は2016年2月のローンチとほぼ同時に、友達との新しいオンラインでの遊びを提供して、10代のあいだで人気となった。それはAOLインスタント・メッセンジャー(AOL Instant Messenger)のようであり、そこに動画が付随して新しい世代に提供された形だ。しかし、約3年が経ったいま、ハウスパーティはそのユーザーを失いつつあるようだ。

伸び悩むユーザー数

2017年9月、ハウスパーティは平均して1日51分アプリを利用する2000万人のユーザーを抱えていると発表している。それ以降、彼らはユーザーに関する数字を公開していないが、この10月には平均利用時間が55分に伸びたと述べている。

しかし、アプトピア(Apptopia)のデータから見えてくるのは、話題性で盛り上がったフェーズのあとにやってきた、1年間の停滞時期という姿だ。ハウスパーティはグローバルに4500万回ダウンロードされたが、このダウンロード回数は毎月減少していると、アプトピアのデータは表している。アクティビティは、2017年の初頭にピークを迎えた。デイリーアクティブユーザー数(DAU)は250万人、そして、その年の2月のマンスリーアクティブユーザー数(MAU)は1030万人というものだ。いまではデイリーアクティブユーザー数は120万人へと下がり、11月にはマンスリーアクティブユーザー数は510万人となった。

ユーザー数をもっとも失ったのは2017年だったが、2018年に関しては、オーディエンス数は比較的フラットに留まっていることがアプトピアのデータからわかる。

ハウスパーティのコミュニケーション部門責任者であるラマン・デオル氏は具体的な数字に関してはコメントしなかったが、このパターンは正確であると述べた。2016年後半と2017年初頭の「ハイパーグロース」と形容されるフェーズのあと、技術的な問題が原因でアプリの安定性やクオリティが損なわれ、ユーザーたちのなかにはアプリの利用を停めてしまった人たちが出たと、彼女は言う。2017年5月に再構築されたアプリをリリースして以降は、アメリカにおけるマンスリーアクティブユーザー数は約2倍にまで伸び、アメリカのデイリーアクティブユーザー数は3倍になったとのことだ。

Facebookとの攻防

それでもハウスパーティを取り囲む競争はますます厳しくなっている。

2017年9月、Facebookはグループビデオチャット用のアプリ、ボンファイヤ(Bonfire)を10代向けにリリースした。ボンファイヤは大学キャンパスやインスタグラム(Instagram)上でプロモーションされている。Facebookは2017年、ビデオチャット用のデバイスであるポータル(Potal)をリリースし、大々的な広告も展開している。

ハウスパーティーは2019年前半、Facebookに対抗する形で、さまざまなマーケティング企画をローンチする予定だ。そのなかには、「IRL(イン・リアル・ライフ:現実世界における)アクティベーション」という企画が含まれている(ハウスパーティの計画では2019年に黒字転換をする予定だが、詳細については語られなかった。親会社であるライフ・オン・エアー[Life On Air]は、2013年から7020万ドル[約76億円]の資金を調達してきており、2016年12月には5200万ドル[約56億円]のシリーズCを完了している。現時点ではシリーズDの調達は行っていない)。

若いオーディエンス

今日におけるハウスパーティのオーディエンスは、ほとんどが若い世代になっている。ハウスパーティによると、オーディエンスの60%は24歳以下とのことだ。エンゲージメントや「いいね!」数、コメント数、シェア数などを優先するFacebookやほかの大手ソーシャルメディアでもない点が、10代のユーザーに対するセールスポイントとなっている。これはほかの年齢層のオーディエンスにも言える。ただ、友人たちと楽しい時間を過ごすことが目的となっているのだ。もともと使っていた赤いコップのロゴを捨てて、手を振るロゴへと変えたのもそれが理由のひとつとなっている。

アプリ内における文章も変わってきている。当初は、直接の友人ではないユーザーとビデオチャットをする際に、遊び心として「ストレンジャー・デンジャー(Stranger danger:見知らぬ危険な人)」と、子どもに注意を促す表示がされた。それも、いまでは「フレンド・オブ・フレンド(friend of a friend:友達の友達)」となっている。ユーザー同士の見た目を褒めるための「やっべ、カワイイじゃん(Dang, you look good)」も「君、最高だって、今日誰かに言われた?(Has anyone told you you’re awesome today?)」とマイルドな、見た目だけに限らない表現に変えられる予定だ。

「社が抱えているミッションを反映させるブランドを作るということに改善の余地があると思った。オンラインのコミュニケーションに共感を導入するというミッションだ。いまの環境に欠けているのはそれだと思う。ソーシャルネットワークの本質は何か、という振り出しに戻ること。ソーシャルネットワークが変容した結果の今日のソーシャルメディアになることではない。自分が大事に思っている人々とつながるための場所だ」と、ハウスパーティの共同ファウンダーでありCOOのシマ・シスターニ氏は言う。

サービスの本質

スナップ(Snap)のCEOであるエヴァン・スピーゲル氏も同様の懸念を表明している。ソーシャルネットワークがソーシャルメディアへと変容したことによる悪影響についての懸念だ。スナップがアプリのデザインを変更して、チャット機能とパブリッシャーコンテンツをアプリの左と右で分けたのは、そこに理由のひとつがある。しかし、このデザイン変更は、カイリー・ジェナーのような巨大な人気を誇るユーザーからの批判を受けた。いまでもデザイン変更によるネガティブな影響に取り組んでいる状況だ。しかし、シスターニ氏は、バックラッシュが起きるかもしれないことには不安を持っていないようだ。

いいね! やコメント、リツイートのような、ユーザーたちがそれぞれ違う時間で起こすアクションではなく、同時に起きるアクションにフォーカスしてきているのがハウスパーティだ。ユーザーは友人を追加することができるが、フォロワー数といった機能はない。アプリの性能上、定量的に捉えることができるのはビデオチャットで、どれだけの分数を費やしたかという数字だけだ。

「私たちの中核となっている信念について、完全にクリアにしておきたいと思っている」と、シスターニ氏は言う。「我々の本質は、コンテンツよりも人間同士のつながりを重要視することにある。定量的な自己に関する肯定感ではなく、定性的に得られる肯定感を優先している。そして、ユーザーが実際にそこに現れること、それをもっとも重要な本質と捉えている」。

Kerry Flynn(原文 / 訳:塚本 紺)