今やSNSプラットフォームは、本来のビジネスであるソーシャルネットワークの価値よりも、エンターテインメントの価値で測られる。それは、クリエイターエコノミーが台頭したことからも明らかだ。最近YouTubeとTwitchの広告収益分配に変化が見られるが、そのクリエイトエコノミーの台頭で、変化がさらに顕著になった。
今やSNSプラットフォームは、本来のビジネスであるソーシャルネットワークとしての価値よりも、エンターテインメントの価値で測られる。それは、クリエイターエコノミーが台頭したことからも明らかだ。
最近YouTubeとTwitchの広告収益分配に変化が見られるが、そのクリエイトエコノミーの台頭で、変化がさらに顕著になった。こうした動きから、プラットフォームがクリエイターをいかに評価しているのか(もしくは評価していないのか)がよくわかる。
さらに、2022年は経済の不安定がますます進むので、広告予算の使い道はいつも以上に注目されている。
Advertisement
クリエイターに対するプラットフォーム各社の収益分配率
- TikTok:フォロワー数10万以上のクリエイターは50%
- YouTube:2023年1月からロング動画クリエイターは50%、ショート動画クリエイターは45%
- メタ:インストリーム広告とFacebookリール広告の場合、クリエイターは55%
- Snapchat:ミッドロール広告は未公表
- Twitch:50%。トップパフォーマーは最初の10万ドルだけ70%
各サービスを注視するクリエイターたち
この状況を特に注視しているのがクリエイターである。極めて不安定な時期には、こうした変化で彼らの生活が直接打撃を受けるからだ。インフルエンサーマーケティングプラットフォームのウィアリスマ(WeArisma)でCEOを務めるジェニー・サイ氏は、「インフルエンサーはさまざまなオーディエンスにつながる方法を考えなければならない。また、別のコンテンツを作るとなるとその分作業が増えるが、果たしてそうまでして新しいコンテンツを作る必要があるのか見極めなければならない」と話す。
こうした状況を念頭に、米DIGIDAYでは主要プラットフォームがどれだけクリエイターに払っているのかを調べてみた。
ショート動画の王者TikTokは、2022年5月にローンチしたTikTok Pulseプログラムで、承認クリエイター(フォロワー数が10万人以上)と広告収益を50%ずつ折半している。
ショート動画が人気を博した(TikTokのおかげ)YouTubeも最近になり、2023年5月からショート動画広告の収益を分配すると発表した。その内容は、ロング動画クリエイターの場合、50%の折半だが、ショート動画クリエイターの場合は45%で、55%がYouTube側の取り分になるという。
インスタグラムは以前インストリーム動画広告でクリエイターに収益活動の場を提供しており、クリエイターは収益の55%を手にしていた。しかしながら親会社のメタ(Meta)がリール(Reels)重視の方針に切り替えた2022年2月、同社はこのプログラムの支援を中止している。従って、現在クリエイターに55%が分配されるのは、Facebookのインストリーム広告やFacebookリールの広告だけである。
Snapchatは広告収益の分配率を公表していないが、クリエイターはSnapスター(Snap Star)のパブリックストーリー(Public Story)にミッドロール広告を追加すれば収益を獲得できる。どの程度収益をあげられるのか具体的な数字は明らかでないが、米国エンタメ雑誌『バラエティ』(Variety)の記事によると、Snapchatは2021年単年で、スポットライト(Spotlight)プログラムから1万2000人を超えるクリエイターに2億5000万ドル(約350億円)を支払っているという。
一方、Twitchは2022年9月、苦境に陥っていた。スタークリエイター向けサブスクリプション収益分配率の変更計画を発表したからだ。Twitchのトップパフォーマーには70%のプレミアムレートが継続されるものの、2023年6月1日からはその適用が最初の10万ドル(約1400万円)に限定され、10万ドルを超えると分配率はすべて標準の50%に減率される。当然、クリエイターは今回の分配率に怒りの声を上げており、その様子は米DIGIDAYが先週10月17日に報じたとおりだ。クリエイターにしてみれば、これは基本的にTwitchによる報酬削減である。なお、この巨額の現金は、クリエイターとは関係ない、ゲームコンベンションTwitchCon(ツイッチコン)に登場するセレブの面々に使われているのではと見られている。
「収益分配」のあり方は常に不安定
とはいえ、これまでも常にクリエイターの収益分配がとても安定していたというわけではない。分配率はマクロエコノミーの状況に応じて、頻繁に変更が生じるからだ。たとえば、インスタグラムはコロナ禍で世の中がオンラインにシフトすると、IGTV広告経由でクリエイターとの収益分配を開始した。同時期、Snapchatはトップクリエイター向けにStoryのフォーマットでミッドロール広告を導入している。景気が後退する今、各社ともこうした最新の動きに違いはまったくない。
「使える広告予算は少なくなっている」とウィアリスマのサイ氏は話す。「プラットフォーム各社の収入源は広告だ。オーディエンスの規模を拡大して、広告収益の割合を上げたいと考えている」。
しかしながら、プラットフォームのビジネスモデルでは、クリエイターが自ら構築したコミュニティを必ずしも収益化できるとは限らない。
これまでは収益分配に変化が生じても、クリエイターはいつも対応できていた。しかし、こうした変更は内容が曖昧な場合も多くあり、それがクリエイターの間でフラストレーションがたまる原因になっているのだ。
その一例が、ハンク・グリーンなどTikTokのスタープレイヤーから反発を買っているTikTokのクリエイターファンドだ。というのも、このファンドは、すべてのクリエイターが参加する資金調達プログラムのようなものなのだが、クリエイターの人数が増加し続けているにもかかわらず、調達された資金は変化していない。
クリエイターの持続的な成長はどう実現するか
まずはプラットフォーム各社の広告収益分配から不透明感を減らしていくことだ。サイ氏は後日、「そもそも収益の計算方法に関して批判がある」と述べている。「収益分配率が変われば、クリエイターの収入は直撃を受ける。これは、今月の家賃が払えるかどうかという問題なのだ」。
長期的な資金繰りにも影響を与える。
「多くのプラットフォームは、次は何がくるのか、どのようなロードマップになるのか頭を抱えている」。そう話すのは、独立系エージェンシーのティヌイティ(Tinuiti)でインフルエンサーマーケティングを統括するクリスタル・ダンカン氏だ。「プラットフォーム各社は、どうすればクリエイターが喜ぶのか、どうすれば自社のプラットフォームを使おう、使い続けよう、収益をあげようと思ってもらえるのか、答えを出そうと努力している」。
こうした不確実な要素があるため、クリエイターも多方面から収益を得ようと模索していた。アフィリエイトマーケティングも、ブランドパートナーシップの契約も、広告収益も、その取り組みの一環だ。たとえば2012年にローンチしたショート動画アプリのVine(ヴァイン)の例を見てみよう(このアプリを使うと、ユーザーは6秒間のループ動画をシェアできる)。2016年10月、親会社のTwitterがVineのサービスを止めると発表した。その理由は、競争が激化し、収益源や広告のオプションも欠けているため、コンテンツクリエイターをサポートできないからだという。
「当時Vineに人生をかけていた人たちは大勢いた。そのVineが消滅し、多くのクリエイターがまたゼロから始めなければならなくなった。あんな目に会いたい人など誰もいない」とダンカン氏。「クリエイターは皆、どうすれば自分のブランドと事業を持続的に成長できるのかを考えようとしている。だから、目の前のたかが数ドルでも、長く明るい未来につながらないことには費やしたりしない」。
[原文:Here is how much TikTok, Meta and other social platforms are paying creators]
Krystal Scanlon(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)