ヘッダー入札は他のアドテクベンダーによりGoogle対抗策として生まれた。ウォーターフォール設定のなかでは、SPP/アドエクスチェンジは、純広告とGoogleのエコシステムでの取引が終わるまで待たないといけなかった。自然、扱える在庫の質は落ちる。しかし、ヘッダーにタグを置き、アドサーバーにリクエストを送信する前に取引すればGoogleの壁をかわすループホールになる手法が生まれた。ヘッダー入札だ。
このヘッダー入札は媒体社にとっても利点がある。Googleと非Googleのプラットフォームを効果的に競い合わせ、在庫価格を押し上げられる可能性があるためだ。米国では媒体社の7割がヘッダー入札を導入したと言われ、ヘッダー入札に関するさまざまなノウハウ自体も急速に成長していると言われる(一部は公にされ、一部は差別化のため秘匿されているようだ)。ディスプレイ広告の市場環境が日本より格段に良い米国でも、媒体社は在庫を高く売る方法を探していることがわかる。
ノウハウのなかでも主流なのが、複数のヘッダー入札の併用だ。Google以外を通じた取引においても数社を競い合わせることで、収益の最大化を図るためだ。だが、この方法は、ページ読み込みに重大な影響を与えるヘッダーにタグが連なるため、遅延リスクを抱えていた。媒体社側は、このリスクへの対処や、ヘッダー入札の管理のため、エンジニアの人的資源を割かざるを得なくなるだろう。
ヘッダー入札は「非GoogleのアドテクベンダーによるGoogle対抗策」として生まれた。ウォーターフォール設定のなかでは、SPP/アドエクスチェンジは、Googleのエコシステムでの取引が終わるまで待たないといけなかった。自然、扱える在庫の質は落ちる。しかし、ヘッダーにタグを置き、アドサーバーにリクエストを送信する前に取引すればGoogleの壁をかわすループホールになる。それがヘッダー入札だ。
このヘッダー入札は媒体社にとっても利点がある。Googleと非Googleのプラットフォームを効果的に競い合わせ、在庫価格を押し上げられる可能性があるためだ。米国では媒体社の7割がヘッダー入札を導入したと言われ、ヘッダー入札に関するさまざまなノウハウ自体も急速に成長していると言われる(一部は公にされ、一部は差別化のため秘匿されているようだ)。ディスプレイ広告の市場環境が日本より格段に良い米国でも、媒体社は在庫を高く売る方法を探していることがわかる。
遅延リスク、人的コストの課題を解決
ノウハウのなかでも主流なのが、複数のヘッダー入札の併用だ。Google以外を通じた取引においても数社を競い合わせることで、収益の最大化を図るためだ。だが、この方法は、ページ読み込みに重大な影響を与えるヘッダーにタグが連なるため、遅延リスクを抱えていた。媒体社側は、このリスクへの対処や、ヘッダー入札の管理のため、エンジニアの人的資源を割かざるを得なくなるだろう。
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大手SSPパブマティック(PubMatic)は4月初旬、業界初となるヘッダータグの運用や測定における非効率性を解消するという「ラッピングソリューション」を発表した。パブリッシャーは追加料を支払うことなく技術及び分析機能などのサポートを含め、この最新機能の使用が可能になるという。
パブマティック日本法人代表の前川洋輔氏は「ヘッダーにタグが連なるため、遅延をもたらしていた」と語った。同社は複数のタグ(他社のものを含む)をまとめ上げる「ラッピングソリューション」の提供を米国などで開始。ラッピングする(まとめあげる)ことで、ページ読込の遅延を抑えることができるという。
また前川氏は「またヘッダー入札を導入しただけでは、現状は管理画面もない状況でプロセスが不透明性だ。何が起きているのか、媒体社はよくわからない部分がある」と語っている。これに対し同社の提供する「ラッピングソリューション」は全ヘッダー入札パートナーの入札動向や、ボリューム、収益、レイテンシーといった指標を透明性の高いリアルタイムな分析環境で提供する、としている。「パブリッシャーはできる限りの情報を手に入れられる」。媒体社が自ら行ってきたヘッダー入札の管理・運営を簡易化、可視化する、ということのようだ。
ダイナミックアロケーションのテストにも参加
この取材の一週間前にはGoogleがダイナミックアロケーションの開放をテストしていると発表し、ヘッダー入札に圧力をかけている(詳しくはこちらの記事)。テストは現行ヘッダー入札がウェブページのヘッダー部分で行っていることを、サーバー側に移行するものだ。さらに、自社のDoubleClick Adexchange(AdX)だけでなく、他ベンダーを巻き込んだオープンな形での競争を提案しているともとれる。Googleの主張は、モバイルエクスペリエンスを競い合う時代(詳しくはこちらの記事)に、ヘッダー入札で遅延リスクを抱えるよりも、サーバーサイドのインテグレーションで、同じことをしたほうがいい、ということのようだ。
しかし、サーバーサイドでの統合が、どのような設計につながるかはGoogle次第だ。前川氏は「ルビコンプロジェクトなどがテストに参加していると発表しているが、パブマティックも参加している。ただし、Googleのソリューションが媒体社のためになるかはテスト段階でわからないので、一部で言われる『ヘッダー入札は終わり』ということにはならない」と語っている。Googleがこのダイナミックアロケーションにおいて、「透明性」が担保されたソリューション設計をどうするのか。これまでのDoubleClick for Publishers(DFP)とAdXの運営方法とどう異なるようになるのか。
広告の販売先を決める権利は媒体社のもの
前川氏は「広告を誰に売るかを決定する権利(アドディシジョン)は媒体社にあるべきだ。プラットフォームはテクノロジーを提供することに徹するべきだ」と語った。現状はプラットフォームがアドディシジョンを握る形になっている。「どのヘッダータグがどのような広告を持ってきているかを明らかにすることで、アドディシジョンを媒体社に渡したい」。
前川氏は、同じ媒体社がヘッダー入札と開放されたダイナミックアロケーションの両方を併用することは考えづらいが、ヘッダー入札の利用を好む媒体社とダイナミックアロケーションを好む媒体社に割れる可能性はあると説明している。
日本の導入本格化はかなり先?
ただし、日本での導入が本格化するのは、かなり先のことになるかもしれない。パブマティックはラッピングソリューションの提供を北米および欧州の12社以上のパブリッシャーに対して実施したというが、前川氏は「ヘッダー入札というテクノロジー自体、日本では先の先だ」と話している。
媒体社と非Googleのベンダーに対し、Googleは余りにも大きい。媒体社と非Googleの部分的協調とも言えるヘッダー入札が、Googleからダイナミックアロケーション開放のテストを引き出したが、今後はどのような方向に向かっていくか、注視が必要だ。
Written by Takushi Yoshida(吉田拓史)
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