「いまさらやめるのは難しい」:低収益のApple News 、米パブリッシャーらがイラ立ち

Apple Newsは2018年、エンゲージメントも良く、良質で大きく伸びそうなオーディエンスを提供できると、自信満々でパブリッシャーに約束してきた。広告収入はあまり良かったとは言えないが、2018年の初頭時点では、ほとんどのパブリッシャーの予想は楽観的だった。

それから1年経ったいま、ほとんどのパブリッシャーがまだ何かを待っている状態だ。米DIGIDAYが話を聞いた7社のパブリッシャーによると、Apple Newsでのマネタイズはうまくいかないままだという。

情報筋によると、パブリッシャーが直接売り出している広告インベントリに広告主が興味を持たなくなったことや、年初めに多少の改善があったものの、多くのパブリッシャーが「最悪」だと語る広告のフィルレートによって、広告収入はどん底の状態だ。ある情報筋の話では、彼らがApple Newsへの毎月のパブリッシングで得た利益は「5桁台前半」であり、また別のパブリッシャーでは月間の利益が1000ドル(約11万円)を下回ったという。

Appleはこの件についてのコメント依頼には応じなかった。

直接販売に四苦八苦

情報筋によると、2019年2月現在も、パブリッシャーはApple Newsのインベントリの直接販売には四苦八苦しているという。そのうちの3つのパブリッシャーの情報筋は、Apple Newsのユーザーターゲティングの制限に言及している。サードパーティデータやIPアドレスの利用が制限されているが、これは彼らがApple News上で十分な広告販売ができない理由だとされている。4人目の情報筋は、昨今のパブリッシャーのプログラマティック広告に重きを置いた販売戦略に、Apple Newsが適合していないことを指摘している。Apple Newsではプログラマティック広告を禁止しているが、それがこのプラットフォームでの収益見込みが低い要因になっているという。

パブリッシングに関わる2人の情報筋によると、現在Apple Newsでインベントリを販売するうえでの最善策は、それを大きなキャンペーン内での付加価値として投入することだという。「我々は、これをアプリ内のオーディエンスにとってプレミアムなものだという位置付けをすることができた。広告主のなかにはこれに魅力を感じるものもいるだろう」と、ある情報筋は語った。「だが、ターゲティングするうえでは難点もある」。

インベントリを直接販売できる機会が少ないなか、ほとんどのパブリッシャーは、Apple Newsで売れ残った広告インベントリを2017年の後半から販売しはじめたNBCユニバーサル(NBCUniversal)のセールスチームのいいなりの状態になっている。これらの広告のCPMは3~4ドル(約330~440円)だが、複数の情報筋によれば、これは売れ残ったインベントリとしてはなかなかの数字だという。

情報筋たちは、売れ残りの広告インベントリが満稿になることが少ないのは問題だ、と付け加えた。

フィルレートは2割以下

あるパブリッシャーによると、2019年初頭までは、Apple Newsのなかでの売れ残りのインベントリのフィルレートは2割以下だったという。この情報筋によれば、これは「凶悪なほど低い」数字であり、Apple Newsでのパブリッシングは、マネタイズの問題が原因で多くのパブリッシャーが離れてしまったGoogleのAMPフォーマット、さらにはFacebookのインスタント記事(Instant Articles)と比べても、利ざやが小さくなってしまっているという。

2人目のパブリッシャーは、2018年を通じてフィルレートはおよそ15%だったとのことだが、2019年には多少改善が見られ、20~25%に上昇したという。この情報筋によると、この改善は励みにはなったが、それでも全体としてはフィルレートは「凶悪なほど」低いということを強調した。

過去には、スクリップス(Scripps)などのパブリッシャーは、Apple Newsがダブルクリック(DoubleClick)を推し進めるうえでの実験で、最大90%のフィルレート実現を豪語していたが、情報筋たちは、その結果はほど遠いものだったと主張している。

オーディエンスは増加傾向

ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)によると、Apple Newsにはおよそ9000万人の愛用者がいるという。この件に詳しい情報筋が米DIGIDAYに語るには、このサービスのユニークユーザーはおよそ7000万人であり、残りの2000万人は外国のユーザーだという。

Apple Newsがパースリー(Parsely)ネットワーク内のサイトにリダイレクトするリファラルトラフィックの量は、直近の12カ月間は毎週400万〜600万ビューのあいだで比較的安定している。このトラフィックは、読者がApple News内のストーリーに含まれるリンクをクリックすることで発生しているものだ。

だが、この記事の執筆にあたり連絡をとったパブリッシャーは全員、2018年から2019年にかけて、オーディエンスが安定した増加傾向にあると語っている。そのうちの3名によると、Apple Newsが生み出しているリファラルトラフィックは、Facebookよりも多いという。Apple News内の、人の手によって厳選されたトップニュース(Top News)ウィジェットでの特集は、膨大なトラフィックを生み出すことができると、複数の情報筋は語る。Apple Newsのコンテンツ・リサーキュレーション・ウィジェットは、ユーザーに「次に読む記事」をおすすめするものだが、パブリッシャーにとっては、そこに載ることで、月間でもっとも多く読まれる記事になることもあるという。

「彼らは非常にフェアだ」

また、Apple Newsを収入源として見たときには、パブリッシャーにはまだ不満があるが、あるパブリッシャーは、Appleの方針には感謝していると皮肉まじりに語った。「Appleにも、Appleがプライバシーを重んじていることにも敬意を示したい。そこで何かを販売することは、信じられないほど難しくなっている」。

パブリッシャーの多くは、Apple内での記事の編集チームの仕事には感謝しているという。数名は、そのチームには偏見がなく、商品やどのような記事を特集するかといったアイデアに寛大だと語っている。「彼らは非常にフェアだ」と、あるパブリッシャーは語る。「彼らは気が向いたときに返事をするが、常に売り込みを要求してくる」。

だが、Apple自身が持つApple Newsのオーディエンスに対して直接マネタイズができる大きな見込みがないなかでは、パブリッシャーにとって何が最善策なのかは不確かなままだ。

サブスク収益への転換も

「これは大きな意味を持つ数字だ」と、Apple News上の彼らのオーディエンスについて、あるパブリッシャーは語った。「だが、実際彼らに向けて何をすればいいのだろうか、という感じだ」。

そのなかにはサブスクリプションへ移行してくれるものもいた。Apple Newsにコンテンツを配信しているパブリッシャーの情報筋のひとりは、それがサブスクリプションへの道筋になったことを「嬉しい驚き」だと語ったが、一方では30%というAppleの取り分や、顧客のオーナーシップは依然として大きな問題だと警告した。

「我々のもつすべての広告インベントリを販売して得られるような、満足のいく収益をもたらすことはないだろうが、そこでサブスクリプションによる収益を得られたのは嬉しい驚きだった」と、その情報筋は語る。「そこにはあらゆる種類の問題があるが、ないよりはましだ」。

新しいアプローチの意味

マネタイズに関して全体的な進展がないことで、一時期のApple Newsに対するパブリッシャーの熱は冷めてしまった。米DIGIDAYが2018年2月に行なったパブリッシャーへのアンケートでは、回答者の3割近くが、TwitterやFacebook、そしてフリップボード(Flipboard)などのリファラルプラットフォームを押しのけてでも、2019年はApple Newsに力を入れるべきだと回答していた。

パブリッシャーたちはまた、Apple Newsの価値を引き出すうえで、直接マネタイズする以外の別の道を考えはじめている。あるパブリッシャーが語ったところによると、彼らはApple Newsを使ってポッドキャストのダウンロード数を伸ばす手段を模索中だ。また別のパブリッシャーは、Apple News経由で彼ら自身のサイトの有料コンテンツの購入を促すことができないかと期待している。3つ目のパブリッシャーでは、Apple Newsの読者を、自身のニュースレターの購読に導くため、さらに取り組んでいく予定だと語った。

こうした新しいアプローチは、楽観主義的な策というよりも、この残念な状況を打破する最善策であろう。「一度何かをはじめたら、引くのは難しくなる」と、情報筋のひとりは語った。

Max Willens(原文 / 訳:Conyac