米国広告市場の成長、2020年は「鈍化」する見込み:グループ・エムが予測

米国広告市場の成長率はここ4年間、1桁台半ばを維持してきた。広告ホールディングス世界最大手WPP傘下のメディアエージェンシー、グループ・エム(GroupM)によれば、2019年の成長率にも大きな変化はないという。同社は、米国広告市場は今年6.2%成長し、2440億ドル(約26.4兆円)規模になると推定している。

そしてグループ・エムは、米国広告市場は2020年も成長し続けるが、その伸び率は4%程度にとどまりそうだと予測する。

「根底をなす経済が不調というわけでもないが、それほど好調でもない」と、グループ・エムでビジネスインテリジェンス部門のグローバルプレジデントを務めるブライアン・ウィーザー氏は語る。「経済状況は2018年と2019年の広告業界に影響を及ぼした要因のひとつだ。この現象が2020年に解消されるとは考えにくい。そのため(成長率は)少し鈍化するだろう」。

近年は、デジタル企業による広告費支出の増加が、広告市場全体の規模を押し上げている。だが、グループ・エムによる最新のレポートでは、1月に施行されるカリフォルニア州消費者プライバシー法(California’s Consumer Privacy Act:CCPA)の影響はさほど大きくないものの、広告費はある程度先細りになるだろうと予測されている。ただ、このレポートは、特定のオンラインプラットフォームごとに数値を抜き出しているわけではないので、Google、Facebookの2強、そしてAmazonにどれだけのデジタル広告費が支出されると予測してあるのかはわからない。全体としては、従来型メディアでの広告は減少する(特にテレビが打撃を受ける)が、屋外広告のシェアは拡大すると予想されている。

「異常な」成長率

近年の広告市場に見られる成長率を支えてきたのは、デジタル広告への支出増加だ。Facebook、Amazon、Netflix(ネットフリックス)、アルファベット(Alphabet:Googleの親会社)、イーベイ(eBay)、ウェブメディア大手のIAC、ウーバー(Uber)、ブッキング・ドットコム(Booking.com)といったデジタル企業が2019年度に支出した広告費は、300億ドル(約3.2兆円)にのぼる見通しだ。ただ、今後数年で、こうした企業の急激な成長率が鈍化するに伴い、広告費の規模も減少するだろうとグループ・エムは見ている。

「この8社だけで2018年に260億ドル(約2.8兆円)、今年はおそらく300億ドル程度の広告費を支出している。その大部分は米国内での支出だと思われる」と、ウィーザー氏はいう。「次の層を見ると、ペットフードのチューイ(Chewy)、家具のネット通販大手ウェイフェア(Wayfair)をはじめとする企業が数億ドル(数百億円)を支出している。いまの広告市場の成長率は、こうした企業に依るところが大きく、それが異常な成長率の原因となっているのだろう」。

グループ・エムは、2021年以降、広告市場の年間成長率が約3%になると予測している。

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強いのはやはりデジタル広告

デジタル広告は、2019年末までに市場規模が20%増加し、2020年には13%成長するというのがグループ・エムの予測だ。また同社のレポートでは、2020年にはメディア支出全体の50%をデジタル広告が占めるようになるだろうとされている。

「広告予算の総額に大きな変化はない」と、ウィーザー氏はいう。「それはEU一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:GDPR)施行時にもはっきりと認識できた。メディア供給の変化は、需要の変化にまったく影響を与えないとは言わないが、それほど大きな影響を及ぼさない。両者は相関していないと言っていいだろう」。

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政治広告の規模は100億ドル超となる見込み

2020年の米国政治関連支出は160億~200億ドル(約1.7兆〜2.1兆円)となり、そのうち60%がメディア支出に充てられるとの予測になっている。グループ・エムは、政治広告だけで98億ドル(約1兆円)が支出されるだろうとしている。

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テレビへの広告費支出は減少

テレビの広告収入は、2019年に7%減少して650億ドル(約7兆円)となっている。ストリーミングサービス各社は広告主に「魅力的な環境」や「高度なターゲティング機能」をアピールしているが、このところ続いている広告主のテレビ予算削減を埋め合わせるほどではないという。グループ・エムは、このテレビ広告予算の削減傾向は続くと見ている。紙媒体やラジオといった、ほかの従来型メディアについても、来年度に広告が増加する可能性は低く、ラジオ広告費は横ばい、紙媒体のシェアは減少すると予測されている。

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屋外広告は増加の兆し

だが、従来型メディアのなかでも、屋外広告はこの衰退傾向に逆行しそうだ。レポートによれば、屋外広告の市場規模は今年8%増加し、83億ドル(約9013億円)に達する見込みとなっている。これは、広告業界がデジタル屋外広告というオプションを売り込み、マーケターがデジタルメディア以外のメディアに頼って消費者の関心を惹こうとしたためだとされている。デジタル屋外広告のオプションが拡大し、プログラマティックな購買が可能になれば、屋外広告の成長も続く可能性はある。だが「今後5年間の伸び率は毎年4%~5%と、ゆるやかなものになる」と、レポートでは予測されている。

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Kristina Monllos (原文 / 訳:ガリレオ)