グループ・エム曰く「YouTubeのブランドセーフは向上した。だが、まだ改善すべき点はある」

タイムズ・オブ・ロンドン(Times of London)が1年8カ月ほど前に、過激主義の動画に表示される広告とブランド名についての記事を掲載した。この記事によって業界に懸念が広がり、広告主がYouTube広告の購入を取りやめたりYouTubeに対策を訴えたりする動きが広がった。このタイムズ・オブ・ロンドンの記事に端を発し、YouTube上の過激主義、暴力、児童虐待といった内容を含む動画に表示される広告とブランドセーフについて大きく焦点が当てられるようになった。

世界最大の広告バイヤーであるグループ・エム(GroupM)で、南北アメリカ大陸のブランドセーフティに関するマネージングパートナーを務めるジョー・バローネ氏は、この問題を受けてYouTubeは「大きな進歩」を遂げたと指摘している。ホワイトリスト作成への道が開かれたのもその一例だろう。複数の広告主がYouTubeの広告を停止したことが同プラットフォームにとっての注意喚起となった。とはいえYouTubeで収益を得ているチャンネルは80万あるとされ、現時点ではAIツールも未成熟であり、さらなる対策が必要な状態だ。バローネ氏は10月17日にテキサス州オースティンで開かれた米DIGIDAY主催のメディアバイイングサミット(Media Buying Summit)で、YouTubeによる対策の進捗について「5段階中で2.5」と評している。

YouTubeの良い点悪い点

バローネ氏が改善が必要なポイントとして指摘しているのが、依然として広告プレースメントへの入札前にブロックを行っていない点、そして一般的に使われているサードパーティ製ブランドセーフティツールの使用を認めていない点だ。これまで多くの広告主が抱えてきた不満点と同様、これもまた「自分でやった宿題を自分で採点し、『信頼しろ』と言っているようなもの」だ。

バローネ氏はまた、「本当に独立したシステムになっていない。YouTube側が選別したリストが提供されるだけだ」と語る。

逆にYouTubeによるブランドセーフティ対策のなかで優れているのが、ホワイトリスト機能だ。サイバーセキュリティ企業のCHEQ(チェック)で最高売上責任者(CRO)を務めるクリス・デイビス氏は、YouTube上でブランドセーフティの確証は得られないと語る。さらにホワイトリスト機能の利用は「信じられないほど面倒」としつつも、同社では必ずホワイトリスト機能の使用を推奨しているという。

デイビス氏は「できうる最善を尽くしている。当社のクライアントのなかには単なるブランドセーフティではなく、社会的責任について懸念している企業が多い。だが現状のデジタル環境のなかでそうしたコンテンツの居場所はない。それでも当社は、クライアントを害のあるものから遠ざけるだけではなく、それ以上のものを目指している」と語る。

YouTube広報からの回答

YouTubeの広報担当は米DIGIDAYに対して、ブランドセーフティについて全力で取り組んでいると回答し、メディアレーティング協議会(Media Rating Council)からの認証評価に関する最近のブログ記事を紹介した。

同広報担当からのeメールには、「当社はサードパーティによるブランドセーフティの測定が行われるよう、全力で取り組んでいる。(アドベリフィケーション企業の)ダブルベリファイ(DoubleVerify)およびIASと行ったβテストでは、Google Preferred(グーグル・プリファード)をはじめ、オークションとリザーブの双方のうち99%でブランドセーフティの確保に成功しているとの結果を得た」と記載されている。

バローネ氏は、確かにGoogleはサードパーティによる認証システムを実施しているものの、サードパーティとは完全に独立した関係性を維持してはいないと指摘する。グループ・エムは、Googleにビューアビリティ(可視性)の相違を減らせるようなオープンソースのソフトウェア開発キットの採用を提唱している。

クライアントごとにリスク評価

ホワイトリストの導入を受けて、タイムズ・オブ・ロンドンの記事によってYouTube広告の購入を取りやめたクライアントは納得し、YouTubeへと戻ってきた。だがグループ・エムのクライアントのなかにはYouTubeへの予算を減らしている企業も存在する。バローネ氏によると、たとえばYouTubeにデジタル予算の25%を投じていたところを15%にしている企業があるという。グループ・エムは、デジタルメディアで広告を大規模に購入するクライアントに対し、100%のブランドセーフティの実現は不可能であるという実情を伝えている。

ブランドセーフティに取り組む各エージェンシーは、クライアントごとにリスク評価を実施している。グループ・エムではクライアントのリスク許容度を低、中、高に分類している。そしてそのためにはクライアントとの率直な対話が欠かせない。たとえば許容度を低に設定したクライアントも、それに応じて大量のインベントリーが失われていることが判明すれば設定の変更を望む場合がある。

バローネ氏は「許容度が低い場合、Snapchatによるフィルターは行わない。ユーザーが行うことはこちら側で制御できないからだ。だが(クライアントに)Snapchatでのエンゲージメントは大きいから、と言われれば、(当社からは)リスク許容度を上げるように提案している」と語った。

Kerry Flynn(原文 / 訳:SI Japan)