記事のポイント 対Google反トラスト訴訟は法廷で広告主らの証言が進んでいる。反トラスト訴訟専門弁護士はGoogle敗訴でも全面解体には至らないとコメント。 証言をおこなったメディア専門家やJPモルガンのメディア責任者 […]
- 対Google反トラスト訴訟は法廷で広告主らの証言が進んでいる。反トラスト訴訟専門弁護士はGoogle敗訴でも全面解体には至らないとコメント。
- 証言をおこなったメディア専門家やJPモルガンのメディア責任者らは、Googleの検索広告がメディアプランに欠かせないと明言。Google広告の独自性と代替不可能性を強調した。
- Google敗訴の場合、広告主から巨額の損害賠償が求められる可能性を指摘されており、すでに業界では議論が始まっている。
米司法省対Googleの反トラスト法訴訟が中間点に差し掛かった10月第2週、ワシントンD.C.のアミット・P・メータ判事の法廷で広告主の証言が続いた。今回の訴訟に関する広告主らの独特な見解は、ビッグテックの名が踊る見出しでニュースをにぎわせた。
米司法省がアルファベット(Alphabet)の検索帝国を反トラスト法違反で訴えた「インターネットの未来を占う」裁判が5週目に突入したところで、広告業界では政府側の勝訴となった場合に起こりうる状況についても、新たな話が出てきている。
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テック大手幹部らの証言
反トラスト法の専門家で元司法省弁護士(といっても今回の裁判には直接関わっていない)エリック・ポズナー氏はニューヨークで開催された広告カンファレンスで、仮にGoogleが敗訴しても、それが同社の全面解体を意味するとは考えるべきではないと発言した。
これまでは、今回の裁判の関連記事の見出しのほとんどは、ビッグテック幹部から引き出された新事実が中心だった。たとえばGoogleでも、ジェリー・ディシュラー氏が、特に親会社のアルファベットの目標を達成しなければならない場合にオンライン広告オークションに「調整」が加えられていたことを明かしている。
弁護側証人の目玉は、ソフトウエアの巨大企業マイクロソフト(Microsoft)のCEO、サティア・ナデラ氏だった。ナデラ氏はマイクロソフトがいかに検索市場に足掛かりを築こうとしたかを説明したが、ウェブ検索という領域が「飛行禁止区域」のようになっていると話し、GoogleがAppleやサムスン(Samsung)といったデバイスメーカーと排他的なデフォルト契約を結んでいることが競争の障害となっていると主張した。
「顧客」たちが語った独自性
法廷でGoogleの顧客の声を聞くことができたのは10月に入ってからだ。メディア業界の「ビッグ6」に詳しい長年のメディア専門家ジョシュア・ローコック氏が、Googleの検索広告枠はあらゆるメディアプランにとってなくてはならないものになっていると証言した。
裁判5週目に、この主張はJPモルガン・チェース(JP Morgan Chase)のメディア責任者トレーシー=アン・リム氏の裏付けを得る。リム氏は、通常のディスプレイ広告やソーシャルメディア広告に単純に置き換えることはできないGoogleの「独自性」について語った。
ローコック氏の主張を反復するような発言のなかで、リム氏は検索広告のターゲットを絞る際に使用できるインテントデータがGoogleの検索広告を独特なもの、さらには代替不可能なものにしており、それゆえ値上げをしたとしても影響があまり出ないと説明した。また、Googleがキーワードレポートで返すキャンペーンのフィードバック情報の粒度を下げたが、それでも競合の検索広告プロバイダーに予算を移そうとは思わないとも証言している。
司法省はGoogleがシャーマン法に違反しているとして訴訟を起こしたわけだが、この段階で市場で優勢を占めることが必ずしも法律違反ではないことを指摘しておくべきだろう。
結局のところ、Googleの収益の約50%を占める検索広告ツールが実際に効果的であると、多くのメディアバイヤーが証言するはずだ。だが、広告主の証言から、現状がどうであっても彼らがGoogleに広告費を投じると裁判所が判断した場合には、それが判決結果に影響する可能性はある。
Googleが敗訴した場合は……
その一方で、反トラスト法の専門家ポズナー氏は10月第2週に報道関係者と話をするなかで、10月後半にGoogleの弁護側の陳述が始まるときに、Googleの検索広告が広告主にとって数多くの選択肢のひとつにすぎないと論じる可能性を挙げた。
最高のものであること、市場で最も効果的で人気の高いことは反競争的ではない、というのがポズナー氏の論拠だ。(オンラインでもオフラインでも)メディアバイヤーに幅広い選択肢があるのだと法廷が納得すれば、Googleに有利に働く可能性がある。
別の場所で、ポズナー氏はGoogleが「万が一」敗訴した場合、Googleに広告費を向ける根拠となった活動が法廷で違法だと認められたことで、広告主から数億ドル(数百億円)に上る損害賠償が求められる可能性も指摘した。
「Googleが敗訴した場合、Googleの行いによって損害を受けた人々がその後民事訴訟を起こす可能性が高い」とポズナー氏はメディアバイヤーから成る聴衆に語った。「つまり、Googleのかつての反競争的な慣行によって生じた損失額に対し、皆様が損害賠償を請求できる可能性があるということだ」。
裁判は続く。
[原文:Google’s ‘unique’ status in the advertising paradigm emerges as its DOJ battles continue]
Ronan Shields(翻訳:SI Japan、編集:分島翔平)