発表によると、YouTubeは動画と動画のあいだに、動画内に登場したすべての製品のリストを表示するポップアップを表示し、視聴者にその購入を薦めるという。YouTubeはさらに、各動画で取り上げられたものと似たアイテムをレコメンドする「関連商品」フィードのテストも行っている。
YouTubeはいま、動画内の製品を認識し、それを視聴者に直接提供する広告機能のテストを進めている。
発表によると、YouTubeは動画と動画のあいだに、動画内に登場したすべての製品のリストを表示するポップアップを表示し、視聴者にその購入を薦めるという。YouTubeはさらに、各動画で取り上げられたものと似たアイテムをレコメンドする「関連商品」フィードのテストも行っている。
YouTubeの広報担当者は米DIGIDAYの姉妹サイトであるモダンリテール(Modern Retail)宛ての声明のなかで次のように述べた。「我々は現在、オーディエンスが信頼できる制作者の信用や知識を利用して、紹介された製品をYouTubeで直接購入できるようにする、新たな統合されたショッピング体験のベータテストを進めている」。
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これは、eコマース分野に足場を確保するためにGoogleが行っている一連の取り組みのうちの最新のものだ。Googleには、宅配サービス「Googleエクスプレス(Express)」のような新しいコマース製品を公開しては廃止するという長い歴史がある。この1年は、ショッパブル動画広告を導入したり、ブランドが「Googleショッピング」に製品リストを無料で掲載できるようにしたりして、eコマースの取り組みを加速させてきた。Googleが最近公開したほかの新機能には、動画ショッピングプラットフォームのショップループ(Shoploop)やチェックアウトオプション「Buy on Google」があるが、おおかたの観測では、ごく少数のセラーしか惹きつけられていない。しかし、YouTube動画内で商品を提供する機能が、より広く展開されるのであれば、この分野にいるエージェンシーはすでに興奮を覚えており──そしてブランドの目には、ショッピングプラットフォームとしてのYouTubeの価値を高めることになるかもしれない。
「Amazonに対抗しようとしている」
マーケットプレイスを専門とするエージェンシー、タフ(Tuff)のPPCストラテジスト、クリス・アラルコン氏は、「広告主やブランドの観点からも、摩擦をなくすことは常にプラスになる」と述べる。同氏は、動画は強力な販売ツールだというが、現在、レビュー動画やスポンサー動画で紹介されている商品を直接購入するには、視聴者はスクロールダウンしてYouTube動画の説明文に埋め込まれたリンクを見つけなければならない。アラルコン氏によると、動画のあとに直接商品を提供するようなちょっとした工夫でも、ブランドにとってのYouTubeの価値を変えることができるという。
Googleは近頃ありとあらゆる実験を行っているが、適切なeコマース機能には、まだたどり着けていないようだ。ブランドがGoogleショッピングのページに製品ページを無料でアップロードできる機能を除けば、Googleが最近提供したもののなかで突出したものはないとアラルコン氏はいう。しかし、このような機能があれば、摩擦が少なくなるため、ブランドからの賛同を得られることは間違いない、とアラルコン氏は話す。
今回のテストは、コマースの「ウォールドガーデン」になるというGoogleの希望を裏付けているようにもみえる。特に、Googleが動画の合間に表示している購入リンクが、外部プラットフォームではなく、Googleショッピングのリストに直接転送される場合はなおさらだ。アラルコン氏は、「Googleは、Googleショッピングのプラットフォームを使って、Amazonに真っ向から対抗しようとしていると思う」と述べ、同氏の言葉を借りれば、「すべてを自分たちのプラットフォームに留めておこう」というモデルに着地したようだ。
YouTubeに新カテゴリーの広告
その理由は、2020年に広告売上を前年比52%増の146億3000万ドル(約1兆6200億円)に伸ばしたAmazonから、Googleが広告事業で大きな挑戦を受けていることにある。Googleの昨年の広告収入は672億ドル(約7.4兆円)で、まだ広告事業ではAmazonに大きく差をつけているが、特に商品販売においては、Amazonのほうがはるかに優れている。Amazonでは「コンバージョン率がとにかく高く、人々はAmazonにいるときは常に買い物をする気持ちになっている」とアラルコン氏はいう。フィードバイザー(Feedvisor)の調査によると、Amazonはいまやブランドが選ぶ広告プラットフォームとなっており、約62%のブランドが、競合する広告プラットフォームよりもAmazonでの投資収益率が高いと回答している。
YouTubeで製品をより可視化することで、Googleが小売ブランドのロイヤルティをいくらか取り戻すのに役立つ可能性があり、YouTubeがテストしている「関連商品」機能自体も、Amazonにある「類似商品」のカルーセルと同様の方法で、スポンサー広告プレースメント用のスロットになるかもしれない(モダンリテールの問い合わせに対し、Googleはこの特定の話題に関してコメントしなかった)。
マーケティングエージェンシー、タクティカルデジタル(Taktical Digital)のチーフストラテジスト、イラン・ナス氏は、「関連商品」フィードに関して、「Googleの究極の目標は、このカルーセル上でスロットを販売することだと思う」と話す。ナス氏は、現在のYouTubeでは「このようなスポンサード製品を扱う機会はあまりない」ので、これによってYouTubeに新たなカテゴリーの広告が生まれることになると述べている。
プレロール広告に勝るものになるか
YouTubeはショッパブル広告のような新しい広告フォーマットを導入しているが、ナス氏は、彼らの指標の観点からいうと、現時点では「びっくり仰天するようなものにはお目にかかっていない」と話す。YouTube動画のプレロール広告は標準であり続け、「それに勝るものはない」とナス氏はいう。
ナス氏がYouTubeでブランドと協力して行っている仕事のほとんどは、インフルエンサーと提携してYouTube動画内にスポンサードプレースメントを制作することだ。今回YouTubeがテストしている商品表示機能は、最終的にどうなるかにもよるが、これらのプレースメントの価値をさらに高め、最終的にはYouTubeに収益化の手段を与えることになるかもしれない。
[原文:Google’s newest test serves up products displayed on YouTube]
MICHAEL WATERS(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:長田真)