Googleは10月20日、エンドユーザー向け広告管理機能「マイアドセンター」の提供を開始したと発表した。ディスカバー、Google検索、YouTubeほか、Googleネットワークのサイトに表示される広告を、ユーザー自身の好みに応じて管理・設定しやすくするのが狙いだ。
Googleは10月20日、エンドユーザー向け広告管理機能「マイアドセンター(My Ad Center)」の提供を開始したと発表した。ディスカバー(Discover)、Google検索、YouTubeほか、Googleネットワークのサイトに表示される広告を、ユーザー自身の好みに応じて管理・設定しやすくするのが狙いだ。
2022年5月の開発者向けカンファレンス「Google I/O」で導入が予告されていたマイアドセンターは事実上、「この広告について(About this ad)」の後継機能となる。ユーザーにとっては、サイト閲覧時に表示される広告の種類や広告主(ブランド)の選択など、コントロールの範囲が広がる。
Google広告担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャー、ジェリー・ディシュラー氏は同社の公式ブログ記事で、マイアドセンターについて次のように説明している。「ユーザーは、『センシティブな』内容の広告をブロックしたり、広告のパーソナライズに使われる詳細情報を入手したりできる。(中略)自身にかかわる情報を適切に管理する方法や、情報の使われ方を調べるのに時間をかけなくてすむ」。
Advertisement
マイアドセンターの機能は?
米DIGIDAYが5月、マイアドセンターについて記事で取り上げて以降、Googleは新機能について追加情報を提供してきた。たとえば、『センシティブな』トピックとされるアルコール、出会い系、ギャンブル、妊娠、育児、ダイエット関連のブランドによる広告の表示を制限できるカスタマイズ機能などだ。また、以前は、YouTubeの閲覧履歴がオン(有効)になっている場合、その履歴が自動的に広告のパーソナライズに利用されていたが、今後はマイアドセンターで設定すれば、パーソナライズをすべて無効にすることも可能になる。
ディシュラー氏は公式ブログ記事でこう述べている。「YouTubeの閲覧履歴を広告のパーソナライズに利用されたくない場合、ユーザーは自分のマイアドセンターにアクセスして設定を変更すればよい。YouTubeのフィードに表示されるおすすめの内容に影響を与えることなく、閲覧履歴の広告目的利用を無効化できる」。
今後、世界展開が予定されているマイアドセンターの機能によりユーザーは、自分が閲覧中の画面に広告が表示される理由、つまり広告表示の基準を確認できる。また、どの広告主がどの広告を掲載しているかといった情報の入手も容易になる。ただし、サードパーティのアプリとウェブサイトでは一部の管理機能が使えない。
いま、マイアドセンターを導入する理由
Googleのユーザープライバシー&トラスト担当リード・プロダクトマネージャーを務めるカリン・ヘネシー氏は記者たちとの対話の場で、同社が2022年、ボストン・コンサルティング・グループ(Boston Consulting Group)に委託して実施したオンライン広告ユーザー意識調査の結果に言及した。この調査によると、回答者の81%が、自分の個人情報に企業がアクセスすることについて「心配である」と答えたという。
「デジタル体験に対するユーザーの信頼度が低下しつつある」とヘネシー氏は語る。「自身に関するデータが、企業によってどのように利用されているか、多くの人々が不安を抱いているからだ。結果として、企業が提供する商品やサービスが消費者から敬遠される場合もある」。
ヘネシー氏は、オンライン商品に対するユーザーの期待には「相反する側面」があると説明する。たとえば、パーソナライズされたサービスを受けながらも自身のプライバシーをしっかり守りたいという要望がその好例だ。同氏によれば現在2億6000万人のユーザーが、自身が検索した内容、アクセスしたサイト、視聴した動画などのアクティビティを一元的に管理できるGoogleマイアクティビティ(Google My Activity)のサービスを利用しているという。
またヘネシー氏は、一連の新機能導入について、従来型広告トラッキングツールの全面的規制にそなえたGoogleの施策の一環であると述べている。「当社では、サードパーティCookieのサポート終了やサイトを横断したトラッキングの廃止を見すえて、広告商品とウェブブラウザの対応をしようとしている」。
マイアドセンターにアクセスしたユーザーは、自分の好みにより広告表示設定を「オン」と「オフ」のどちらにも切り替えられる。Googleはマイアドセンターのプロモーションを企画中で、「コンテンツ戦略を明確化し、平均的なユーザーにとってわかりやすい言葉で表現するつもりだ」とヘネシー氏はつけ加えた。
予想される影響は?
エビクイティ(Ebiquity)の最高製品責任者ルーベン・シュルールス氏は、マイアドセンター導入がGoogleの収益に及ぼす影響について、アルコールやギャンブル関連企業の広告をブロックできる機能の観点から次のように述べている。
「Googleはマイアドセンターに対する方針を貫き、計画を確実に実行に移す必要がある。とはいえ、この計画はリスクをともなう」とシュルールス氏はいう。「Googleは広告主の業種別売上の内訳を公表していないが、ディスプレイ広告と動画広告に多額の予算を投じるギャンブル関連企業の存在は大きいはずだ」。
「マイアドセンターの機能がそれほど充実しているのなら、ユーザーは皆、広告表示をオフにするかもしれない。だとすると、Googleにとって、この取り組みは危険な賭けになる」。
[原文:Google launches My Ad Center as ‘Trust in digital experiences has declined’]
Ronan Shields(翻訳:SI Japan、編集:黒田千聖)