アルファベットの第4四半期決算を発表した。先週のFacebookに続く好決算(時価総額世界1位に躍り出た)となり、両者のネット広告ビジネスが順調に成長し、デジタル広告業界が2強時代に突入しつつあることを改めて印象づけた。
アルファベットの第4四半期売上高は213億2900万ドル(約2兆5600億円)。うち広告売上高は190億7800万ドル。通年の売上高は749億8900ドル、広告売上高は673億9000ドル、第4四半期、通年ともに広告は売上の約90%をしめる。
第4四半期決算、Googleのネット広告ネットワーク内ではCPC(クリック単価)が前年比13%落ち、クリック数は同31%伸びた。提携先に支払うトラフィック獲得コスト(TAC)は40億5500万ドル、広告売上の22%と投資家が問題視しない水準だ。
Googleの持株会社アルファベット(Alphabet)は2016年2月1日(米国時間)、2015年第4四半期決算を発表。先週のFacebookに続く好決算で、Appleを抜いて時価総額世界1位に躍り出た。両者のネット広告ビジネスが順調に成長し、デジタル広告業界が2強時代に突入しつつあることを改めて印象づけている。
広告が売上をドライブしている

過去1年における四半期ごとの決算比較(出典:アルファベットQ4報告書)
アルファベットの2015年第4四半期売上高(上図)は213億2900万ドル(約2兆5600億円)。うち広告売上高は190億7800万ドル(約2兆2800億円)となっている。
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通年の売上高(下図)は749億8900ドル(約9兆円)、広告売上高は673億9000ドル(約8兆1000億円)、第4四半期、通年ともに広告は売上の約90%をしめる構造だ。

過去3年における通年決算の比較(出典:アルファベットQ4報告書)
第4四半期では、Googleのネット広告ネットワーク内ではCPC(クリック単価)が前年比13%落ち、クリック数は同31%伸びた。提携先に支払うトラフィック獲得コスト(TAC)は40億5500万ドル(約4900億円)、広告売上の22%と投資家が問題視しない水準に収まった。
アルファベットのCFO、ルース・ポラット氏は「力強い第4四半期の伸びは、長い間投資を続けてきたモバイル検索、YouTube、プログラマティック広告によるビジネスの活況を反映したものだ」と語る。
GoogleのCEO、サンダー・ピチャイ氏は、Gmailの月間アクティブユーザー数が10億に達したと明らかにした。検索、Google Chrome、Android、Google Play、Google Maps、YouTubeに次ぐ、7つ目の10億人超えサービスとなり、Googleの影響力の大きさを伺わせる。
Facebookとのドラッグレース
ライバルのFacebookが先週、好決算を発表していた。売上が前期比30%増。株価が上がり時価総額が2000億ドルを超えた。
Facebookも広告事業に依存。両者の収益構造は似通っている。eマーケター(eMarketer)調査によると、モバイル広告は成長分野で各社が競争を繰り広げているが、2015年にモバイル広告売上に占める割合(予測ベース)は、Google(34.9%)とFacebook(17.1%)の2社で5割を超えている。より濃密な寡占の始まりを示唆しているかもしれない。
広告世界最大手WPPグループ、最高デジタル責任者(CDO)のスコット・スピリット氏は2015年12月のアドテック東京で「無数のアドテク企業による棲み分けを示す『カオスマップ』が、いまやGoogleとFacebookの2強の競争に書き換えられた」と話していた。
動画、インテント、個人データ、2G環境
両者はデジタル動画で激しく競争している。Googleは2015年後半、YouTubeの広告枠売買プラットフォームをGoogleと広告主のみが関われる仕組みにし、サードパーティを閉め出した。YouTubeの収益性を高めるようとしている。これを追うFacebook動画はニュースフィード内での自動再生、無音で再生数を稼ぐスタイル。インストリームのYouTubeはFacebookよりビューアビリティ(視認性)が高そうだ。Googleは、この点でYouTubeの広告効果が優位と主張している。
さらにGoogleは、マイクロモーメント(Micro-Moments)を提唱。ソーシャル内で収集されたデータは他人の目を気にした「作り物」で、インテント(意図)データになり得ない、と主張。検索に基づいたGoogleのサービスこそ、マーケターの要求に応えられるとしている。
Facebookは個人データのマーケティング活用でGoogleに先んじており、Googleは欧州で抱える法的リスクなどを考慮しなければならず、後手に回っている(Googleも広告主にデータを開放するという観測もある)。Facebookは低所得国を視野に入れ、2G環境などでのアプリのパフォーマンスを高める努力を進め、オーディエンスネットワークはGoogleの領域であるモバイルウェブまで伸ばし始めた。
両者の競争がどのような形になるか、今年も手に汗を握ることになりそうだ。
Written by 吉田拓史
Image by Cory Doctorow(CreativeCommon)