Google が苦戦、IABの「GDPRフレームワーク」との統合

Googleが、欧州インタラクティブ広告協議会(IAB Europe)の一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:以下、GDPR)向けフレームワークとの統合で、数々の問題に直面している。

Googleは8月に統合作業を始めると予告していたが、その期限はすでに過ぎてしまった。GoogleがIABとの協定への署名を躊躇している理由のひとつは、ベンダーの排他性に関する条項だ。情報筋によると、Googleがこのフレームワークに参加していないベンダーとの取引を継続できるかどうかという点で、いまも堂々巡りの議論が続いているという。IABは、どのパブリッシャーも自社で選んだベンダーと取引できると強調しているが、IABのフレームワークに参加していないベンダーについては、そのベンダーがGDPRに準拠していることをパブリッシャーが保証しなければならないという条件があるのは明らかだ。8月は欧州にとってバカンスのシーズンだが、そのことも問題の解決には役立たなかった。とはいえ、Googleはいまも、統合の協定書に署名するための努力を続けている。

「我々はこの数カ月間、IABと緊密に連携しながら、当社の広告製品が(IABの)『トランスペアレンシー&コンセントフレームワーク(Transparency & Consent Framework:透明性と同意の枠組)』と共存できるようにすべく取り組んでいる」とGoogleの広報担当者は語っている。「いまは、このフレームワークに正式に参加するための手続きを進めている段階で、できるだけ早く統合を実現したいと考えている」。

最大の問題のひとつ

ただし、協定書への署名は最初のハードルに過ぎない。まだ議論が続いているほかの問題も解決しなければならないのだ。関係するパブリッシャー、ベンダー、エージェシーのあいだで、妥協が図られる可能性もある。

最大の問題のひとつは、Googleなどのデータ処理者がパブリッシャーのユーザー情報を利用する目的についての取り決めだ。

この2カ月間、エージェンシー持株会社2社、Google、欧州の大手パブリッシャー、アドテクベンダーなど、20社で構成されるグループが、毎週のように電話会議を開いて、利用目的に関する問題をどのように解決すべきか議論した。

パブリッシャーらの主張

広告エコシステムにおいて立場の異なるさまざまな企業が、そのビジネスモデルも事業目的も異なるなかで解決策を見出すのは、容易なことではない。パブリッシャーの多くは、デジタル広告サプライチェーンのパートナーがパブリッシャーのサイトから得たデータを利用する方法を、細かくかつ完全にコントロールしたいと考えている。なぜなら、サプライチェーンを完全にコントロールできずに何らかの問題が起きた場合、GDPRによってデータ管理者として罰金を科せられる可能性があるのはパブリッシャーだからだ。また、ユーザーデータがどのような目的で使われるのかをユーザーに正しく伝えられるようになるとも、パブリッシャーは主張している。

IABのフレームワークが2017年に発表されたとき、パブリッシャーが抱いていた大きな不満のひとつがこの問題だった。その当時、多くのパブリッシャーがIABに抗議し、自分たちの意見をまともに聞かれることなく、アドテク企業のビジネスモデルとアドテク市場の現状を維持するフレームワークが作られたと訴えた。そこでIABは、パブリッシャーの怒りを静めるためにフレームワークの修正に乗り出した。その結果、いまではほとんどのパブリッシャーが、フレームワークの内容に満足している。現行のフレームワークは、ベンダーに対してデータの利用目的を公開するよう義務付けており、パブリッシャーは、どのベンターパートナーにどのような目的でデータの利用を許可するのかをコントロールできる。

ただし、比較的小規模なパブリッシャーのなかには、コントロールの精度をあまり気にかけていないところもある。

Googleからの反論

一方、Googleにとって、利用目的に関する現行の取り決めは、すべてのサービスをまとめて提供することを難しくするものだと情報筋はいう。パブリッシャーが利用目的に対するコントロールの精度を高めるべきだと主張するなか、Googleのようなベンダーは、利用目的にもっと柔軟性を持たせたがっているというのだ。たとえば、パブリッシャーは、パーソナライズ目的でのデータ利用を、広告の選択や配信目的でのデータ利用とは異なるものとして扱うべきだと考えている。しかしベンダー側は、広告の配信や測定など、互いに関連がある取り組みは、すべての同一の目的とみなすべきだと反論している。

IABのフレームワークのもとでより精度の高いコントロールを実現するために半年間交渉を続けてきたパブリッシャーは、Googleを満足させるためにこれまでの議論が振り出しに戻る可能性があることに苛立っていると情報筋はいう。「いまのままでは、彼ら(Google)はデータの収集と利用に関するサービスを別々に販売することを余儀なくされるだろう」とある大手パブリッシャーの幹部は話す。「彼ら(Google)が(現行の)IABフレームワークに従うことになれば、パブリッシャーはGoogleに対して許可する活動をより細かく選別できる権限を手にすることになる。より強力なコントロール権がパブリッシャーに与えられることになるのだ」。

Googleは、このような許諾システムを標準にするのではなく、特定のサプライヤーにコントロール権を持たせるべきだと考えているようだ。だがそうなれば、2社あるいは3社のアドテクサプライヤーを利用しているパブリッシャー(大半のパブリッシャーがそうだ)にとって、より複雑さが増す可能性がある。

理想のフレームワーク

とはいえ、この議論に詳しい複数の情報筋の話によると、Googleの態度はきわめて協力的かつ建設的だという。

「我々が目指しているのは、異なるさまざまな企業が受け入れ可能で、かつ見直しの目的を達成できる妥協点を見つけることだ」と、グループ・エム(Group M)で欧州・中東・アフリカ担当ブランドセーフティマネージャーを務めるスティーバン・ランジェロビッチ氏はいう。「ひとつのビジネスモデルだけに対応し、ほかのモデルには対応できない目標を掲げることはできない。作業グループでは、各社が先の目的をかなえながら満足できる妥協点を見つけ出すために、あらゆる分野で懸命な取り組みを続けている。我々が必要としているのは、すべての企業に柔軟性をもたらしながら、矛盾がなく、安心して利用できるフレームワークなのだ」。

Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)