Googleによる立ち上げから1年を迎えたニュースイニチアティブ(Google News Initiative)に、ローカルメディアによる有料コンテンツ商品開発を半年間支援する新たなプログラムが追加される。このプログラムは、立ち上げ時点で北米のニュースパブリッシャー8社が参加する。
Googleによる立ち上げから1年を迎えたニュースイニチアティブ(Google News Initiative)に、ローカルメディアによる有料コンテンツ商品開発を半年間支援する新たなプログラムが追加される。
GNIサブスクリプションラボ(GNI Subscriptions Lab)と名付けられた同プログラムは、ローカルメディア・アソシエーション(Local Media Association)やFTIコンサルティング(FTI Consulting)と提携する形で実施され、立ち上げ時点で北米のニュースパブリッシャー8社が参加する。8社の規模はさまざまだ。系列企業も独立企業も含まれ、対象地域も小都市から大都市までバラエティーに富む。Googleの広報担当によると、同社は参加する8社をこれから確定していく段階とのことだ。
参加企業はFTIコンサルティングによるベンチマーキングを行い、数カ月におよぶ質的および量的な市場調査を通じてオーディエンスから有料コンテンツを購入してもらえそうか、サブスクリプション商品が普及しうる市場規模がどれくらいかを評価する。また参加企業にはGoogle、FTI、LMAの社員が訪問し、進捗状況について話し合う予定となっている。
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サブスク支援の現状
およそ1年半前に、Googleが60社近いパブリッシャーと提携してSubscribe with Google(サブスクライブ・ウィズ・グーグル)の開発を開始した。現在まで、ワシントン・ポスト(The Washington Post)やマクラッチー(McClatchy)、イタリアのラ・リパブリカ(La Repubblica)、フランスのレ・ゼコーなど、50社近くのパブリッシャーが同商品の運用を開始している。こうしたパブリッシャーのうち10社ほどは、初期のワーキンググループには所属していなかった企業だ。
Googleは現在、サブスクライブ・ウィズ・グーグルが会員プログラムや寄付金といった読者収益を追求するパブリッシャーにとって実際に有効かどうかを判断する初期段階にある。3月20日に、同社はサブスクライブ・ウィズ・グーグルをガーディアン(The Guardian)で試験運用していることを発表した。同社では会員プログラムを広告以上に主要な収益源とすることに成功している。昨年11月に、同社は有料会員が100万人以上に到達したことを発表している。
パブリッシャーによるサブスクライブ・ウィズ・グーグルの評価は賛否両論だ。大きな原因として、自社商品に組み込むのが大変である点が挙げられる。サブスクライブ・ウィズ・グーグルの発表から半年以上が経過したが、立ち上げ時の参加企業の多くはまだ実装を終えていない。大半の企業はほかの開発や技術計画と合わせる必要があるためだ。Googleの広報担当によると、現時点で実装を完了したのは20社に満たないという。
重労働は覚悟のうえ
「Googleを非難する気はない。どのような形であれ、難しい作業なのだ。だが、もし我が社がサブスクライブ・ウィズ・グーグルを追加すれば、私の仕事は倍になるだろうね」と、昨年サブスクライブ・ウィズ・グーグルを試したあるパブリッシャーの社員は語っている。
Googleはその点において一定の改善を見せている。たとえば2018年の暮れに、サブスクライブ・ウィズ・グーグルはピアノ(Piano)との統合を行っている。ピアノはBusiness Insider(とDIGIDAY)も使用している業界をリードするペイウォールツールだ。ピアノの関係者によると、ピアノのクライアントのなかにはまだローンチには至っていないものの、サブスクライブ・ウィズ・グーグルの統合をすすめている企業が数社存在するという。
今回のサブスクリプションラボに参加するパブリッシャーはいずれも、これと同様の重労働を覚悟のうえだ。応募企業にはCEOレベルの買い付け能力と、プロダクトマネージャーまたはプロジェクトマネージャーの委任、商品やオーディエンス、マーケティング、技術部門からのリソース提供が求められる。
とりあえずは試行錯誤
このサブスクリプションラボは昨年にFacebookが開始したアクセラレータープログラムに近い。両社とも、自社の取り組みがもたらすベストプラクティスによって参加企業にとどまらないニュース業界の幅広い支援につながると強調している。だが同時に両社とも、プログラムが自社のサブスクリプション商品を宣伝するものにはならないだろうとも語っている。
ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)をはじめとする全国規模のニュース大手は、サブスクリプション収益への移行で大成功を収めている。だがこうした有料コンテンツへの移行の恩恵を受けられるのは大手のみではないかという懸念も浮上している。最近行われた調査によると、ほとんどの消費者は限られた数のパブリッシャーによるサブスクリプションしか登録していない。
ローカルメディア・アソシエーションの最高イノベーション責任者を務めるジェド・ウィリアムズ氏は、「今回のプログラムはこれまでにない新しいもので、適用して判断できるような知識や経験は存在しないのではないかと思う」と指摘し、次のように述べた。「まだどうなるか結論は出ていない。そして試す価値はある」。
Max Willens(原文 / 訳:SI Japan)