12月第3週、UKとドイツの大手パブリッシャー、エージェンシーグループ、Googleおよびその他アドテクベンダーがロンドンで会合を持ち、パーソナライズド広告の提供に際し、データ処理者がパブリッシャーのユーザー情報を利用できる目的について話し合い、妥協案に同意した。
欧州インタラクティブ広告協議会(IAB)の一般データ保護規則(GDPR)準拠に関するいくつかの障害について、Googleとパブリッシャーらが協議し、ある程度の進展を見せたと、内情に詳しい複数の情報筋が語った。
12月第3週、UKとドイツの大手パブリッシャー、エージェンシーグループ、Googleおよびその他アドテクベンダーがロンドンで会合を持ち、パーソナライズド広告の提供に際し、データ処理者がパブリッシャーのユーザー情報を利用できる目的について話し合い、妥協案に同意した。利用目的は、広告の配信および測定からプロファイル作成のためのデータストレージおよび使用まで多岐にわたる――パブリッシャーが収集し、パーソナライズド広告を配信するためにプログラマティック広告パートナーに提供される全情報がこれに含まれる。
積極的になったGoogle
今回の会合は、約18回にのぼる電話会議と、IABのトランスペアレンシー&コンセントフレームワーク(透明性と同意の枠組)に取り組む委員会の作業部会との間で一度もたれた直接会議の集大成として開かれた。協議中、Googleおよび他のアドテクベンダーは、厳密に取り決めず、相互に関連する用途は同一の目的とすることが望ましいと、訴え続けた。たとえば、広告の配信と測定は普通、単独では行なわない。したがって、同じ目的の範疇に入れるべき、というのが彼らの論旨だ。Googleの場合、本質的に相関性のある複数の用途について、それぞれに使用目的を分けられると、同意を求める際、ユーザーを混乱させてしまう恐れがある。
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一方、パブリッシャー勢は以前から、自らのデジタル広告サプライチェーンにおいて、サイトから得られるデータを利用する全パートナーに対する厳格なルール作りと管理を強く求めている。実際、作業部会のパブリッシャーらは2017年に最初のフレームワークが発表された当時からこれを主張しており、パブリッシャーは全般に、自身の立場が悲しいほどに考慮されていないと、当初から不満を抱いていた。今回、数の多少にかかわらず、多種多様な目的についてさまざまなシナリオが協議され、参加した複数の情報筋によると、Googleおよび他のアドテクベンダーは厳密なルール作りを求めるパブリッシャー寄りの妥協案に同意したという。
「これまで、Googleは不在か、出席したとしても、きわめて非協力的だった」と、会合に参加したある業界幹部は語る。「しかし、いまやもっとも積極的な参加者だ」。
欧州IABは合意の詳細について公式に発表はしていないが、12の目的について合意に至り、さらに、ロケーションデータの利用法に関する取り決めもなされたと、出席した情報筋は語る。ロケーションデータの取り扱いについては、運営委員会が毎週開催した電話会議でも取り上げられていた。しかし、フランスの情報処理および自由に関する国家委員会CNILが先頃下した決定を受けて、早急な合意を求める声が上がっていた。CNILはモバイルロケーションテックベンダー、ベクタウリー(Vectaury)がGDPRに違反しているとみなし、同社に3カ月以内のデータ抹消と体制見直しを命じ、これによりアドテクベンダーおよびパブリッシャーの間に不安が広がっていた。
パブリッシャーも前向き
会合の出席者は利用目的数と、ユーザーの同意が得られた場合に各目的の範疇内で行なえるデータプロセッシングオペレーションについて合意した。それらすべてをパブリッシャーオーディエンスに伝える際に用いる言語に関する合意が、次の段階となる。ただし、これはあくまで第一歩に過ぎない。合意条件については、すべて運営委員会の批准を受ける必要があり、作業グループに参加した多くの企業が委員会も構成していると、内情に詳しい情報筋は語る。
今回、会合は1日半におよび、20の企業から約35名が参加した。参加者の内訳は、エージェンシーグループがふたつ、残りはアドテクベンダーとパブリッシャーが約半々だった。
「これほど多くのパブリッシャーが一堂に会したこと自体が進歩だ」と、匿名希望のパブリッシャー幹部は語る。「昨年の今頃、IABが解決案を出したが、それにはパブリッシャーがほぼ絡んでいなかった。ユーザーの同意については、パブリッシャーが鍵を握る存在なのに」。
こうした会合や会議はいわば、広告エコシステム内において異なる部分を担う者同士による信頼構築のエクササイズだと、何人かの出席者は語る。Googleが今年5月に見せた独善的姿勢はパブリッシャーの怒りを買った。IABが当初示したフレームワークも同様で、パブリッシャーはこれに対し、アドテクベンダーの保護しか考えておらず、自分たちを完全にないがしろにしていると、強く反発した。以前の協議では、利用目的数が増え、Googleがそれに縛られてしまうと、同社がサービスの一部をまとめて提供することが難しくなるのでは、と考えるパブリッシャーもいた。Googleは一貫して、主眼はユーザーに不便や混乱を来さないことにあると、主張している。
まだまだ気を抜けない
一方、あるパブリッシャー幹部によれば、懐疑的なパブリッシャーもおり、彼らはGoogleが見せた協力的姿勢が正式なものとなり、IABフレームワークとの完全統合が公式に発表されるまでは、決して気を抜かないだろうという。
IABフレームワークとの統合に関する当初の期限は過ぎているが、Googleは目下の課題を克服し次第、統合をはじめる、との考えを強固にしている。課題には、利用目的の定義に関する合意や、正当な利害関係のフレームワークへの統合に関する技術仕様も含まれると、事情通は語った。モバイルアプリに関するIABフレームワークの技術仕様についても、いまだまとまっていない。
Jessica Davies(原文 / 訳:SI Japan)