GDPR 、広告販売者を直撃:「これでは『Googleデータ保護規則』だ」

一般データ保護規則(General Data Protection Regulation:以下、GDPR)の施行は出だしで躓き、欧州ではプログラマティック広告の需要量が落ち込んだ。プログラマティック広告の売上急減から比較的すぐに回復したパブリッシャーもあるが、それ以外のパブリッシャーは施行後の1週間に、ディスプレイ広告の売り上げがそれ以上に落ち込んでいる。独立系のアドエクスチェンジも困難を脱していない。

大混乱の主要な原因はGoogleだ。

GDPRが曖昧なので、遵守の解釈は企業によって大きく異なる。Googleは、法外な罰金のリスクを避けるため、同意に基づいた厳しいアプローチを採っている。5月25日のGDPR施行の数日前には、「DoubleClick Bid Manager(以下、DBM)」からの需要に頼るアドテクベンダーに対して、欧州インタラクティブ広告協会(IAB Europe)のGDPRフレームワークとの統合が完了するまで、欧州でのキャンペーンが短期的に混乱する見通しだと警告した。なお、Googleは、GDPRが施行される週にようやく、GDPRフレームワークとの統合を公に認めた。

だが、メディアバイヤーたちは施行前日の24日、彼らがGDPRに準拠しているかどうかGoogleが確認できなかったため、サードパーティのアドエクスチェンジにおいて、DBM経由で購入しないよう注意喚起もされた。その結果、GDPR施行の数時間後に、多くの独立系アドエクスチェンジやほかのベンダーは、広告需要量が20~40%落ち込むのを目の当たりにした。それでもエージェンシーは、まだGoogleのマーケットプレイスで自由に購入できるので、「DoubleClick Ad Exchange(AdX)」での需要は急増。GDPR遵守に関するGoogleの戦略が最終的にライバルにダメージを与え、ユーザーの同意を保証できる自社のマーケットプレイスにさらに高い需要を引き戻したことにパブリッシャーとアドテクベンダーは動揺している。

「Googleデータ保護規則」

「誰もが、Googleからの需要の大きな変化を注視している。我々パブリッシャー全員が声を大にして訴えている懸念は、Googleの支配により、市場の歪みに拍車がかかる一方で、Googleが私腹を肥やしていることだ。FacebookとGoogleで持ち上がったプライバシー問題を信じるなら、彼らはすべての分野で遵守の道を追求しているのではなく、遵守しているとパブリッシャーとともに主張している――そうした主張が、疑惑のせいで台無しだ」と、全国的なパブリッシャーのパブリッシング担当幹部は述べている。

「我々は突然、Googleへの依存度が高まったが、ほかのエクスチェンジは苦しんでいる。この2年間懸念されてきたことが現実になっている。我々は常に『Googleが市場で唯一の需要元だとどうなるのか?』と言っていた」。

5月25日以降に自社プラットフォームでの支出の落ち込みを目にしてきたアドテクベンダーのオーナーは、次のように語る。「予想されていたとおり、GDPRは、『Googleデータ保護規則』を意味するようになり、業界の対応能力は自社に掛かっているとGoogleが称するレベルだ。我々や、多くのほかの小規模なテック業者は、Googleが参加を土壇場で決定したせいで、売上面で大きな影響を受けている。消耗させる決定だ」。

Googleサイドの言い分

Googleは、GDPR方針が戦略的な営利目的で策定されているという市場での疑惑を払拭しようとしてきた。ニューヨークとロンドン、シカゴ、ワシントンDCで先週開かれたパブリッシャーとの会合では、GDPRを独自に解釈し完全に遵守する意図しかないと強調した。その後、その会合で持ち上がった質問に基づいたFAQ文書を公開した。会合で、製品担当上級顧問のストルアン・ロバートソン氏は次のように述べた。「同意と正当な利益に関して、規制当局が立場を変えたり、明確にしたりした場合には、方針を変更する」。この声明は翌日に参加者にメール送信された。

Googleの広報担当者は、GDPRの施行日の1カ月前にアドテクベンダーと連絡を取り、同社のエコシステム内で働くには同意が必要だと警告したと述べている。「サードパーティのエクスチェンジパートナーと協力し、IABのフレームワークとの統合を完了するあいだの混乱を最低限に抑える暫定的解決策を考え出した」。

2つの大手エクスチェンジ、アップネクサス(AppNexus)とTeads(ティーズ)は、施行後の最初の週末にかけてGoogleに遵守を保証する方法を考え出した。だから、大半のバイヤーが利用するDBM経由でターゲティング広告をまだ購入できる、とウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)は報じている。「今週、パブリッシャーに接触し、GDPRが5月25日に施行されたあと、2日間にわたって混乱したが、欧州のマーケットプレイスにおける支出はおおむね正常化したことを知らせた。DBMなど最大のデマンドパートナーの支持を得ており、その支出はGDPR施行前の水準にほぼ戻っている」と、アップネクサスの製品管理担当バイスプレジデントであるスティーブ・トラクサル氏はいう。

GDPR施行後数日間に見られたプログラマティック売り上げの落ち込みからパブリッシャーが回復するのにも、それが役立った。だが、ほかの多くの企業はまだダメージを受けている。

「フィルレートが懸念材料」

プログラマティック売り上げが先週急落した一部のパブリッシャーは、その理由について十分な情報をGoogleのアカウントマネージャーが与えてくれていないと述べている。「暗闇のなかを手探りしている」と、あるパブリッシング幹部はいう。このパブリッシャーは、DBMと別の大手エクスチェンジ、ザ・トレード・デスク(The Trade Desk)からのディスプレイ広告売り上げの構成が、5月30日に250%落ち込んだと判断した。何らかの理由で、動画インベントリー(在庫)はそれほど影響を受けず、10%ポイント以内の低下にとどまった。「我々はまだ、理由を解明しようと努めている」と、幹部は語る。

消費者向け製品を扱う広告運用担当幹部は、GDPR施行後の数日間、プログラマティック広告キャンペーン活動のことで頭がいっぱいだった。旅行関係の顧客のような、パフォーマンスベースの広告主が支出を完全に控えるなど、興味深い傾向が見られたからだ。

ある大手パブリッシャーは、広告スタックをじっくり調べ、入札の密集度のような要因を注視して、プログラマティック広告のフィルレート(広告枠の充填率)がまだ低下している理由を理解しようとしていると語る。「フィルレートは主な懸念材料で、これが主要な[サプライサイドの]パートナーからの需要低下と関連していると確信している。0~25%の低下と考えられる」と、幹部は述べている。

パブリッシャーの本意

だが、中程度の短期的な落ち込みを経験したそれらのパブリッシャーも、先走って考えるのは本意ではない。5月28日の米英の祝日になる前の金曜日、つまりバイヤーが一般に予算を減らそうと検討するタイミングで、GDPRは施行された。この事実は、ブランドのプログラマティック広告支出がGDPR施行前日の5月24日から落ち込み、その後27~28日に急増したという、一部の大手パブリッシャーの報告と合致する。

訪問者のデータの収集に利用している理由に左右され、パブリッシャーがどの程度うまくやっているかにも、差がある。パブリッシャーは、GDPRを厳守して、あらゆることでユーザーからのオプトインでの同意を最優先しようとしてきたところと、オプトアウトや正当な利益に頼ってきたところに二分される。情報筋によると、同意を優先してきたパブリッシャーは、オプトアウトや正当な利益に頼ってきたパブリッシャーや、何もせずに、英国の規制当局による監視の目をかいくぐれることを願っているパブリッシャーと比べて、自然な結果を得つつあると確信しているという。

あるパブリッシング幹部は、サプライチェーンの残りの企業がまだ、技術面で同意情報をやりとりできる状態でなく、売上減少の原因にもなりかねないことを懸念している。すべてのパブリッシャーが同意管理プラットフォーム(CMP)を運用しているわけではない。そうしたプラットフォームを運用しているパブリッシャーも、同意が伝えられるタイミングでバイサイドが気づくか確信が持てない。

「[同意を得るオプトイン方式で]自社が正しいことをしていると思っているが、正しいことをしているせいで、うっかり罰せられるかもしれない。というのも、売り上げが大して落ち込んでいないパブリッシャーは、[遵守のために]大したことはしていないか、行動をまだ生かせていないと言っているからだ」。

Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)