Googleは2018年3月、米フロリダ州の非営利機関のポインター・インスティテュート(Poynter Institute)に300万ドル(約3億2600万円)の支援金を与え、10代の若者向けにメディアリテラシーを教え、虚偽情報に立ち向かうための取り組みをはじめた。
Googleは2018年3月、米フロリダ州の非営利機関のポインター・インスティテュート(Poynter Institute)に300万ドル(約3億2600万円)の支援金を与え、10代の若者向けにメディアリテラシーを教え、虚偽情報に立ち向かうための取り組みをはじめた。このメディアワイズ(MediaWise)と呼ばれるプロジェクトは、2020年までに100万人の若者にリーチするという目標があった。この取り組みをはじめてまだ1年も経っていないが、プログラムマネージャーのケイティ・バイロン氏は、そのマイルストーンを達成する「確固たる自信」があると語る。
「私はSNSでのひとつのインプレッションについて話しているわけではないが、我々は半年もかからずにSNS上で100万のインプレッションを獲得した。『2020年までに100万人の若者』というのは、学校でこのカリキュラムを教わった生徒の数のことを指している」。
メディアワイズは2019年1月、テキサス州ヒューストンの1700人の学生向けに全校集会で、彼らが取り組んでいる計画をスタートする予定だ。バイロン氏と彼女のチームは、たとえば画像の提供元を検証するために使うGoogleを使った画像の逆検索についてや、スノープス(Snopes)やポリティファクト(Politifact)などのサイトを使った事実確認の方法など、フェイクニュースを見分けるコツについて紹介する。また、彼女のチームはそれを双方向性のプレゼンテーションにするため、画像がフェイクか否かについてを生徒たちが投票する場所としてインスタグラムストーリーを活用する予定だ。この取り組みは、メディアワイズがスタンフォード大学の歴史教育グループと共同で、2019年秋からはじめる予定の事実確認のカリキュラムを先取りしたものとなっている。
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対フェイクニュース投資
インターネットはフェイクニュースの問題を抱えている。そしてGoogleはその多くの元凶となっている存在のひとつだ。Googleは1日に35億回の検索処理を行っているが、その結果は必ずしも信頼できる情報元からのものではない。たとえば、ブライトバート(Breitbart)やインフォウォーズ(Infowars)などの疑わしいコンテンツを表示してしまうことがある。また、YouTubeのアルゴリズムも、ピザゲート(Pizzagate)事件にはじまり、月面着陸は嘘だったなどと唱える人たちの陰謀に至るまで提示してくることがある。
Googleはその対応として、2018年にニュースイニチアティブ(Google News Initiative)を立ち上げた。メディアワイズはGoogleからの資金提供を受けて、ポインター(Poynter)やSHEG、ローカルメディア・アソシエーション(Local Media Association)、そしてメディアリテラシー教育を目的とした国際団体のNAMLE(National Association for Media Literacy Education)と協働している。
そして、フェイクニュースと闘うテック企業はGoogleだけではない。Facebookもそのひとつだ。Facebookは最近、自社のジャーナリズムプロジェクトの一貫として、若者がフェイクニュースを見分ける手助けを行うワシントン州の非営利団体、ニュースリテラシープロジェクト(News Literacy Project)に100万ドル(約1億1100万円)を提供した。
テック系大企業にとって、フェイクニュースと闘うための一連の投資は、PR的な要素として間違いなく有利に働くものだ。Googleの7660億ドル(約83兆円)、Facebookの4050億ドル(約44兆円)以上の企業価値から考えれば、このプロジェクト自体のコストは微々たるものだ。そして、これらが実際にフェイクニュースの拡散緩和のためにどの程度効果があるのかについては、今後引き続き見ていく必要がある。
「赤十字のような存在」
だが、バイロン氏は彼女のチームの仕事に自信を持っている。「誤った情報が疾病だとするならば、メディアワイズプロジェクトは赤十字のような存在だ。私はそう考えている。若者、特に中高生が事実と作り話を見分ける手助けになっている」。
メディアリテラシーの欠如に関しては数多くの統計調査がある。なかでもバイロン氏はスタンフォード大の統計結果をしばしば引用しているが、その2016年の調査では、中学生の80%がスポンサードコンテンツと事実に基づくニュースとの違いを理解していなかった。
メディアワイズは全校集会での取り組みと同時に、SNS(YouTube、インスタグラム、Twitter)向けに教材を制作してきた。これらの動画は通常、アリソン・グレーブス氏やハイウォット・ハイル氏などメディアワイズのジャーナリストがホストしている。
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注意:刺激的な画像を含みます
賛同する若者の声
新たに立ち上げられた若者向けの事実確認ネットワークは、世界中の中高生から構成されており、動画の投稿も行っている。2019年1月現在、そのネットワーク内にメディアワイズに関わる24人の生徒がおり、数カ月おきにそのプログラムを拡大する計画だとバイロン氏は語る。
マドネール・カッツ氏はパームハーバー大学付属高校に通う16歳だ。カッツ氏が事実確認ネットワークに参加した理由は、彼女自身のような若者には、どの情報が信頼できるかを見分けるツールがもっと必要だと信じているためだ。
「人が誤った情報をもとに何かを決めてしまうと、自身や周りの人の生活にネガティブな影響を与えかねない。大事なのは、私たちの世代が、正確な情報に基づいた意思決定ができるようになることだ」と、カッツ氏は話す。
メディアワイズはユーチューバーとも協働し、フェイクニュースに関する情報や、メディアを信じることの難しさについての投稿に対し感謝の意を示している。有名な著者であり、ビドコン(VidCon)の協働制作者でもあるジョン・グリーン氏は、2019年1月8日から「ナビゲーティング・デジタル・インフォメーション(Navigating Digital Information)」と題した10部構成の動画シリーズの公開をはじめている。
メディアワイズの今後
バイロン氏によると、Snapchat(スナップチャット)のニュース部門のトップを務めるピーター・ハンビー氏とともに、SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)への登壇など、2019年は公の場での活動の幅を広げていく予定だという。
Googleの広報担当者は、メディアワイズプロジェクトを率いるうえでポインターは大事なパートナーだと語る。だが、この取り組みがいつまで続くかは不透明であり、Googleはこのキャンペーンの終了時に見直しを行うという。そして、どのようなものであっても、制作されたコンテンツは長期的にインパクトを与えるだろうと付け加えた。
「この資金提供の期限は2020年6月だ。そして、これは公表を前提として話すが、このプロジェクトを続けていきたいと心から願っている」と、バイロン氏は語った。