商品の物理的なお試しが、過去の産物となりつつある。テック大手2社はeコマースの売上を伸ばすべく、化粧品をバーチャルで試せる機能を強化しはじめた。SnapchatとGoogleはそれぞれ12月に、AR(拡張現実)でメイクを試せる機能を、美容領域のテック企業とともにローンチした。
商品の物理的なお試しが、過去の産物となりつつある。テック大手2社はeコマースの売上を伸ばすべく、化粧品をバーチャルで試せる機能を強化しはじめた。
SnapchatとGoogleはそれぞれ12月に、AR(拡張現実)でメイクを試せる機能を、美容領域のテック企業とともにローンチした。Googleは12月17日、パーフェクト(Perfect Corp)とロレアルグループ傘下のモディフェイス(ModiFace)を通じて、新しいARメイクアップツールを発表。Google検索やGoogle ショッピング(Shopping)で特定の商品を検索すると、モバイルアプリ内でバーチャルに試すことができる。一方のSnapchatは12月10日、パーフェクト社と「今年の初めごろに」提携すると発表。メイクアップを試せるパーフェクト社の技術をSnapchatのレンズ(フィルター)として提供し、ブランドはバーチャル上で店頭を運営できるようになる。
「これらのパートナーシップによって、より多くのユーザーにパーフェクト社の技術が利用されることになる」と語るのは、同社の設立者兼CEOであるアリス・チャン氏だ。ユーザーが「バーチャルメイクの体験を一般的なものとして、消費者に定着させる」と考えている。同社のバーチャルメイク機能の利用は、パンデミックの間に32%増加。GoogleとSnapchatとは2019年から議論を重ねていたが、COVID-19によって動きが加速したのだという。
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切望されていた解決策
Googleでバーチャルメイク機能を提供するのは、ロレアルグループやエスティー ローダー カンパニーズ傘下のブランド、そして独立系ブランドではBlk/Opl(ブラックオパール)などだ。試すことができる商品には、NARSマルチユースグロス、レブロン ウルトラHDビニールリップポリッシュ、NYXヴィヴィッドブライトクリームカラー、Urban Decayリキッドムーンライトアイシャドウなどがある。
ロレアルのチーフ・デジタル・オフィサー、ルボミラ・ロシェ氏によると、同社がGoogleで提供する機能は「オンラインショッピングをもっと便利で楽しいものにすること」を目的にしているという。
バーチャルメイクはまた、サンプリング、美容部員によるビューティーコンサルティング、店頭販売などができなくなってしまったことに対し、切望されていた解決策でもある。
「パンデミック以前からも、人々はテスター商品の衛生に不安を募らせていた」とチャン氏。「パンデミックによって世界的に健康への不安が高まり、物理的なテスター商品はすぐに、極めてリアルなデジタル上での試用体験に取って代わられた」。パーフェクト社のビジネスモデルはBtoBとBtoCの両方があり、BtoBについてはエスティー ローダーやNARSなど300超のブランドパートナーと取引がある。また、独自のアプリはグローバルで9億ダウンロードを達成した。
「GoogleのバーチャルメイクアップやARといったテクノロジーサービスは、美容業界のオンラインショッピングに大きな変革をもたらしている。そして、特に世界的なパンデミックによって消費者の好みや期待が変化したことを受けて、デジタル戦術として非常に成功している」と、エスティー ローダー カンパニーズで顧客獲得・維持を担当するシニア・バイス・プレジデント、サリマ・ポパティア氏は語る。
ブランドの時間とお金を節約
パーフェクト社と提携する全ブランドには、ARメイクアップをSnapchatに組み込むオプションがある。Snapchatを提供するスナップ(Snap Inc.)のARプロダクトマーケティング責任者、キャロリーナ・アルギュレス・ナヴァス氏によると、今回の提携によって「ブランドがこれまで築き上げてきたものに基づき(ブランドの)時間とお金を節約し、エンゲージメントが非常に高いコミュニティーへのリーチを拡大し、Snapchatの知見からオーディエンスについて学ぶことができる」という。Snapchatはパーフェクト社との提携前にも、サリーハンセンやNYXとバーチャルメイクアップですでにタッグを組んでいた。
ブランドはSnapchatのAR機能を活用して認知度とコンバージョンの両方を高めることができる。「第3四半期の平均と比較すると、ショッパブルARレンズを含むSnapchatキャンペーンのアクションインテント(行動意思)は2.4倍高い」とナヴァス氏は語る。
Snapchatのeコマースの開発は、ソーシャルプラットフォームがソーシャルショッピングの開発を推し進める潮流の一部だ。同アプリは2018年に商品購入機能を追加して以来、ショッピング機能を拡充してきた。一方のインスタグラムはパンデミック期にショッピング機能を倍増させ、TikTokはライブストリーミング販売を12月に提供開始した。直近のユーザー数(DAU)は、Snapchatが2億4900万人、TikTokが米国だけでも5000万人だと報じられている。Facebookは、インスタグラムの2020年のユーザー数を公表していないが、2018年時点のMAUは10億人だとされる。
このようなテクノロジーが「特に真価を発揮するのが、この種の実験を行えなかったドラッグストアやオンラインリテールなどの環境」だとチャン氏は述べる。「バーチャルビューティーは美容ブランドや小売業者にとって、もはや『あったらいいもの』ではない。『必要不可欠なもの』だ」。
[原文:Google and Snapchat turn to beauty tech for AR makeup try-on]
LIZ FLORA(翻訳:田崎亮子/編集:長田真)