Google AMP に疑問の声、メリットは本当にあるのか?:戸惑うパブリッシャーたち

Googleは2016年、モバイルウェブ高速化オープンソースイニシアチブのAMP(Accelerated Mobile Pages)を開始した。その狙いは、ウェブページの読み込みを速くすることと、同じく読み込みの速いFacebookのインスタント記事に対抗することにあった。その後、インスタント記事がパブリッシャーの減少に見舞われる一方、AMPはGoogleが参照トラフィックの数でFacebookを上回るのに大きく役立っている。だが、AMPがウェブトラフィックのシェアを拡大するなか、その収益性に疑問の声が上がりはじめた。

アクセス解析ツールのチャートビート(Chartbeat)が8月23日(米国時間)に発表した最新の調査結果によると、AMPのおかげでトラフィックが増えたという証拠が明らかに確認できるパブリッシャーは、全体の3分の1に過ぎないことがわかった。この調査は、2017年時点でAMPを採用していたパブリッシャー159社を対象にしたものだ。彼らのほとんどは米国のパブリッシャーだが、その内訳は、全国規模、ローカル、ニュース、ライフスタイルなど、さまざまに及んでいる。

AMPがトラフィックの流入を増やしてくれれば、パブリッシャーがたびたび訴える収益の低下をカバーしてくれる可能性はある。AMPでは、サポートされる広告の種類に限りがあるため、パブリッシャーは以前から、AMPページの広告収入がなかなか伸びないことに不満を抱いてきた。実際、パブリッシャーが配信しているコンテンツから得られる収益のうち、AMPが占める割合はごくわずかだと、パブリッシャーの業界団体であるデジタルコンテンツ・ネクスト(Digital Content Next)は報告している。さらに、ほかの製品を宣伝したり、複雑な編集フォーマットを利用したり、読者の行動に関するデータを入手したりするのが難しいという不満の声も、パブリッシャーからは上がっている。

「AMPには、多くの誇大宣伝や約束があった」というのは、チャートビートのデータサイエンスディレクター、クリス・ブロー氏だ。「ページ読み込み時間という点で一貫した体験が提供されるため、ユーザーにとっては非常に素晴らしいものだ。しかし、本当の問題は、(AMPを)実装しなかった場合と比べて、トラフィックが本当に増えているのかという点にある。この問いに対し、3分の2のパブリッシャーが『ノー』と答えているのだ」。

「明確な証拠はない」

チャートビートは今回の調査を行うにあたり、AMPの効果をテストしたいと考えていたニュースメディアのデイリー・ビースト(The Daily Beast)と提携した。デイリー・ビーストでリードデータサイエンティストを務めるブラッド・ドール氏によれば、同社のウェブページの収益性は明らかに悪化したという。また、通常のモバイルウェブページよりページあたり収益が落ち込んでも、トラフィックが23%増えればカバーできるが、そのトラフィックの状況がよくわからなかったと述べている。

「驚いたことに、AMPのおかげでトラフィックが増えているという明確な証拠はなかった」とドール氏はいう。「このような驚きを、我々は早い段階で経験した。それまでは、AMPがトラフィックを増やしてくれるといった話でもちきりだったが、いま思えば、そのような話が溢れていたことこそ驚きだったのだ」。

デイリー・ビーストでは、AMPがページの読み込み速度を高めてくれる点を考慮しながら、AMPのサポートを続けるかどうか検討しているところだという。

すでに無効にした企業も

ほかのAMPユーザーも、AMPの欠点と考えられる点について語っている。バッスル・デジタル・グループ(Bustle Digital Group)の幹部は、自社のすべてのサイトでAMPを無効にしたと、ごく最近のツイートで明らかにした。この幹部によれば、ユーザーエクスペリエンスも収益も、AMPを導入していた頃より向上しているという。


Tyler Love @tyleralove
バッスル・デジタル・グループのすべてのサイトで100%無効にした。

 

Tom Dale @tomdale
複数の友人の話によれば、彼らは当初AMPに熱狂したが、広告収益の致命的な落ち込みを受け、徐々に利用を減らし始めているそうだ。

デジタルエージェンシーのロックスター・コーダーズ(Rockstar Coders)でCTOを務めるネイサン・コントニー氏は、同社のサイトでAMPを導入したところ、コンバージョンが70%低下したため、AMPを無効にしたと述べている。「コンバージョンは我々のビジネスの生命線なのだ」とコントニー氏は語った。

チャートビートの見解

チャートビートは2月に発表した調査結果で、AMPがトラフィックとエンゲージメントの向上をもたらしていると報告していた。だが、今回の調査結果では、パブリッシャーにもたらされるモバイルトラフィックは平均で22%増えたものの、その効果はパブリッシャーによって大きく異なると述べている。AMPのおかげでトラフィックが増えはじめた明確な証拠があると答えた企業は、全体の3分の1に過ぎなかった。パブリッシャーによっては、151%増えたところもあれば、58%減ったところもあったという。実際、残りの3分の2のパブリッシャーは、トラフィックが増加した理由が、季節的な要因やニュースサイクルの変化ではなく、AMPの導入にあるかどうかはわからないと述べている。

また、AMPで成果を上げているパブリッシャーのあいだで、配信しているコンテンツの種類やAMPを実装した時期といった要素に一定の傾向はなかったと、チャートビートは述べている。実際、小規模なライフスタイル系のパブリッシャーが、大手のニュースパブリッシャーと同程度の成果を上げている例もあった。大手パブリッシャーのほうが、AMPを実装するためのリソースを豊富に持っているうえ、ニュースパブリッシャーはAMPを早くから利用できたにもかかわらずだ。

最終的には、パブリッシャーがどれほどうまくAMPを活用できるかが成功の鍵になると、ブロー氏は考えている。

「パブリッシャーに伝えたいことは、新しいプラットフォームをサポートするには、相当な労力が必要になるということだ。また、広告面でもさまざまな困難が生じる」と、ブロー氏は語った。

「常に注意を払うべし」

GoogleでAMPプロジェクトマネージャーを務めるルディ・ガルフィ氏によると、AMPはページの速度を大きく改善するが、トラフィックと収益はパブリッシャーによって大きなばらつきがあるという。チャートビートは調査レポートのなかで、AMPの実装を最大限に活用する必要性に触れ、パブリッシャーはこの3年間に実施された収益改善策を取り入れるべきだと指摘した。そのうえで、「新しいベストプラクティスに常に注意を払う必要がある」と述べている。

AMPを採用したパブリッシャーのほとんどは、いまもAMPを利用している。チャートビートのクライアントのうち、2017年末時点でAMPを利用していた企業の割合は31%で、2017年初頭の27%から増加した。2017年の1年間で、3%の企業が利用をやめたが、7%の企業が新たに利用をはじめたからだ。多くの企業は、それ以外に選択肢がほとんどないと感じている。彼らは、たとえAMPに匹敵する読み込み速度を自力で達成できたとしても、Googleが検索結果でAMPページを優先するに違いないと考えているのだ(ただし、Googleはそのようなことはないと断言している)。

Googleはまた、AMPページであることを示す稲妻マークを利用して、読者への周知を図っている。もっとも、GoogleがSnapchat(スナップチャット)やインスタグラム(Instagram)を真似て作った「AMPストーリーズ(AMP stories)」は、なかなか軌道に乗れないままだ

神経質になった媒体社

「明らかに優先順位が高いか、消費者が好んでいるという状況でなければ、(AMPストーリーズを)採用しても、あとで痛い目に遭うことになると、多くのパブリッシャーは神経質になっている」と、調査会社パセリ(Parse.ly)のCTOを務めるアンドリュー・モンタレンティ氏は述べている。

パセリのデータによると、Googleの検索ページだけでなく、Googleのほかの製品からもたらされるAMPトラフィックを考慮すれば、AMPがパブリッシャーにトラフィックの増加をもたらしていることは間違いない。だが、トラフィックが減少したり急増したりする要因はたくさんあるため、AMPの影響を数値化することは難しいとモンタレンティ氏は指摘する。

ほとんどのサイトはAMPを全面的に導入するため、A/Bテストを行うのは困難なうえ、どのサイトもそれぞれ異なる点があるため、比較テストにも限界がある。「(AMPのほうが)優れていると単純にいうことは難しい」と、モンタレンティ氏は語った。

Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)