広告への取り組みが遅れていたPinterestは、この1年で新機能を矢継ぎ早にリリースした。また、積極的なエージェンシー戦略を新たに開始。製品の公開ペースを速めると同時に、検索と規模への取り組みを強化することで、エージェンシー幹部らの関心を集めている。
Pinterest(ピンタレスト)は長いあいだ、大手プラットフォームの後塵を拝していると見られてきた。だが、そんな同社がある重要な顧客からの支持を少しずつ集めている。その顧客とは広告バイヤーだ。
広告への取り組みが遅れていたPinterestは、この1年で新機能を矢継ぎ早にリリースした。また、積極的なエージェンシー戦略を新たに開始。製品の公開ペースを速めると同時に、検索と規模への取り組みを強化することで、エージェンシー幹部らの関心を集めている。
「クライアントはこれまで、Pinterestのことを、Google、Facebook、Snapchat(スナップチャット)に続く4番手だと考えてきた。だが、もはやそうではない」というのは、広告代理店BBDOでプラットフォームイノベーション担当ディレクターを務めるアレックス・マーシュ氏だ。「これまでにないほど、Pinterestにお金をつぎ込むクライアントが増えている」と、マーシュ氏は指摘する。
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ライバルにはないものを提供
デジタルエージェンシーのデジタスLBi(DigitasLBi)でソーシャル戦略担当シニアバイスプレジデントを務めるジル・シャーマン氏は、PinterestのUSP(Unique Selling Proposition:自社だけが持っているセールス上の強み)について、ほかのどのプラットフォームとも異なる購買サイクルで人々にリーチしていることだと考えている。同氏によれば、ほかが提供していないものを提供しているという事実が、ブランドにとってユニークな機会を作り出しているのだという。
「我々は(Pinterestが)プランニングのためのプラットフォームであることを知っている。つまり、誰かが何かをピンしたとき、そこには購入意思があるのだ。これはマーケターの観点から見れば実に価値が高い」と、シャーマン氏。そのうえで、「我々は(Pinterestを)よく勧めている」と語った。
こうしたなか、Pinterestが2017年中の新規株式公開(IPO)を検討しているというニュースが報じられた。また、同社の売上が5億ドル(約550億円)に達したという。はるかに若い企業であるスナップ(Snap)に手が届きそうな位置だ。スナップの売上は7億7000万ドル(約850億円)と予想されている。もちろん、GoogleやFacebookといった企業には、大きく引き離されている。
変化しつつあるマーケターの意識
Pinterestがかつて批判されていたのは、GoogleやFacebookのような規模や見返りがないこと、そしてSnapchatのような目新しさがないことが原因だった。だが、Pinterestは、分析、ターゲティング、広告オプションといったいくつかの要素で、現在はマーケターに強い印象を与えている。
マーケターは、Pinterestのコンバージョンタグを自社のさまざまなWebサイトに設置すれば、既存ユーザーをPinterest上で追跡し、広告のターゲットを絞り込める。また、Pinterestには「レンズ(Lens)」という新しいビジュアル検索ツールもある。このツールは、実際にある物を認識し、その物と関連があるアイテムを表示するというものだ。ブランドがこの機能を使って自社の製品を表示させることはまだできないが、Pinterestがこのような形で「レンズ」をマネタイズするのは、時間の問題だとマーケターらは考えている。
「FacebookやSnapchatでさえカメラをメインに据えているが、『レンズ』はいまあるどのような製品とも大きく異なっている」と、マーシュ氏は言う。そのうえで、「eコマースに関していえば、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)より明確な用途がある」と語った。
エージェンシーとの連携も強化
マーシュ氏によれば、Pinterestはこの数カ月間、エージェンシーパートナーとの関係を深めることにも注力しているという。特に重視しているのは、クリエイティブでの協力関係だ。ピンタレストの「レンズ」はまだ広告製品ではないが、Pinterestのチームはエージェンシーと連携して、クライアントのためにこのプラットフォームを「ハック」すべく取り組んでいる。
「製品パイプラインの全貌を細かく伝えるという点で、Pinterestのやり方は以前より格段に向上した」と、マーシュ氏はいう。「我々は少なくとも週に1回Pinterestの担当者と話をしているが、この頻度はFacebookと同じだ」。
いままでにないこうした気配りは、かつて批判されていたPinterestの姿勢とは対照的だ。以前の同社はGoogleとFacebookに挟まれて身動きが取れず、また十分に洗練されたツールをもっていなかった。2016年11月には、複数のアドバイイング企業の幹部が米DIGIDAYに対して、Pinterestのプラットフォームへの関心をなくしたとはっきり述べていたほどだ。
その頃によく聞かれた不満は、PinterestのAPIが古臭いというものだった。だが、そのような懸念はもうないとマーシュ氏は言う。ソーシャルメディア企業のアテンション(Attention)でプレジデントを務めるトム・ブオンテンポ氏もこの意見に同意し、Pinterestのインタフェースは以前よりはるかに「シンプルになり、透明性も高まった」と述べている。
警戒すべきはAmazonの動き
Pinterestの垂直戦略担当責任者、ブライアン・モナハン氏は次のように述べている。「我々は常に広告主から学び、彼らのフィードバックを製品開発に直接反映させている。2016年第2四半期には、10を超える機能を導入した。その目的は、あらゆる業界のマーケターが、説得力のある適切なブランドストーリーを大規模に展開し、そのキャンペーンの効果を測定できるようにすることだった」。
Pinterestの取り組みは順調に進んでいるようだが、ブオンテンポ氏は、競合他社を警戒する必要があると警告する。同氏によれば、特に注意すべきはAmazonだという。Amazonはすでに、ファネルの下層を手にしている。Amazonのサイトで検索している人々は、その時点で製品の購入意思を示しているのだ。
「Amazonはいま、ファネルの上層に進む方法を見つけ出そうとしている。そうすれば、オーディエンスの関心や動機を知るための豊富な手がかりが利用できるようになるからだ。Pinterestもこれとまったく同じ状況だ」と、ブオンテンポ氏は語った。
Tanya Dua(原文 / 訳:ガリレオ)