インフルエンサーマーケティングの勢力図に変化が起きようとしている。インスタグラムのインフルエンサーよりも、TikTokのクリエイターをキャンペーンに(インフルエンサーとして)起用するブランドが増えているのだ。そしてこの傾向は、特にZ世代をターゲットとするブランドに強い。
インフルエンサーマーケティングの勢力図に変化が起きようとしている。インスタグラムのインフルエンサーよりも、TikTokのクリエイターをキャンペーンに(インフルエンサーとして)起用するブランドが増えているのだ。そしてこの傾向は、特にZ世代をターゲットとするブランドに強い。
まず、「誰でも何でもバズり得る」のがTikTokの特徴で、この点がブランドをひきつけていることに疑いの余地はない。また、ユーザーが増え続けていることも大きいようだ。TikTokのインフルエンサーとのコラボが増えているブランドとして、チョバニ(Chobani)やベライゾン、アラスカ航空などが挙げられる。また2021年に入ってから、TikTokをお試しではなく、本格的に運用する企業が増えている。SNS向けの支出のなかでも、TikTokの割合は確実に増加しつつあるのだ。
「いまや定番となりつつある」
「オーディエンスのいるところに金は集まる。デモグラフィックの観点からインスタグラムを優先するブランドがあるように、Z世代がターゲットのブランドにとっては、TikTokはインスタグラム以上に魅力的なのだろう」と指摘するのが、カルチャーマーケティングエージェンシーの160オーバー90(160over90)でアカウントディレクターを務めるケイティ・ウェルハウセン氏だ。
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クリエイティブエージェンシーのメカニズム(Mekanism)で最高ソーシャル責任者(チーフソーシャルオフィサー/CSO)であり、パートナーでもあるブレンダン・ガーハン氏は、「この四半期でTikTokへ投資するブランドが一気に増えた」と話す。「これまではお試し的な扱いが多かったTikTokだが、今やFacebookに近いレベルでキャンペーンの定番となりつつある。まだFacebookに追いついているわけではないが、それだけの勢いを感じさせており、驚くほかない」。
ウェルハウセン氏は「TikTokへの支出増を牽引しているのは、インフルエンサーや若者を重視するブランドだ。そしてその背景には、コロナ禍のなかでミレニアル世代に一気に普及しており、TikTokカルチャーの一部として見られたいという企業側の狙いもあるようだ」と分析する。「また、ほかの理由もある。たとえばTikTokは低コストでコンテンツを試せるプラットフォームでもある。インスタグラム向けのコンテンツはより作り込みが求められる一方、TikTokはナチュラルなものがウケやすい」。
成熟度や機能では分が悪い面も
チケット販売会社のシートギーク(SeatGeek)も、TikTokのクリエイターとのコラボを試しているブランドのひとつだ。インフルエンサーチャネル担当シニアディレクターを務めるイアン・ボースウィック氏によると、シートギークは現在、インフルエンサー予算のおよそ75%がYouTubeに、15~20%がTikTokに割り当てられ、インスタグラムは5%に過ぎないという。
「TikTokで何がウケるのか、正確なところは分からないままだ」とボースウィック氏。「マーケターはTikTokを理解しようと努めている。動画を出して、バズる可能性はある。インフルエンサーと提携すれば、再生回数が大きく伸びることも考えられる」。
エージェンシー各社も、TikTokがすぐにインスタグラムを凌駕することはないと考えている。TikTokのポテンシャルを評価しつつも、歴史が浅いことや、プラットフォームとして成熟度やショッピング機能の面では、総じてインスタグラムのほうがブランドには魅力的というのがその理由だ。
インスタグラムはリスクが少ない
また、「TikTokでどのインフルエンサーとコラボするかを考えるのは容易ではなく、時間もかかるプロセスだ」とボースウィック氏は話す。「シートギークは直接的に連携したいと考えており、さらに手間がかかる。TikTokのインフルエンサー市場がさらに拡大していけば状況も変わるだろうが、現時点ではインスタグラムからTikTokに軸足を移すというのはブランドにとっても難しいのではないか」。
加えて、実際にインフルエンサーマーケティングを展開するにあたり、個々の契約を締結しやすいなど、TikTokよりもインスタグラムのほうが優れている点が多い。インフルエンサーマーケティングエージェンシーのスウェイ・グループ(Sway Group)のCEO、ダニエル・ワイリー氏は「TikTokユーザーはクライアントが提案する起用法や独占権などを拒否する傾向が強い。特に保守的なクライアントにとっては手間がかかり、進め難いだろう」と話す。「TikTokに興味を持ったものの、クリエイターの扱いに手を焼いて、結局はリスクのないインスタグラムに戻ってくるというクライアントも多い」。
KRISTINA MONLLOS(翻訳:SI Japan、編集:長田真)