- NetflixがXandr以外のプログラマティック広告購入オプションについて交渉を開始。エージェンシー幹部によると交渉は初期段階で、具体的な実現時期は未定。
- NetflixはこれまでXandrのDSPを通じたプログラマティック購入を推進してきたが、バイヤー間で不満も。
- 広告主やエージェンシーは複数のDSPを通じた広告購入の管理に慣れており、単一のDSPを通じた購入には満足していない。
Netflixは今年11月、広告事業開始から1周年を迎えるが、プログラマティック広告事業を拡大しつつある。
事情に詳しいエージェンシー幹部3人によると、 マイクロソフト(Microsoft)傘下のザンダー(Xandr)のDSP以外を通じて広告主が広告インベントリを購入できる件について、Netflixはアドバイヤーと交渉を開始したという。
エージェンシー幹部らは、交渉は初期段階(1人のエージェンシー幹部は「かなり表面的なレベル」と形容した)で、Netflixがこのオプションを有効にする時期については未定だと述べた。だが、Netflixがプログラマティックオープンマーケットプレイスを通じてインベントリーを入手可能にしているのとは対照的に、このオプションは、プログラマティックプライベートマーケットプレイスでの取引に限定されるという。
ザンダーを通じた購入にバイヤーは不満
Netflixの広報担当者は、公表を前提としたコメントを拒んだ。DIGIDAYは以前、2022年7月に発表されたNetflixとマイクロソフトの契約は2年間で、Netflixは別のアドテクオプションを検討してきたと報じている。
2023年7月、ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal:以下、WSJ)は、Netflixがマイクロソフトとの取引を修正しようとしていると報じた。
前述のように、Netflixが広告付きプランを導入して以来、マイクロソフトのDSP(ザンダー)は、広告主がNetflixのインベントリーをプログラマティック購入できる唯一のオプションだった。また、Netflixは、広告主による同DSPの導入を推進してきた。エージェンシー幹部によれば、従来型のIO(広告掲載申し込み)ではなくザンダーのDSPを通じてアクティベートされた広告購入に対して、Netflixは5%の割引を提供してきたという。
さらに、ザンダーのDSPを通じて購入する広告主向けにプライベートマーケットプレイス(PMP)を開設する計画を4月に発表した後、Netflixは、プログラマティックギャランティード(PG)取引に加えて、そうしたPMPを公式に利用できるようにした(広告主とエージェンシーは、PGよりPMPでの取引を好む傾向がある)。
だが、一部の広告バイヤーは、ザンダーのDSPを通じてNetflixのインベントリを購入することに、これまでそれほど乗り気ではなかった。抵抗しているのは主に、Netflix以外での広告購入にザンダーではないDSPを利用しており、こうしたより幅広い広告購入を単一のDSPで管理できることを望む広告主とエージェンシーだ。
「真のプログラマティック購入ではない」
「ザンダーのDSPを利用していれば割引されるが、他の購入と結びつけられないので、プログラマティックプラットフォームを利用するメリットがない」と2人目のエージェンシー幹部は指摘した。
公平に言えば、推奨DSPの推進については、Netflixは異例なわけではない。Amazon、Roku(ロク)、サムスン(Samsung)にはそれぞれ、特定のストリーミング広告インベントリー専用のオプションとなる個別のDSPがある。また、YouTubeの広告インベントリーは、GoogleのDSP「ディスプレイ&ビデオ360(DV360)」を通じてロックされたままだ。そのため、広告主とエージェンシーは、複数のDSPでプログラマティック広告の購入を管理しなければならないことに慣れている。とはいえ、そうした状況に満足しているわけではない。
「細分化が理由で、プログラマティックな方法で簡潔にアクティベートできなければ、そうした重複を管理するのは本当に難しい」と1人目のエージェンシー幹部は語る。
Netflixがこれまでプログラマティック購入オプションをザンダーのDSPに限定していることに対するエージェンシー幹部のもうひとつの不満は、DSPが共有するデータが限られている点だ。たとえば、ザンダーのDSPを通じてNetflixのインベントリーを購入する広告主とエージェンシーは、広告が表示された世帯のIPアドレスを受け取れないので、各世帯が同じ広告をNetflixおよびそれ以外で表示される頻度を広告主側で管理できない。[続きを読む]
- NetflixがXandr以外のプログラマティック広告購入オプションについて交渉を開始。エージェンシー幹部によると交渉は初期段階で、具体的な実現時期は未定。
- NetflixはこれまでXandrのDSPを通じたプログラマティック購入を推進してきたが、バイヤー間で不満も。
- 広告主やエージェンシーは複数のDSPを通じた広告購入の管理に慣れており、単一のDSPを通じた購入には満足していない。
Netflixは今年11月、広告事業開始から1周年を迎えるが、プログラマティック広告事業を拡大しつつある。
事情に詳しいエージェンシー幹部3人によると、 マイクロソフト(Microsoft)傘下のザンダー(Xandr)のDSP以外を通じて広告主が広告インベントリを購入できる件について、Netflixはアドバイヤーと交渉を開始したという。
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エージェンシー幹部らは、交渉は初期段階(1人のエージェンシー幹部は「かなり表面的なレベル」と形容した)で、Netflixがこのオプションを有効にする時期については未定だと述べた。だが、Netflixがプログラマティックオープンマーケットプレイスを通じてインベントリーを入手可能にしているのとは対照的に、このオプションは、プログラマティックプライベートマーケットプレイスでの取引に限定されるという。
ザンダーを通じた購入にバイヤーは不満
Netflixの広報担当者は、公表を前提としたコメントを拒んだ。DIGIDAYは以前、2022年7月に発表されたNetflixとマイクロソフトの契約は2年間で、Netflixは別のアドテクオプションを検討してきたと報じている。
2023年7月、ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal:以下、WSJ)は、Netflixがマイクロソフトとの取引を修正しようとしていると報じた。
前述のように、Netflixが広告付きプランを導入して以来、マイクロソフトのDSP(ザンダー)は、広告主がNetflixのインベントリーをプログラマティック購入できる唯一のオプションだった。また、Netflixは、広告主による同DSPの導入を推進してきた。エージェンシー幹部によれば、従来型のIO(広告掲載申し込み)ではなくザンダーのDSPを通じてアクティベートされた広告購入に対して、Netflixは5%の割引を提供してきたという。
さらに、ザンダーのDSPを通じて購入する広告主向けにプライベートマーケットプレイス(PMP)を開設する計画を4月に発表した後、Netflixは、プログラマティックギャランティード(PG)取引に加えて、そうしたPMPを公式に利用できるようにした(広告主とエージェンシーは、PGよりPMPでの取引を好む傾向がある)。
だが、一部の広告バイヤーは、ザンダーのDSPを通じてNetflixのインベントリを購入することに、これまでそれほど乗り気ではなかった。抵抗しているのは主に、Netflix以外での広告購入にザンダーではないDSPを利用しており、こうしたより幅広い広告購入を単一のDSPで管理できることを望む広告主とエージェンシーだ。
「真のプログラマティック購入ではない」
「ザンダーのDSPを利用していれば割引されるが、他の購入と結びつけられないので、プログラマティックプラットフォームを利用するメリットがない」と2人目のエージェンシー幹部は指摘した。
公平に言えば、推奨DSPの推進については、Netflixは異例なわけではない。Amazon、Roku(ロク)、サムスン(Samsung)にはそれぞれ、特定のストリーミング広告インベントリー専用のオプションとなる個別のDSPがある。また、YouTubeの広告インベントリーは、GoogleのDSP「ディスプレイ&ビデオ360(DV360)」を通じてロックされたままだ。そのため、広告主とエージェンシーは、複数のDSPでプログラマティック広告の購入を管理しなければならないことに慣れている。とはいえ、そうした状況に満足しているわけではない。
「細分化が理由で、プログラマティックな方法で簡潔にアクティベートできなければ、そうした重複を管理するのは本当に難しい」と1人目のエージェンシー幹部は語る。
Netflixがこれまでプログラマティック購入オプションをザンダーのDSPに限定していることに対するエージェンシー幹部のもうひとつの不満は、DSPが共有するデータが限られている点だ。たとえば、ザンダーのDSPを通じてNetflixのインベントリーを購入する広告主とエージェンシーは、広告が表示された世帯のIPアドレスを受け取れないので、各世帯が同じ広告をNetflixおよびそれ以外で表示される頻度を広告主側で管理できない。
「後々プログラマティックプラットフォームで活用できる一定のデータを入手していないので、真のプログラマティック購入ではない。必要な情報すべてを得て、望ましい効果的な方法でプログラマティックに利用できるわけではないので、疑似プログラマティックのようなものだ」と3人目のエージェンシー幹部は述べた。
パートナー1社でプログラマティックは成立しない
だが、ザンダー以外のDSPに門戸を開いても、Netflixが広告主により多くのデータを開放するとは限らない。たとえば、Netflixは、自社コンテンツで広告主やユーザーがトラッキングピクセルを利用できないようにしてきたが、これは厳密にはDSP関連の問題ではない。こうしたピクセルのブロックやIPアドレスのブロックはいずれも、Netflix以外でのトラッキングを防止して視聴者のプライバシーを保護すると同時に、アドバイヤーが、よそで広告付きプランのオーディエンスを割り出すことから広告事業を守るための動きのように思われる。
それでも、ザンダー以外のDSPにインベントリーを開放すれば、Netflixにより多くの広告収益をもたらす和解提案になり得る。
「多くのブランドが抱いてきた感情は、『制限があるから購入しない』というようなものだった」と、4人目のエージェンシー幹部は語る。
「ザンダーのみ、パートナー1社のみではなく、プログラマティック事業を適切に構築する必要がある」と、2人目のエージェンシー幹部は述べる。「ザンダー/マイクロソフトに打撃を与えるわけではない。マーケットプレイスは単一の技術スタック上にあるわけではない。だから、広告主がいかに広告費を使おうとしているかに対し、相互運用性を持たせなければならない」
[原文:Future of TV Briefing: Netflix plots next phase in its programmatic ad push]
Tim Peterson(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:分島翔平)