CTV広告のバイヤーは、セラーに対して、広告が表示される特定の番組など、番組レベルの情報をプログラマティック入札ストリームで伝えてくれることを望んでいる。しかしセラーは、より価値がある場合が多い直接取引のために、そうした情報を伏せておきたがる。
とはいえ、セラーはほかのコンテンツ関連シグナルといったかたちで、ちょっとした和解の気持ちを示しつつある。2023年前半には、ビーチフロント(Beachfront)のアドサーバーを経由したCTV広告インプレッションの83%は、インプレッションがコメディやドラマ、ニュース、スポーツといった特定のコンテンツカテゴリーの番組に付随したものかどうかを示すジャンル関連シグナルを含んでいた。この割合は、2022年前半の56%および後半の70%と比べて増加している。
「パブリッシャーアカウント管理チームは、メタデータ標準化に大いに焦点を当て、可能な時と場所でできるだけコンテンツ関連シグナルを誰もが取り込めるよう努めてきた」と、ビーチフロントで製品担当バイスプレジデントを務めるアミット・ニガム氏は語る。「パブリッシャーと行う会話の影響で、CTVパブリッシャーがコンテンツ関連シグナルを入札ストリームに流しつつある。『バイヤーには歩み寄るが、これは余計な仕事だ。これが実際に何かにつながるのか?』というような感じだ」。
コンテンツのジャンルが果たす役割はほとんどない?
ビーチフロントによると、ジャンル関連シグナルを送るCTV広告インプレッションは、ジャンル関連シグナルを含まないCTV広告インプレッションと比べて、CPMが平均で27%高かったという。
従来、プログラマティックCTV広告インベントリは、(番組スケジュールにより、広告主が自社の広告を流す番組を把握できる)従来型TVと比べて、コンテンツ関連シグナルが相対的に不足している点が不満の種だった。広告が表示されるコンテキストを気にかける従来型TVの広告バイヤーやブランド広告主にとっては、特にそれが言えた。「インプレッションが生じているコンテキストやジャンルを顧客が把握するのが、非常に困難だった」と、あるエージェンシー幹部は述べる。
また、広告バイヤーは必ずしもジャンルのシグナルの受信に満足しているわけではない。まず、広告を掲載するコンテンツについてはあまり気にせず、リーチしたいオーディエンスばかりを気にするバイヤーもいる。
プログラマティックTVのメディアバイイングを手がけるストラテガス(Strategus)の場合、スポーツ番組をターゲットにしたり、ニュース番組を避けたいためにジャンルを把握したがったりする顧客もいるが、「CTV広告の購入決定においてコンテンツのジャンルが果たす役割はほとんどない」と、同社の共同創業者でイノベーションおよび戦略担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるジョエル・コックス氏は語る。
TVのメディアバイイングを手がけるタタリ(Tatari)も、似たような状況だ。年齢や性別、行動のカテゴリーのようなオーディエンスベースのCTVキャンペーン向けターゲティングオプションの向上により、「シグナルとしてのジャンルの必要性がなくなった」と、同社のメディアバイイング担当シニアバイスプレジデントであるブラッド・ジェヴィング氏は言う。[続きを読む]
CTV広告のバイヤーは、セラーに対して、広告が表示される特定の番組など、番組レベルの情報をプログラマティック入札ストリームで伝えてくれることを望んでいる。しかしセラーは、より価値がある場合が多い直接取引のために、そうした情報を伏せておきたがる。
とはいえ、セラーはほかのコンテンツ関連シグナルといったかたちで、ちょっとした和解の気持ちを示しつつある。2023年前半には、ビーチフロント(Beachfront)のアドサーバーを経由したCTV広告インプレッションの83%は、インプレッションがコメディやドラマ、ニュース、スポーツといった特定のコンテンツカテゴリーの番組に付随したものかどうかを示すジャンル関連シグナルを含んでいた。この割合は、2022年前半の56%および後半の70%と比べて増加している。
「パブリッシャーアカウント管理チームは、メタデータ標準化に大いに焦点を当て、可能な時と場所でできるだけコンテンツ関連シグナルを誰もが取り込めるよう努めてきた」と、ビーチフロントで製品担当バイスプレジデントを務めるアミット・ニガム氏は語る。「パブリッシャーと行う会話の影響で、CTVパブリッシャーがコンテンツ関連シグナルを入札ストリームに流しつつある。『バイヤーには歩み寄るが、これは余計な仕事だ。これが実際に何かにつながるのか?』というような感じだ」。
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コンテンツのジャンルが果たす役割はほとんどない?
ビーチフロントによると、ジャンル関連シグナルを送るCTV広告インプレッションは、ジャンル関連シグナルを含まないCTV広告インプレッションと比べて、CPMが平均で27%高かったという。
従来、プログラマティックCTV広告インベントリは、(番組スケジュールにより、広告主が自社の広告を流す番組を把握できる)従来型TVと比べて、コンテンツ関連シグナルが相対的に不足している点が不満の種だった。広告が表示されるコンテキストを気にかける従来型TVの広告バイヤーやブランド広告主にとっては、特にそれが言えた。「インプレッションが生じているコンテキストやジャンルを顧客が把握するのが、非常に困難だった」と、あるエージェンシー幹部は述べる。
また、広告バイヤーは必ずしもジャンルのシグナルの受信に満足しているわけではない。まず、広告を掲載するコンテンツについてはあまり気にせず、リーチしたいオーディエンスばかりを気にするバイヤーもいる。
プログラマティックTVのメディアバイイングを手がけるストラテガス(Strategus)の場合、スポーツ番組をターゲットにしたり、ニュース番組を避けたいためにジャンルを把握したがったりする顧客もいるが、「CTV広告の購入決定においてコンテンツのジャンルが果たす役割はほとんどない」と、同社の共同創業者でイノベーションおよび戦略担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるジョエル・コックス氏は語る。
TVのメディアバイイングを手がけるタタリ(Tatari)も、似たような状況だ。年齢や性別、行動のカテゴリーのようなオーディエンスベースのCTVキャンペーン向けターゲティングオプションの向上により、「シグナルとしてのジャンルの必要性がなくなった」と、同社のメディアバイイング担当シニアバイスプレジデントであるブラッド・ジェヴィング氏は言う。
より多くの情報の共有へ
一方、従来型TVを好むブランドの広告主にとっては、番組レベルの情報は依然として追及してやまない情報だが、入手はまだ難しい。にもかかわらず、広告バイヤーは、ほかのコンテンツ関連シグナルのなかでもそうした情報を強く求めている。
「番組やチャンネル、ネットワーク、ジャンルのレベルでより一層の透明性を期待している。パートナーに対して、こちらにもっと管理させて透明性を高めるよう求めている。それが、大きな交渉事項だ」と、前述のエージェンシー幹部とは別のエージェンシー幹部は話した。
また、CTV広告のセラーはジャンル関連シグナルを超えてより多くの情報を共有しつつある。それには、ネットワーク、すなわち、CTV広告インベントリーソースを保有するディズニー(Disney)や NBCユニバーサル(NBC Universal)のようなメディア企業、ならびにHuluやピーコック(Peacock)などのチャンネルに関する情報が含まれる。
ビーチフロントによると、2023年第2四半期は、2022年第4四半期と比べて、ネットワーク関連シグナルを伝送するCTV広告インプレッションの数が20%増加し、チャンネル関連シグナルの場合は100%を上回る増加幅だったという。2023年前半には、インプレッションの約5分の1が、ネットワークかチャンネル関連のシグナルを伝送していた。
競争力を高める手段
共有されるネットワークおよびチャンネル関連シグナルの増加の一因は、2022年4月のIABテックラボ(IAB Tech Lab)による「OpenRTB 2.6」プロトコルのリリースだ。OpenRTB 2.6は、プログラマティック入札ストリームでネットワークおよびチャンネル関連シグナルを伝える基準を導入した。伝送されるネットワークおよびチャンネル関連シグナルの増加は、CTV広告セラーのあいだで意外にもOpenRTB 2.6がにわかに導入されたことを示している。
「これまでは、こうしたものはもう少し時間が掛かっていた。だから、OpenRTB 2.6のリリース時期から同年前半までの導入率への影響は、非常に大きかったとわかる」とニガム氏は指摘した。
CTV広告のセラーは、サプライが広告主のデマンドを上回るところまで増加したストリーミング広告市場で競争力を高める手段として、広告のインプレッションに関連するコンテンツ関連シグナルの共有を増やす傾向にあるようだ。インプレッションのジャンルやネットワーク、チャンネルのマーチャンダイジングは、広告枠への入札決定時に、アドバイヤーにより多くの情報を提供するだけでなく、セラーが広告主の関心をより多くのインベントリーに拡大するのにも役立ちつつある。
「かつては顧客が『これがターゲットのオーディエンスだ』と我々に言い、自社の自動車を購入する可能性が高い層に絞り込んでいた。ジャンル関連シグナルを伝送すれば、顧客に情報をよりよく提供して、『誰もが潜在的顧客だ。排他的にならないでほしい』と言うのに役立つ可能性があると思う」と、あるストリーミング広告セラーは語った。
Tim Peterson(翻訳:矢倉美登里/ガリレオ、編集:島田涼平)