ファーストパーティデータや代替IDを広告販売契約に組み込むパブリッシャーが増加している。インサイダー(Insider)は早くからこれに着手し、データプラットフォーム、サガ(Saga)を構築。2021年はそれを広告主に受け入れてもらうことに専念した。
インサイダー(Insider)はファーストパーティデータからより多くを引き出すための計画を比較的早く開始した。まずサガ(Saga)というデータプラットフォームを構築し、2021年はそれを広告主に受け入れてもらうことに専念した。
そのため、多くのパブリッシャーがファーストパーティデータの計画に2020年を費やした一方で、インサイダーはすでに市場に投入できる製品を持っていた。2020年2月に、サガは正式公開されたが、その1年前からひそかに顧客とテストを行っていたのだ。
2021年、140以上の広告主がサガのデータを使用し、インサイダーで広告キャンペーンを行った。2020年は48社だった。新規の広告主も多かったが、そうでない広告主がかなりの割合に達した。インサイダーの広報担当者によれば、サガを使ってインサイダーから広告を購入した広告主の契約更新率は48%で、それらの広告主が使った金額は平均で3倍に増加したという。全体では、インサイダーがサガを使ったキャンペーンで得た売上は、決して小さくない金額から175%増加した。インサイダーのプログラマティック、データ戦略担当シニアバイスプレジデントであるジャナ・メロン氏は「(売上は)数百万から数千万ドルに増えた」と述べている。
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厳選された顧客との約1年間にわたるテストを経て、2020年2月にひそかに公開されたのち、2021年、サガ(名前の由来は歴史上の逸話である北欧神話に登場する女神)のちょっとしたお披露目パーティーが行われた。メロン氏によれば、サガは広告収入をもたらすだけでなく、購読者数の増加を目的としたオーディエンス拡大プロジェクトなど、組織のさまざまな部分でさまざまな取り組みに利用されているという。
2022年は、エージェンシーに入り込み、顧客により多くの機能を試してもらう活動を続けるとともに、組織内の目標を達成するため、データの活用を継続することになりそうだ。
「サガはダイレクトとプログラマティック両方の観点から、我々のほぼすべてのやり方を変えた」とメロン氏は話す。
「ユーザー属性がすべてではない」
インサイダーは、BuzzFeedやグループ・ナイン(Group Nine)とともに、ミレニアル世代のオーディエンスを数多く抱えるパブリッシャーで、ファーストパーティデータをオーディエンスのメールアドレスとひも付けないことを選択したパブリッシャーでもある。インサイダーの場合はパーミュティブ(Permutive)を利用し、読者のデータをCookieなしでローカルに保存している。
これによって、特定広告主のプライベートマーケットプレイスに参加できなくなる可能性はあるものの、長期的にはサガのビジネスに悪影響を与えないことになる。アモビー(Amobee)のソリューションエンジニアリング担当バイスプレジデント、アレクサンダー・クヌッツェン氏は「メールアドレスを提供するかどうかにかかわらず、広告への同意が同意であることに変わりはない」と話す。
インサイダーがメールベースのIDを得ようとしなかったのは、市場の状況も関係している。「我々がこの道を歩み始めたとき、メールの問題は問題ではなかった」と、メロン氏は振り返る。「世界のIDは誰の視界にも入っていなかった。私たちのサブスクリプション製品はまだ始まったばかりだった」。
しかし、インサイダーは広告主に結果をもたらすという優先事項の一環として、このアプローチにこだわり続けた。「我々にとっては、『ユーザー属性が必ずしもすべてではないことを知っている』ということだった。ごく一部の既知のユーザーより、彼ら(読者)の行動に焦点を当てた方が理にかなっている。仮に私があなたの製品を買ったとしよう。もし私があなたのターゲット層に含まれていなかったとしたら、あなたは気にするだろうか? ほとんどの場合、答えはノーだ」。
メロン氏はまた、インサイダーのパブリッシャーとしての規模を無駄にしないアプローチに注力することも重要だと言い添えている。コムスコア(Comscore)によれば、インサイダーは2021年11月、米国だけでユニークユーザーが9900万人に到達。さらに、ソーシャルメディアでもかなりのリーチを獲得している。
規模拡大の実現がなにより大事
バイヤーは4つの製品でサガのユーザーにリーチできる。現時点でもっとも人気が高いのはサガ・サラウンド(Saga Surround)。広告主に100%のシェア・オブ・ボイス(広告量シェア)を与えるページ・テイクオーバー型の体験だ。インサイダー・エクステンド(Insider Extend)も成功を収めている。広告主がオーディエンスを拡大し、ソーシャルプラットフォームでオーディエンスへのリーチを試みることができるというものだ。
「プラットフォームのデータより我々のデータのほうがターゲティング時のパフォーマンスが高い」とメロン氏は話す。「具体的には、我々のサイトへの(クリック率が)高い」。
2021年に入ると、ファーストパーティデータや代替IDを広告販売契約に組み込むパブリッシャーが着実に増加し、現在では、3分の2のパブリッシャーが少なくとも広告販売契約の一部にこれらのツールを組み込んでいると述べている。
しかし、サードパーティCookieに代わるこうしたツールはまだ、パブリッシャーのビジネス全体から見ると小さな部分にとどまる。米DIGIDAYが2021年第4四半期に実施した調査では、広告販売契約の半分以上に代替IDが含まれていると回答したパブリッシャーはわずか15%だった。これはサードパーティCookieからの脱却が道半ばであることを示唆している。
エージェンシーのブーヤー・アドバタイジング(Booyah Advertising)のCEO、トロイ・ラーナー氏は「もちろん、メディアバイヤーは結果を重視するが、同時に効率性も重視する」と話す。「心配した方がいいのは、ファーストパーティデータの手法にかかわらず、規模の拡大を実現できないパブリッシャーだ」。
[原文:‘From millions to tens of millions’: How Insider’s first-party data offering grew in 2021]
MAX WILLENS(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:小玉明依)