欧州のサッカーチーム、メディア企業の様相を呈しはじめる

サッカークラブはひとつの独立したメディアビジネスの様相を呈してきているなか、彼らの収益モデルはこれまでのスポンサーシップモデルからコンテンツ制作と配信へとフォーカスを移しつつある。

ファンに関する情報をできる限り収集するための予算をクラブたちはますます増やしている。サッカーファンをより理解すればするほど、ほかのチームではなく自分のチームでメディア予算を使うべきだと、広告主たちを説得することが容易になるのだ。パブリッシャーのように、FCバルセロナはサブスクリプションを使って、より多くのデータを獲得しようと考えている。

FCバルセロナにおけるCRM戦略

FCバルセロナは無料のストリーミングサービス「バルカTV+(Barca TV+)」を構築。バルセロナのプロダクション部門であるバルカ・スタジオ(Barca Studios)によって開発されたコンテンツすべてがこのサービスで配信される。試合のハイライトや1軍インタビュー、そしてBチームからのライブストリーム、女子チームのホームでの試合などがコンテンツとして含まれるという。

バルカTV+からの視聴データは、クラブがひっそりと構築しているCRM(顧客関係管理システム)に格納されると、最高マーケティング責任者であるギレム・グラエル氏は言う。

現在、クラブ内のさまざまな部門からのデータに加えて、リテーラーといった外部のソースからのデータも、CRMへ追加されている。

個人データを扱うことに伴うロジスティック上の、そして規則上の課題があるものの、バルセロナのようなクラブたちはオンラインであれ、オフラインであれ、ファン個人個人と繋がることには大きな商業的なメリットがあると考えている。同意に基づいた、上質な純化されたデータをクラブ側で所有し、スポンサーに渡せることは非常に強力な武器となるのだ。

「eコマースビジネス、もしくはストリーミングサービスを抱えていることは、サッカークラブにとっては珍しくない。だが、そのデータを持って、プラットフォームに存在する人々に抱き合わせ販売、もしくはより高価なものを販売することができることは珍しい」と、グラエル氏は言う。

チェルシーは広告モデルに注力

チェルシー(Chelsea)のようなクラブにとっては、複数年のスポンサーシップ契約を行う経済的な余裕がない広告主と短期的な契約を行う方が、より早い商業収益の多様化手法である。このような契約を結ぶことで、通常であれば手をつけることができない広告主側のソーシャルメディアやインフルエンサー予算などのチャンスが広がる。

チェルシーTV(Chelsea TV)チャンネルがサブスクリプションサービスから無料のデジタル配信へと昨年8月に移行した際、プロダクションは広告主によりフォーカスしたものになった。1月には、スタンダードなスポンサーシップ契約の外側にあるメディア予算を巡ってエージェンシー、パブリッシャー、そしてソーシャルプラットフォームたちに匹敵する部門として、自社プロダクション部門を公式にローンチした。

長期スポンサーに対するコンテンツ制作は、ほとんどのクラブが行っている。そのためチェルシーの意向は短期的な企画を主に念頭に置いたものである。動画プラットフォームのダグアウト(Dugout)に出資しているクラブたちは、彼らのパブリッシャーのネットワークを使い、スポンサーのためにより幅広い人々へと動画を届けようとしているが、それはコンテンツのマネタイズの新しい手法を見つけることも理由のひとつとなっている。

「マーケターたちがパブリッシャー、デジタルプラットフォーム、そしてインフルエンサーに費やす支出を増やしていることに、サッカークラブのような権利者たちは対応する必要がある。そのことを無視できない時点がやってくる。クラブとのパートナーシップを、ブランドたちはいまではまったく異なる視点で捉えている」と、マーケティングディレクターのギャリー・トゥウェルブツリー氏は言う。

広告主たちは、いまではクラブがソーシャルメディア上で抱えるファンの数そのものには、それほど魅力を感じなくなっており、そのうちの何人が広告主にとって価値があるかによりフォーカスしている。

「クラブたちの主なコマーシャルパートナーたちがこの点で進化しているということは、クラブ自体もこの分野において既存のパートナーと潜在的なパートナーたちの需要に応えられるように戦略を進化させる必要があるということだ」と、バドワイザー(Budweiser)のフットボールコンテンツと戦略のグローバル責任者であるアマール・シンフ氏は語る。

ファン理解を深めるサウサンプトン

自分が抱えるファンベースの価値を明確に提示できる能力を持ったサウサンプトンFC(Southampton FC)は昨年、7つの新しいコマーシャル・パートナーシップを獲得した。ファンベースにはチームのサポーターとコンテンツ自体のファンの両方が幅広く含まれると、パートナーシップ部門責任者であるダレン・ヘンリー氏は言う。

「コマーシャル上の価値を牽引するような、欧州のトップクラブが持つ巨大なファンベースを我々は持っていない。しかし、サウサンプトンファンだけでなく、その外側でもサポートを成長させられる場所はオンラインだ」と、ヘンリー氏は言う。

サウサンプトンはプレミア・リーグ(The Premier League)のなかでも、4年前にコマーシャル戦略の中心にデータとマーケティングの専門家を置いて、従来のただスポンサーシップ契約を追いかける形から離れた最初のクラブのひとつだ。昨年、パフォーマンス分析エージェンシー、メディアセルズ(Mediacells)を起用したことによって、クラブのソーシャルメディアプラットフォームからのデータを、コマーシャル部門が使えるようにダッシュボード形式でビジュアル化している。

「自分のチャンネルに来るファンだけにコンテンツを消費してもらおうと依存することは、クラブを限られたものにしてしまうリスクがある。デジタル化によって民主化が進み、スポーツ組織はまだそれを活用する最善の方法を見つけようと努力している、というのが私の見方だ」と、イレブンスポーツ(Eleven Sports)のCEOであるルイス・ヴァイセント氏は言う。

Seb Joseph(原文 / 訳:塚本 紺)
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