アリババ(阿里巴巴)が運営するタオバオ(淘宝)は、Amazonとよく比較されるが、盗品や模造品を販売していることで有名だ。米国は2年連続で、偽物販売や知的財産権侵害で、このサイトをブラックリストに載せている。そんなタオバオに対して、ある米国の家具会社の創設者が、法的手段も視野に入れた抗議を行っているという。
アリゾナ州フェニックスに本拠を置くブティック家具会社ビンテージ・インダストリアル(Vintage Industrial)の創設者、グレッグ・ハンカーソン氏は、過去2年のあいだ、アリババ(阿里巴巴)のプラットフォーム、特にタオバオ(淘宝)によるデザイン盗用と戦ってきた。ハンカーソン氏は2016年8月、アリババの知的財産権保護およびイノベーション担当シニアマネージャーであるワン・シンハオ氏に初めて連絡し、アリババの知的財産保護報告システムが機能していないことに苦情を申し立て、プラットフォーム上での自身の不愉快な体験について、メディアに取り上げてもらうと示唆した。
同年11月、ハンカーソン氏はワン氏宛に、ハンカーソン氏が盗作だと思う製品404個を載せたリストを送り、2017年3月には397個を載せた別のリストも送った。ハンカーソン氏によると、アリババは現在までに、彼が報告したリストの品の20%程度を削除したという。
「ワン氏は協力的だったが、アリババのプラットフォームで盗作が横行する状況は改善されていない。今日、盗作写真を2枚取り下げたら、翌日には違う写真が4枚見つかる。とてもイラつく状況だ」。
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米国でブラックリスト入り
アリババは、ビッグデータや専有技術を使用しており、法執行機関と協力して、eコマースプラットフォームでの偽物を減らすよう努力しているといっている。タオバオは、Amazonとよく比較されるが、盗品や模造品を販売していることで有名で、中国の買い物客とそのイメージを脅かすだけでなく、ほかの市場への拡大も計画している。米国は2年連続で、偽物販売や知的財産権侵害で、このサイトをブラックリストに載せている。
ハンカーソン氏は、自分が発見した盗用デザインのイメージはアリババのクラウドコンテンツ配信ネットワーク上に保存されており、その多くはアリババのプラットフォーム、特にタオバオにリストアップされた製品と結びついている。たとえば、ビンテージ・インダストリアルの3段引き出し付き工業用テーブルは最低価格5795ドル(約61万円)だが、タオバオではわずか93ドル(約9900円)で販売されているし、クランク付きテーブルベースは、ビンテージ・インダストリアルでは1万2595ドル(約134万円)だがアリババ・コム(Alibaba.com)だと50ドル(約5300円)以下で出品されいる。
ハンカーソン氏の体験は、タオバオに出品されいる有名ブランドのいくつかが経験したことと似ている。プラットフォーム上でサッと検索するだけでも、グッチ(Gucci)の男性用ベルトの偽物が45ドル(約4800円)、アディダス(Adidas)そっくりのロゴがついたトラックスーツが31ドル(約3300円)で見つかる。
改善努力を見せるアリババ
アリババの広報担当者は、アリババには「プラットフォームを利用する販売業者が最高水準の正当性に適合していることを保証するための厳格な措置」があると話している。アリババはビッグデータを活用して新規ならびに既存のタオバオアカウントをスキャンし、出店予定の販売業者が偽IDを使用する場となる新規アカウントの作成を防止している。さらに、顔認識のような認証技術を用いて、出店しようとしている人間が本当にその通りの人物であることを確認してもいる。アリババではこれまでに専有技術を用いて、同プラットフォームで知的財産権を侵害する製品を販売していた「数十万もの小売業者」を発見し、出店を禁止してきたと広報担当者は語る。
アリババは2018年1月、バーバリー(Burberry)など偽造防止アライアンスのメンバーを集めて中国・広州市でミーティングを開催し、法執行機関を通じての知的財産権保護の強化や製品のテスト購入、アリババ独自のオンラインでの知的財産保護プラットフォームについて話し合った。
アリババが2017年にデトロイトで開催した「ゲートウェイ(Gateway)」カンファレンスでチャーリー・ローズ氏を交えて行ったファイヤーサイド・チャットのなかで、アリババのジャック・マー会長は、模造品や知的財産の侵害、不正行為について、自身のビジネスにとっての「癌」だと説明した。マー会長は壇上でこう述べた。「はじめは(偽物が)たくさんあったが、それは修正する必要があった。今日、我々には10万以上のブランドパートナーがおり、我々は偽造防止と知的財産保護のリーダーなのだ」。
「なぜタオバオだけが?」
それでもアリババは、米通商代表部(USTR)の「悪名高い市場」の2017年版リストに2年連続で掲載された。2018年1月のUSTRの報告書にはこう書かれている。「タオバオでは知的財産権の侵害と思われる製品が大量に販売用に提供され続けており、ステークホルダーは、同プラットフォーム上での知的財産権の行使に関連する問題や負担を報告し続けている」。
業界団体であるアメリカン・アパレル&フットウエアー・アソシエーション(American Apparel & Footwear Association:以下、AAFA)も声明のなかでUSTRの決定に触れた。「団体メンバーの多くが、特に削除までの手続きやタイムラインに関連することがらで、アリババのプラットフォームの改善を報告している……同時に、アリババのプラットフォーム、とりわけタオバオで問題が続いていると、報告しているものも多い」。AAFAからさらなるコメントは得られなかった。
サプライチェーンと配送分野のコンサルティングを手がけるトンプキンス・インターナショナル(Tompkins International)で中国の商慣例担当バイスプレジデントを務めるマイケル・ザッカー氏は、USTRの見方は偏っていると考えている。模造品販売はタオバオに限ったことではないし、アリババはこの1年、「悪名高い市場」リストに掲載されないようにかなり努力をしてきたからだ。
「日本の楽天市場、米国や欧州のAmazon、米国のイーベイ(eBay)にも偽物はあるので、なぜタオバオがUSTRの『悪名高い市場』リストに載っている唯一のeコマースプラットフォームになるのか? ほかのeコマースプラットフォームよりタオバオのほうが偽物が横行していると証明する統計を誰も提供していない」と、ザッカー氏は語る。
「許されるべきことではない」
タオバオのビジネスモデルは、主にサードパーティーの販売業者から成り立っており、これがある意味、模造品問題の根幹になっている可能性はある。傘下のB2Cマーケットプレイス「Tモール(Tmall)」では、アリババはブランドに対して出店料を課し、販売される製品の一つひとつから手数料をとり、広告を通じて収入を得ている。タオバオにおける主な収入源は広告だ。これはつまり、Tモールの出店者は通常ファーストパーティの販売業者で、自身が権利を保有しているので知的財産保護もよく理解しているのに対し、タオバオは、知的財産保護についてあまり知らないサードパーティーの販売業者であふれている。
「Tモールには偽物は存在しないし、タオバオの模造品問題は改善されている。アリババに対して知的財産保護の強化を求める圧力が内外からかかっている。プラットフォームにある商品を信用できなければ、消費者はどこかよそへ行くだろう。そして、アリババのほうには、まがい物のハンドバッグを売っているという評判を世界中に広めるような危険は冒さない動機付けがある。それは愚かな行為だ」と、ザッカー氏はいう。
だが、ハンカーソン氏が経験したことはその真逆だ。ハンカーソン氏は2018年2月2日、5000個もの自社製品のリストや写真が新たにアリババのクラウドコンテンツ配信ネットワークに出回っていることに気づき、今後は法的手段も視野に入れている。ハンカーソン氏は次のように述べる。「アリババには豊かな財がある。模造品がリストアップされることを防止する技術があるはずで、被害への責任がある。私の写真には(米国)政府の著作権がついていて、私はアリババに対して繰り返し、それらを削除するよういってきたが、まるでウサギの穴に落ちたかのように不可解な状況になっている。相手を追い詰め、この習慣をやめさせたい。不公平だし、許されるべきことではない」。
Yuyu Chen(原文 / 訳:ガリレオ)