フェデックスの Amazon 撤退は、大戦の「序章」にすぎない

フェデックス(FedEx)がついにAmazonを明確なライバルと認め、提携関係を打ち切った。

同社は2カ月前にAmazonに対して、フェデックス・エクスプレス(FedEx Express)のエアメールサービスを終了していたが、今回さらに同社に対するフェデックス・グラウンド・シッピング(FedEx Ground Shipping)の打ち切りに踏み切った。

Amazonの配達時間は短縮しつつあるが、今後同社はUPSやDHL、そして自社の配達ネットワーク機能を使って配達をまかなうことになる。同社は自社の配達ネットワークとして、貨物機や配送車両、地元ドライバーらを抱えている。

Amazonは、独占的な立ち位置を確保するなかで、物流事業にも進出しており、配達サービスを行う競合他社は、同社に対する抵抗を強めている。

撤退で引き起こる変化

ウォルマート(Walmart)やクローガー(Kroger)、ウォルグリーンズ(Walgreens)といった小売企業は、AmazonのAWS(アマゾン・ウェブ・サービス)に変わるクラウドベースのプラットフォームを探しており、マイクロソフト(Microsoft)Googleが選択肢となっている。フェデックスの場合、Amazonとの提携打ち切りによって、より小規模なECベンダーへのサービス提供が可能になる。小売企業向けの配送技術企業マイサイズID(MySize ID)でCEOを務めるローネン・ルツォン氏は、フェデックスはECスタートアップへの物流サービス提供で、大きな力を発揮できるだろうと指摘している。

同時にフェデックスの撤退により、Amazonは自社による配達機能の実現に向けて、大きなプレッシャーがかかることになる。Amazonが大手企業から提携を打ち切られたのは、今回がはじめてではないが、ここ数カ月、同社は利益の確保に向けていくつか取り組みを進めている。たとえば小規模ベンダーをよりマージンの大きいサードパーティのマーケットプレイスへ移行させるとともに、独自ブランドの立ち上げも行っている。配達ネットワークの構築には大きなコストがかかるが、Amazonがインハウスのサービスを充実させるためには投資を避けられない分野だ。

ECソフト企業プロダクトサップ(Productsup)でCMOを務めるマーセル・ホラーバック氏は「Amazonの配達機能は現時点でもかなり強力だ。今回の撤退を受けて、サードパーティの運送会社への依存を減らす取り組みが、さらに加速するのではないか」と指摘する。「インハウスの配達機能をさらに強化しなければならなくなっている」。

板挟みになる販売業者

フェデックスがAmazonの配達サービスから撤退したことを受けて、Amazonで販売を行う各業者は、エコシステムにどのような変化が生じるかを見極めようとしている。Amazonの販売業者がFacebookのグループで共有したセラーセントラルのダッシュボードのスクリーンショットには、フェデックスが利用できる期限が記載されており、その後は利用できるのはUPSのみとなる。また、カスタマーから配送の遅れをはじめとするクレームも受けておらず、特に影響は感じないという販売業者の投稿も見られた。

今回の離脱は、フルフィルメント by Amazon(FBA)の抱える潜在的な弱点を浮き彫りにする可能性もある。FBAは販売業者が料金を支払うことで、Amazonによる注文処理とAmazonプライム(Prime)の配送と倉庫管理サービスを受けられるシステムだ。フェデックスとAmazonの契約はAmazonからカスタマーに配達される全商品に直接的に影響する。一方で日本のマケプレプライムにあたる、米Amazonのセラー・フルフィルド・プライム(Seller Fulfilled Prime:SFP)に加入している販売業者は運送業者と直接提携しており、影響は受けないだろうと指摘するのが、ボブスレッド・マーケティング(Bobsled Marketing)の創設者キリ・マスターズ氏だ。だが、SFPへの切り替えは容易ではない。同プログラムは現在新規の募集を行っていない。さらにある販売業者はSFPを維持するのは大変だと明かす。配達が1回遅れたら監視対象となり、2回遅れたらプログラムから除外されてしまう。

「AmazonでEC販売を行う業者にとって、もっともハードルが高いのが、在庫とサプライチェーン、パフォーマンスの管理だ。FBAが人気なのもそこにある」と、サプライチェーンプラットフォームのソーシファイ(Sourcify)でCEOを務めるネイト・レスニック氏は指摘する。

Amazon自身は、フェデックスの離脱について、さほど気にする素振りをみせていない。Amazonの運用担当シニアバイスプレジデントのデイブ・クラーク氏は、Twitterでフェデックスについて「(フェデックスにとっての当社と同様に)当社のネットワークのなかでフェデックスは大きな存在ではなかった」とツイートしている。ホラーバック氏は、Amazonに生じるデメリットはたったひとつだと指摘し、次のように述べている。

「運用上でAmazonにはあまり問題は生じないだろう。ただし独占という観点から、反トラスト法には注意が必要だ。物流においてAmazonが独占的な地位を占めるようになれば、法律上の懸念が生まれるのは間違いない」。

Hilary Milnes(原文 / 訳:SI Japan)