Facebookのビデオ配信プラットフォーム「Watch(ウォッチ)」が開始されて、2カ月ほど経った。初期データによるとユーザーのビデオ視聴の時間が増えたということが分かっているが、トップレベルのクリエーターやパブリッシャーたちがYouTube上で達成できる再生時間と比べると、まだまだ道のりは険しそうだ。
Facebookのビデオ配信プラットフォーム「Watch(ウォッチ)」が開始されて、2カ月ほど経った。初期データによるとユーザーのビデオ視聴の時間が増えたということが分かっているが、トップレベルのクリエーターやパブリッシャーたちがYouTube上で達成できる再生時間と比べると、まだまだ道のりは険しそうだ。
ソーシャルビデオ分析会社デルモンド(Delmondo)が、Watch上の15のページにアップロードされた46のビデオを分析した結果、これらのビデオの視聴時間は平均23秒であることがわかった。対象となったビデオにはFacebookが制作費用をトップクリエーターやパブリッシャーに提供して制作してもらったものも含まれている。これは6月の段階でのFacebookニュースフィード上でユーザーたちがビデオ視聴に費やしているとされた平均16.7秒と比べると大きい。デルモンドによると、ニュースフィード上での視聴時間よりもWatchでの視聴時間が2倍も3倍も長いビデオも珍しくはないという。数カ月しか経っていないが、現時点で何百もの番組がそれぞれのWatch上のページを持って存在している。
長くなる視聴時間
Attnやコンデナスト(Condé Nast)といった大手パブリッシャーも、Watch上のビデオではより長い視聴時間を確保していると述べている。Facebookにおける「通常のプログラム」よりも2倍のリテンションが、Watch上で見られているとAttnは述べた。
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「我々のオーディエンスが、さらに長時間のコンテンツを好むようになってきたことが理由だ」と、Attnのオーディエンス部門責任者であるマーサ・ピアース氏は語る。ジェシカ・アルバが出演する「ヘルス・ハックス(Health Hacks)」と「ウィー・ニード・トゥ・トーク(We Need to Talk)」の2番組をAttnは、いまのところWatchで提供している。
WatchはYouTubeのようなビデオ体験を生み出そうと試行錯誤するFacebookが、これまでに試したもののなかで最大規模のものだ。より多くの人がもっと頻繁にFacebookを使って、長い時間をプラットフォーム上で費やしてくれるように彼らは取り組んでいる。パブリッシャーやセレブリティーたち、人気ユーチューバーたちにオリジナルのエピソード形式の番組の制作資金を提供したり、ニュースフィード上で長時間ビデオがよく表示されるようにアルゴリズムをデザインしたりしているのはそのためだ。
「多くのビデオにおいて、ユーザーが費やすのは平均1分から1分半の視聴時間となっている。YouTubeをモデルに作られたビデオもある。ローンチ時点で、Watchは長いビデオを見るためのものであるというコンセプトを人々に持ってもらおうとしている。パブリッシャーやクリエーターはより長いあいだ持続する、より良いストーリーを作ろうとしているのだ。そのため視聴時間が増加しているのは自然だ」と、デルモンドのCEOであるニック・シセロ氏は言う。
しかし、まだ道半ば
初期のデータを見るとWatchの方向性は間違っていないように思われる。しかし、目標とするビデオ体験を達成するためには、まだまだ道のりは長いことは明確だ。Watch上のビデオのほとんどが4分から10分、そして20分の長さを持っており、テレビ形式となっている。もっとも短い4分という長さで考えても平均視聴時間23秒というのは長くない。ましてやYouTubeのトップチャンネルやテレビが保っているレベルに比べると、はるかに劣っている(いわゆる「20秒の壁」を破っていることは特筆に値する。これはミッドロール広告にとっての分水嶺である。ミッドロール広告は、まだパブリッシャーたちにとって、十分な収益源には成長していないジャンルなので、これは注目だ)。
オーディエンス開発会社リトルモンスターメディア(Little Monster Media)のファウンダーであるマット・ジーレン氏によると、YouTubeにおける典型的な、平均(オーディエンス)リテンション率というのは存在していない。一般的には50%のリテンション率は問題ないと見なされており、ゴールは60%以上となっているという。
YouTube上で再生時間の長いビデオにフォーカスを置いているパブリッシャーのあいだでは、視聴時間や完全視聴率が上昇していることは最近確認されている。今年はじめにはVox.comのYouTubeビデオの半分は平均4分間視聴されていると述べた。ブリーチャー・レポート(Bleacher Report)とCNNのグレート・ビッグ・ストーリー(Great Big Story)もYouTubeにおける完全視聴率が65%以上であると主張している。
FacebookやWatch上のパブリッシャーの目標は、YouTubeのレベルにまで達することだ。
待ち受けるチャンス
「もしもWatchのエコシステムにユーザーたちを取り込むことに成功して、エピソードを次から次に見てもらえるようになったら、ビジネス面で非常に素晴らしいチャンスとなる。それはニュースフィード上では実現できないビジネスチャンスだ」と語ったのは、コンデナストのデジタルビデオプログラム部門シニアバイスプレジデントであるクロイ・マクナマラ氏だ。コンデナストによると、彼らの番組「バーチュアリー・デーティング(Virtually Dating)」は、1700万再生回数を誇るWatchのトップビデオのひとつとなっている。
Watchに対するFacebookユーザーの態度がYouTubeに似ているという証拠は出てきている。自動再生のビデオを無理やり見せられるのではなく、ユーザー自ら選んでビデオを視聴する、という点はまさにそうだ。そのためユーザーはコンテンツに時間を費やすようになっている。デルモンドによるとクリックして視聴するタイプのビデオのりテンション率は、通常50%から75%のあいだとなっている。
「(高いリテンション率は)オーディエンスが我々のビデオをただのニュースフィードでの視聴とは異なったものだと捉えていることを示している。さらに長いストーリーを伝えていくことを考えると、これは良い兆候だ」と、Attnの共同ファウンダーであるマシュー・シーガル氏は語った。
Sahil Patel(原文 / 訳:塚本 紺)