Facebookは、バーチャルリアリティ(VR)用ゴーグル「オキュラス・リフト(以下オキュラス)」のマーケティング活用策を、広告主に提示しはじめた。関係筋によると、より没入的な体験ができる360度動画についての議論が盛んになっているようだ。
その一方、VR用のヘッドマウントディスプレイ製品は「オキュラス」だけではない。ソニーやサムスンも製作しているうえに、Googleはスマートフォンを挟み込む箱形の「カードボード(Cardboard)」をリリースしている。
また、「オキュラス」の普及には時間がかかるとされている。そのため、いまのところ多くのブランドが注目している360度動画は、ニュースフィード配信の方だ。その覇権は、一体誰がどのように握るのか?
Facebookは、バーチャルリアリティ(VR)用ゴーグル「オキュラス・リフト(以下オキュラス)」のマーケティング活用策を、広告主に提示しはじめた。関係筋によると、より没入的な体験ができる360度動画についての議論が盛んになっているようだ。
2014年に20億ドル(約2400億円)で、開発会社オキュラス社を買収したFacebook。その目的は、VR技術の開発時間の削減で、広告採用の目論見がささやかれた。「オキュラス」は2016年、一般用の販売がはじまると予測されているが、家庭の必需品となるまでに時間がかかることはFacebook側も認めている。
「オキュラス」向けに、従来の挿入型広告は採用されない。しかし、ブランド企業は仮想世界における特別なコンテンツのスポンサードに興味をもち、プロダクトプレイスメント(映像作品内にブランドを挿入すること)を求めているのは疑いないようだ。
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「オキュラス」の位置づけ
「『オキュラス』の位置づけが、ついに固まろうとしている」と、Facebookの関係者とVRについて議論したことのある、とあるクリエイティブエージェンシーの役員は語る。「Facebookは『オキュラス』のローンチ時に大手ブランドを広告主にしたいと望んでおり、状況が進展している」。
その関係筋によるとFacebookは、「オキュラス」が360度動画のインフラとなることで、VRの迅速な普及が見込めると、ブランドに対して説明しているという。
また、360度動画のライブ配信が実現可能かどうかについても議論されていると、その関係筋は語る。2016年第2四半期までに、360度動画のライブ配信に関するマーケティング方法が開示される見込みだという。しかし、Facebookはコメントを拒否している。
VRをめぐる攻防戦
その一方、VR用のヘッドマウントディスプレイ製品は「オキュラス」だけではない。ソニーやサムスンも製作しているうえに、Googleはスマートフォンを挟み込む箱形の「カードボード(Cardboard)」をリリースしている。
Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOは、かつてスマートフォンが最初はゆっくりと、やがてあまねく普及したのと同じような流れで、VRは普及すると予測している。ちなみにアーリーアダプターは、ゲーム業界から生まれそうだ。すでにVRを手がけているパブリッシャーやブランドも出てきている。
橋頭堡はニュースフィードか
だが、「オキュラス」の普及には時間がかかるとされている。そのため、いまのところ多くのブランドが注目している360度動画は、ニュースフィード配信の方だ。
「VRの体験を語る際、我々はFacebookとYouTubeでの360度動画の体験を必ず考えるようにしている」と、あるエンターテインメント大手のデジタルマーケティング担当バイスプレジデントは語る。「このコンテンツは、素晴らしい訴求が想定できる」。
360度ライブ動画の可能性
2015年12月第1週に、ニュースフィード用の従来型ライブ配信が可能になった。いまのところ一部の著名人のみにしか開放されていないが、将来的にはビジネスやブランド向けの利用も可能になるだろう。
同年11月には、ディズニーが映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のプロモーションに利用するなど、ブランド企業による360度動画のFacebook配信は始まっている。また、「ウォールストリート・ジャーナル」は、Facebookが360度動画に特化したアプリを開発中だと報じた。
ライブイベントで360度動画を利用した場合の投資利益率(ROI)がどれぐらいかを予測するのは難しい。だが、その実現は、すぐそこに近づいている。
映画専門メディア「ムービーパイロット(Moviepilot)」は、Facebookの360度動画をレッド・カーペット中継に利用したが、ライブ機能はまだ実装されていなかった。MTVは2015年8月に、ビデオミュージックアワードの中継で、360度動画のライブ配信を実現したが、Facebook向けではなかった。
テレビアプリが普及の近道?
Facebookがテレビ向けのアプリを開発すれば、VR普及の可能性は高まると、前出のクリエィティブ系エージェンシーの役員は見ている。ヘッドセットを装着しなくてはならないモバイルプラットフォームよりも、利用の障壁が少ないからだ。
「すでに『Apple TV』では、リモコンによる精密なタッチセンサーで、画面への没入感を実現している」と、その関係筋。「デジタル機器との一体感を得るための道筋として、VRを利用している」。
Garett Sloane(原文 / 訳:南如水)※[日本版]編集部で加筆・修正した。
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