Facebook のニュース対価支払は、「新常態」になるか? :パブリッシャー対応をめぐる是非

Facebookが待望のニュース製品を発表した。多くのパブリッシャーは「慎重ながらも楽観的」な見方をしているが、本当に知りたいことがひとつある。パブリッシャーとプラットフォームの関係の新時代が幕を開けるのか、それとも、よくある宣伝だけが過剰な製品で終わり、パブリッシャーが持続可能なビジネスモデルを見つける助けにはほとんどならないのかだ。

Facebookは間違いなく、パブリッシャーのこうした疑念に気付いている。新製品Facebook Newsの発表イベントでは、ニューズ・コープ(News Corp)のCEOを務めるロバート・トムソン氏をはじめとする大物が、FacebookのCEOマーク・ザッカーバーグ氏との対談に臨んだ。トムソン氏はこの数年、Facebookを激しく非難してきた人物だ。Facebookなどのプラットフォームを「ボットがはびこる暗黒街」と呼び、「掲載料」を要求した。そのトムソン氏が10月25日、Facebook Newsは世界中の「ニュース編集部に反響するような力強い先例」を示したと語った。

確かにそうかもしれない。Facebook Newsの発表によって、Facebookはニュースの扱い方を大きく変えようとしている。まず、広告収入を分配するという不明確な契約から直接的な支払いに移行した。また、Facebookのライブ動画などと異なり、パブリッシャーは制作済みのコンテンツを再利用できる。理論的には、Facebookの巨大なリーチと支払い保証が一緒になった世界最高の製品ということだ。

プラットフォームたちの意思

オーストラリアに本社を置くマクファーソン・メディア・グループのディレクター、ロバート・ホワイトヘッド氏は「ニュースパブリッシャーはもちろん、それがニューノーマル(新たな常態)になればいいと考えている。しかし、突破口が開いたというには時期尚早だ」と話す。ホワイトヘッド氏はパブリッシャーとプラットフォームの関係をテーマにした国際ニュースメディア協会の最新報告書の著者だ。

Facebook Newsは3月に発表されたApple News+とともに、プラットフォームはパブリッシャーに直接支払う意思があることを実証している。ニュースアグリゲーターのスマートニュース(SmartNews)でさえ、新製品SmartView First(スマートビュー・ファースト)でパブリッシャーへの支払いを開始しようとしている。

ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)、バロンズ・グループ(Barron’s Group)のCROジョシュ・スティンチコーム氏は10月、米DIGIDAYのポッドキャストで、「プラットフォームでのビジネスチャンスがかつてないほど大きくなっている」と語った。「我々は2019年に入ってから、プラットフォームと複数の大型契約を結んだ。全体的には、彼らが質の高いジャーナリズムの価値を認め、あるいは、価値を認めるよう強いられ、何らかの方法で対価を支払う必要があると認識しはじめている状況だ」。

各社の取り組み方の違い

ただし、Facebook Newsの場合、すべてのパブリッシャーが直接的な支払いを受けられるわけではない。ザッカーバーグ氏は一部のパートナーを対象に「数年間、金銭的な責任」を果たすと述べている。ウォール・ストリート・ジャーナルは10月18日付で、複数の主要パブリッシャーが年間最大300万ドル(約3.2億円)の契約を結んだ可能性があると報じている。パブリッシャーの具体名は明かされていないが、ザッカーバーグ氏によれば、パブリッシャーが直接的な支払いを受けられるかどうかの主な判断基準は、Facebookがそのパブリッシャーのコンテンツを増やしたいかどうか、そのパブリッシャーがペイウォールを設定しているかどうかの2点だという。ザッカーバーグ氏はさらに、パブリッシャーはふたつの選択肢を与えられると述べている。自前の広告を掲載し、広告収入を100%回収するか、Facebookの広告ネットワークを利用し、広告収入をFacebookと分け合うかだ。

Apple News+は対照的に、音楽業界と同じモデルを採用している。Appleが利益の50%を取り、残りの50%はコンテンツの消費頻度を基準に、コンテンツを提供しているすべてのパブリッシャーで分配するというものだ。スマートニュースはライセンス料を支払っているが、パブリッシャーはさらに、ディスプレイ広告枠を販売し、その利益を100%回収できる。

TwitterやSnapchat(スナップチャット)など、パブリッシャーにコンテンツの対価を支払ってきたプラットフォームは伝統的に、広告収入を分配するモデルを採用しており、直接的な支払いは行っていない。

TwitterやSnapchat

トムソン・ロイター(Thomson Reuters)などのパブリッシャーは、Twitterのインストリーム動画広告で「莫大」な収益を得ているが、Twitterはライセンス料も音楽業界の手数料モデルも導入していない。

TwitterのCEO兼創業者ジャック・ドーシー氏は10月24日、Facebook Newsの動向に注目していると語り、「素晴らしい探求」、「最高の大規模実験」と評価した。ただし、同様の試みを行うつもりがあるかどうかについては、「持続可能」なモデルかどうかを見極めたいと強調している。Facebookは「動画への転向」を行い、複数のパブリッシャーの消滅を招いた実績があるためだ。

「この部屋にいる人の多くが世界を期待させたプログラムに参加し、そのプログラムがすぐに消滅したという経験をしているはずだ」と、ドーシー氏は述べた。「多くの場合、あまりに破壊的で困難で屈辱的なため、世界中が混乱に陥る。どうすれば彼らを確実に支えられるパートナーシップの機会が見つかるのだろう?」。

Snapchatも彼らのアプリにおいて、独自のニュース機能を検討しているようだ。この件に詳しいある人物は、米DIGIDAYの取材に対し、Snapchatのユーザーはニュースコンテンツの充実を求めており、Snapchatはより多くのニュースコンテンツを提供するため、開発の初期段階にあると語っている。ライセンス料か広告収入の分配かはまだ決まっていないが、何らかの形でパブリッシャーへの支払いは行われる見込みだ。

両方の利益になるのか?

もし最終的に、プラットフォームからパブリッシャーへの支払いが業界標準になれば、パブリッシャーはより利益になるモデル、プラットフォームを見つけなければならない。プラットフォームから直接的な支払いを受けるより、特定のプラットフォームで広告収入を分配した方が利益になるパブリッシャーも出てくるだろう。

しかし、広告主のあいだには、Facebook Newsのような製品がパブリッシャーとマーケター両方の利益になるのだろうかと、疑問視する声もある。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(Bank of America Merrill Lynch)のカスタマーエンゲージメント、イノベーション担当シニアバイスプレジデント、ルー・パスカリス氏は10月24日、Twitter主催のメディアイベントで、「我々は(Facebook Newsの)早期導入者にはならない。たとえその精神を気に入ったとしてもだ」と述べた。「我々がもっとも利益を得られるのは、プラットフォームとの直接取引だと考えている。特に、ニュースはニュース環境でもっとも消費されると思う」。

たとえ、そこに気持ちや金があったとしても、これらの新製品は別のニュースフィードとともに運営されている。ニュースフィードではいまだに、記事の対価は支払われておらず、プラットフォームはいまだに、人々をまず自身のエコシステムに導こうとしている。

すべてが同じわけではない

ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)はFacebook Newsへの参加を迷っていると伝えられていたが、結局、参加を決めた。この決断の狙いは、Facebookのユーザーを自社チャンネルに呼び込み、2025年までに1000万人という購読者数の目標を達成することだろう。現在の購読者数は470万人だ。

ニューヨーク・タイムズの広報担当者は「このNewsタブに参加すれば、私たちのジャーナリズムをFacebookのオーディエンスに宣伝できるだけでなく、自社チャンネルにユーザーを呼び込み、デジタルサブスクリプションの成長戦略を支え、ニュースルームへの投資を増やすことができる」と述べている。

Facebook NewsやSmartView First、Apple News+では、すべてのパブリッシャーが公平に扱われるわけではないが、ほとんどのパブリッシャーにとっては、その方が好都合だ。

「Facebook Newsタブについて重要なことは、(中略)すべてのニュースが同じように作られているわけではないと認識することだ」と、USAトゥデイ(USA Today)発行人で、USAトゥデイ・ネットワーク(USA Today Network)のプレジデントを務めるマリベル・ペレズ・ワズワース氏は10月24日のイベントで語った。「また、本当に質の高いジャーナリズムは無料ではなく、投資の価値があり、プラットフォームが無料で利用すべきものではない」。

グループ・ナイン・メディア(Group Nine Media)の最高インサイト責任者アシシュ・パテール氏は「我々のような大企業にとっては、(プラットフォームに)個人で活動するクリエイターのように扱われないことが重要だ。多くのプラットフォームは個人クリエイターの支援こそ得意だが、質の高いコンテンツの制作に多額のコストを投じている場合、それを長く続けるには、異なるレベルの支援が必要だ」と話す。

Googleの動きはいまだ不明

しかし、結局すべてのパブリッシャーが気に掛けているのは、やはり世界最大のプラットフォームGoogleだ。

BuzzFeedのCEOジョナ・ペレッティ氏は、BuzzFeed NewsがFacebook Newsに参加することを伝える従業員宛ての電子メールで、多くのパブリッシャーが考えていることを次のように代弁。「当然ながら、ほかのプラットフォーム、特にGoogleもFacebookに追随してほしいと考えている。独自性の高いジャーナリズムから得られる本物の価値に気付いてほしい」。

Googleは最近、人気取りに必死だ。Googleニュースイニシアチブを立ち上げ、良質なジャーナリズムの支援を表明したり、アルゴリズムを見直し、オリジナル記事を上位に表示すると約束したりしている。

検索エンジンへの表示と引き換えに、パブリッシャーに無料のコンテンツを求める「1クリック無料」ポリシーで生じた問題の解決に資金を投じても、問題の根本的な原因が消え去るとは限らない。GoogleとFacebookは過去2年間に、合わせて6億ドル(約649億円)以上をジャーナリズム関連の取り組みに投じると公言している。

規制当局の圧力が後押しに?

しかし、規制当局の圧力が後押しになるかもしれない。フランスでは、Googleがパブリッシャーへの支払いを回避するため、検索結果にパブリッシャーのコンテンツへのリンクを含めることを拒否しているが、その原因となっている法律は、2021年までにすべての欧州連合(EU)加盟国に拡大される。

Facebook NewsとApple News+が後押しになる可能性もある。マクファーソン・メディア・グループのホワイトヘッド氏は、「AppleやFacebookからの競争圧力が高まれば、Googleはライバルを脱落させることに夢中になるだろう」と、予想している。

さらに、同じ志を持つニュースパブリッシャーが手を組み、独自のニュースアグリゲーターを立ち上げる計画もある。ニューズ・コープはすでにニューズ(Knewz)を持っており、インフォメーション(The Information)は10月23日付の記事で、CNNがニュースコ(Newsco)の立ち上げを計画していると報じている。アクセル・シュプリンガー(Axel Springer)のアップデイ(Upday)は、サムスン(Samsung)のスマートフォンデバイスにプリインストールされている。

ニューズ・コープのトンプソン氏とアクセル・シュプリンガーのCEOマティアス・デップナー氏は、Google、Facebookといったテクノロジープラットフォームによるニュースコンテンツ配信の独占を声高に非難している。彼らやCNNといった代替的なニュースアグリゲーターが成功を収めるかどうかは、互いに直接競合するブランドの賛同を得ることができるか、GoogleやFacebookと競合するのに十分な規模のアライアンスを築くことができるかに懸かっている。

Deanna Ting(原文 / 訳:ガリレオ)