エージェンシーにおける仕事のなかで、ソーシャルメディア上のブランド認知を管理するコミュニティーマネージャーの地位は低い。だがいま、そんな職種にスポットライトが当たっている。Facebookが、ニュースフィードでユーザーからのコメントやエンゲージメントを引き出す投稿や、コンテンツを優遇すると発表したからだ。
エージェンシーのすべての仕事のうちで、ソーシャルメディアにおけるブランド認知を管理するコミュニティマネージャーは、自分たちの地位はもっとも低く、事前に書かれた投稿をソーシャルメディアで共有したり、ユーザーの苦情やTwitter荒らしに対応したりというような、日常的なタスクを大量に課せられていることを知っている。
コミュニティマネージャーは、コンテンツの鉱山で骨の折れる仕事をしているが、脚光を浴びることはほとんどない。企業評価サイト、グラスドア(Glassdoor)によると、コミュニティマネージャーの平均年収は5万ドル(約550万円)未満で、その価値は正しく評価されないことが多く、多くのエージェンシーは彼らをパート従業員として雇い、コピーライティングや配信計画の立案など、ソーシャルメディアに直接関わる業務以外での責任を押しつけている。
だがいま、そんなコミュニティマネージャーにスポットライトが当たろうとしている。Facebookが、ニュースフィードでユーザーからのコメントやエンゲージメントを引き出す投稿や、コンテンツを優遇すると発表したからだ。
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エンゲージメント形成
Facebookがニュースフィードのアルゴリズムを変更したことは、たくさんのコメントを集める投稿がいままで以上に重視され、いいね! やシェアの価値がうわべだけの指標に成り下がることを意味する。この変更によってエージェンシーは、コメントスレッド内の会話を奨励し、エンゲージメントを高めることに注力しなければならないと気づいた。
エージェンシーのヒュージ(Huge)でソーシャルメディア担当グループのディレクターを務める、ブラッド・ウェレン氏はこう語る。「『意味のあるソーシャルな交流』というFacebookの新しい焦点に順応したブランドやメディアアウトレットは、いままで以上にコミュニティ管理を必要とするだろう。ユーザーは、良くも悪くも感情を刺激されるコンテンツにコメントする傾向があるからだ」。
リア・ボスキル氏は、ブルックリンに本拠を置くマーケティングエージェンシー、AGWに在籍する6人のコミュニティマネージャーのひとりで、自身の役割が一層本質的に変わってきていると考える。全体的にコミュニティマネージャーの役割は、「重要性を増していて」単に「投稿をするだけ」以上のものになりつつある、とボスキル氏はいう。
危機管理も重要なタスク
たとえば、1月11日にFacebookがニュースフィードの変更を発表するまでボスキル氏の1日は、エージェンシーが持つ複数のソーシャルチャンネルを通じてユーザーとコミュニケーションを取り、ブランドの歴史や製品に関することといったテーマについての投稿を共有したり、気がかりなことや苦情を申し立てたユーザーと1対1の対話をはじめたりする時間で、そのほとんどが占められていた。こうしたタスクを片付けたあと、ボスキル氏は戦略やコピーライティングのようなほかの分野でエージェンシーとともに作業を進めた。現在、ボスキル氏の仕事にはより多くの責任が伴うようになった。
特にFacebookに関してボスキル氏は、ユーザーの発言へのレスポンスに焦点を合わせるのではなく、Facebookのコメントスレッド内でユーザーとの会話を生み出すことに積極的に取り組んでいるという。なぜなら、その習慣こそ質の高いエンゲージメントを獲得できるからだ。ボスキル氏の仕事は、さらに危機管理にまで広がっている。ボスキル氏は現在、AGWの統合部門とPRチームとの連絡役として働き、ニュースフィードの最上部にブランドのポジティブなエンゲージメントポジションだけを確保するためのシナリオを考え出している。
「質問があるユーザーのツイートに反応して、『我々にDMしてください』と伝え、議論を脇に押しやるのではもはや不十分だ」と語るボスキル氏は、年収も、今後昇給があるかどうかも明かそうとはしなかった。「細部にまでより多くの注意を払う必要がある。私がすることはすべて公になるので、コメントスレッドが横道にそれたときに、どの方向へ行きそうかを予測しておく必要がある。私はコミュニティマネージャーに任命されているが、これは総力を挙げて取り組むべき変更なので、実際には他部署も含めあらゆるメンバーと連携を取っている」。
フルタイムでなくては
フルタイムのコミュニティマネージャーがいないエージェンシーは、Facebookが実施した今回の変更に苦労させられるだろう、とAGWの最高経営責任者(CEO)であるアダム・ゴローデ氏は語る。「現在のエージェンシーの状況においては、ソーシャルマネジメントやPRは補助サービスだと思っている企業がたくさんある。しかし、この役割はフルタイムでなければならない。エージェンシー内でパートとして勤めている人の大半は、おそらくまともに仕事ができないだろう」。
Ilyse Liffreing(原文 / 訳:ガリレオ)