いまなお「HQトリビア(HQ Trivia)」は、アメリカとカナダで1日に何十万人もの参加者を集めている。一方、オンラインゲームショー帝国の建国についていえば、Facebookやザ・キュー(The Q)をはじめとする、ほかのプラットフォームは海外市場への投資を行ってきた。
いまなお「HQトリビア(HQ Trivia)」は、アメリカとカナダで1日に何十万人もの参加者を集めている。彼ら回答者は連日、トリビアゲームを同時プレイしている。一方、オンラインゲームショー帝国の建国についていえば、Facebookやザ・キュー(The Q)をはじめとする、ほかのプラットフォームは海外市場への投資を行ってきた。
Facebookは2018年6月、HQトリビアを模したゲーム番組「コンフェティ(Confetti)」のローンチを発表。そして7月11日、アメリカで第1回目の配信を行い、以来、毎週平日にゲームを開催している。また同社は、メキシコやイギリス、タイ、フィリピン、ベトナム向けのバージョンも開発してきた。
動画ストリーミング会社のストリーム(Stream)が2017年11月に立ち上げたザ・キューは、パブリッシャーが独自のゲームを開発するための技術的なバックエンドを提供。ニュースUK(News UK)は2018年6月、ザ・キューと業務提携を結び、トリビア番組を1日2回配信している。YouTubeに配信しているトップ10動画で知られるパブリッシャーのウォッチモジョ(WatchMojo)も、ザ・キューとコラボしてトリビア番組を毎週配信すると1月7日に発表した。ウォッチモジョは番組を世界中に配信しているが、賞金の支払いはアメリカとカナダに限られている。それに対してニュースUKは、イギリスのオーディエンスのみに向けて番組を配信している。
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一方、HQがイギリスに向けて配信していた番組は、12月に終了。HQイギリスは12月5日、「しばらくお休みをいただきます。現在、新番組『@HQWords』の準備中です。これからもよろしく!」とツイートした。HQの広報担当者にコメントを求めたが、回答は得られていない。
世界展開における現状
HQが世界進出の試みを保留する一方、Facebookとザ・キューはここぞとばかりに、自社プロダクトの世界展開を進めつつある。これらのなかには、アメリカ版よりもはるかに成功しているものもある。たとえばFacebookは、メキシコでは2本の番組を連日配信。ほかの国はどこも1本だけであるにもかかわらずだ。メキシコの番組人気は、コンフェティにはファンエンゲージメントを生み出す力があることを示す何よりの証拠だと、Facebookの広報担当者は話す。
しかし、世界展開は必ずしも楽ではない。たとえばザ・キューの場合、賞金の支払いはアメリカとカナダ、イギリスに制限されている。他国では規制にひっかかるためだ。ザ・キューはインドでもローンチを行っているが、その後、同社のパートナーであるパブリッシャーをめぐる論争が巻き起こり、現在は同国での運営を休止している。
概してトリビア番組の配信は、思われているほど単純ではない。参加者を楽しませる司会、正確かつ難易度の高い問題、盤石の技術サポート、そして十分な賞金が必要なのだ。しかし、Facebookも、ザ・キューと提携するパブリッシャー各社も、トリビア番組のライブ配信にはそれだけの価値があると言っている――ここまでのところは。トリビア番組には、新しいオーディエンスを開拓し、動画の同時視聴者数という形でエンゲージメントとスケールを売り込む力があるというのだ。HQトリビアとは異なり、これらのゲームに広告は表示されないが、パブリッシャーは動画の視聴回数をセールスピッチに含められる。将来的には、ブランデッド契約が導入される可能性はある。
ザ・キューが取り組む戦略
ライブトリビアのモバイルアプリという新興産業へのファーストムーバーであるHQトリビアが、これら後発隊にインスピレーションを与えたことは明らかだ。ウォッチモジョで最高売上責任者を務めるマット・マクドナー氏は、同氏のチームは以前からトリビアに興味を持っていたと話す。
「投票や、からかい半分のトリビアを手がけたり、独自のトリビアなどもいくつか手がけていたが、100%のフォーカスを当ててはいなかった」と、マクドナー氏は語る。「HQが我々の関心をここまで高めてくれたことは確かだ」。
マクドナー氏によれば、ザ・キューとの協働のおかげでウォッチモジョは、技術に投資したり、既存のチャンネルのリズムを乱したりすることなく、フォーマットをテストすることができたという。「我々にとって、ザ・キューは優れたディストリビューターだ。ウォッチモジョがすべてを投げ捨てて、テック企業になるわけにはいかない」。
ニュースUKでニュース制作部門のゼネラルマネージャーを務めるデヴィッド・マクリーン氏は、同氏のチームもHQが登場してまもなくトリビアに興味を持つようになったと話す。「自分たちも独自の番組を、と思うようになった。ただし、そのためには早期の市場参入が不可欠だ。いちばんの近道は業務提携で、ちょうどそのころにザ・キューのことを知った」と、マクリーン氏は語る。
Facebookの捉え方
世界有数のリッチなテック企業であるFacebookは、動画も優先してきた。そんな同社が下した、インタラクティブなライブ動画を量産するという決断は、至極当たり前のことだ。コンフェティで司会を務めるティモシー・デラゲットー氏は、先日配信された番組の冒頭でこんなふうに言っている。「コンフェティへようこそ。この番組は、みなさまに賞金をご用意しています。ご存知かどうかわかりませんが、Facebookにはお金がたくさんあるんです」。
この日、同番組は5000ドル(約55万円)の賞金を出した。2万4970人のプレイヤーが第1問に正解し、全部で13問からなるゲームは、188人の勝者がそれぞれ賞金26.59ドル(約2900円)を獲得して幕を閉じた。
Facebookの広報担当者は米DIGIDAYの取材に対し、コンフェティは、動画がFacebookのテクノロジーやコンテンツと一体化するとき、ソーシャルなものになりうることを示す一例だと語った。
協働を行うFacebook
しかしながら、これら番組を制作しているのはFacebookではない。同社は、B-17エンターテインメント(B-17 Entertainment)内のデジタルスタジオ、サム・キャンディ・メディア(Thumb Candy Media)と業務提携し、アメリカとカナダ、メキシコで番組を配信している。他国で配信されている番組では、『アメリカズ・ゴット・タレント(America’s Got Talent)』や『Xファクター(X Factor)』などのリアリティ番組をヒットに導いたスタジオ、フリーマントル(Fremantle)と業務提携を結んでいる。
またディストリビューションに関しては、同社はインサイダー・インク(Insider Inc.)と協働している。Facebookの広報担当者によれば、インサイダー・インクはFacebookで番組をシェアすることによってプロモーションを行い、その他のマーケティングアセットを築いているという。
コンフェティのほかにも、Facebookは限られた数のパートナーに独自のインタラクティブゲームショーのテストを許可している。フレズノ(Fresno)は以前、「ワッツ・イン・ザ・ボックス?(What’s In The Box?)」という番組を配信していたが、昨年10月に制作は中止された。BuzzFeedの広報担当者によれば、同社は来月、「アウトサイド・ユア・バブル(Outside Your Bubble)」という番組をFacebookで開始するという。
Facebookが自社プロダクトのマーケティングに使ういつもの攻撃的な戦法とは異なり、コンフェティがアメリカ国内で用いているそれは、いささかおとなしい。Facebookの広報担当者によれば、コンフェティには、Facebook上で一緒にプレイする友人や家族を介したオーガニックグロース(自立的成長)が顕著に現れているという。このゲームに参加するユーザーは、Facebook内の友人の誰かがプレイしているかどうかを知ることができる。また、自分が答える前に、彼らの回答を知ることもできる。同広報担当者によれば、2018年の最終四半期において、アメリカ国内のプレイヤーの45%以上が少なくとも1回は友人と一緒にプレイしており、優勝者の80%以上がほかの人と一緒にプレイしているという。
オーディエンス拡大が狙い
パブリッシャーにとっては、ライブゲームショーを手がけることの目的は、代わりとなる新たな収入源を単に見つけることではなく、オーディエンスを拡大することにある――少なくとも、いまのところは。
「(ザ・キューの)オーディエンスをうまく活用すれば、ラジオ番組など、我々が手がけているほかのコンテンツを彼らに紹介できる。自己宣伝を行うには、うってつけの方法だ」と、ニュースUKのマクリーン氏はいう。
ウォッチモジョのマクドナー氏によれば、同氏のチームは3~6カ月待ち、オーディエンスの規模が成長したら、番組内での広告が妥当かどうかを判断するつもりだという。
「我々は現在、自分たちが手がけている動画配信の多角化に取り組んでいる。ちょうどいま、ウォッチモジョはこんな面白いことをやっているんだと外に向けて発信しているところだ。トップ10動画のリスティクルの先に進もうとしているのだ」と、マクドナー氏は語る。「もちろんウォッチモジョの代名詞を捨て去るつもりはないが、これからはコンテンツの多様化をめざしていきたい」。
Kerry Flynn (原文 / 訳:ガリレオ)