リターゲティング広告は、人々の新たな批判の的になっている。そのため、Facebook広告では3年前から「I already own this(すでに入手済み)」という、一見とても便利そうなオプションを導入した。だが、Facebookもメディアバイヤーも、このオプションを活用していない。
リターゲティング広告は、人々の新たな批判の的になっている。
そのため、Facebook広告では3年前から「I already own this(すでに入手済み)」という、一見とても便利そうなオプションを導入した。だが、Facebookもメディアバイヤーも、このオプションを活用していない。
米DIGIDAYが5人のアドバイヤーにこのオプションを見せたところ、全員がその存在を知らなかった。彼らの名誉のためにいえば、このオプションはニュースフィードの標準的な広告ユニットでは提供されていない。広告収入の大半(2018年度第3四半期には92%)を占めるモバイルでさえ利用できないのだ。
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このオプションがユーザーに表示されるのは、デスクトップ版のFacebookのサイドバーにある広告だけとなっている。
既存と潜在を区別
だが、広告バイヤーはこのオプションに関心を持っていた。既存の顧客と潜在顧客を区別するための新たなデータとなるからだ。Facebookのピクセルを利用すれば、Facebook広告が表示されてからオンラインで製品が購入されるまでのアトリビューションを分析できるが、実店舗で製品が購入されれば、そのアトリビューションは失われてしまう。
また、Facebookのニュースフィード広告では、広告を報告するか非表示にするオプションしか表示されない。その理由としてユーザーが選択できるのは、その広告が自分に関連がないのか、何度も表示されるのか、不適切かということだけだ。
Facebookとともにデュオポリーを形成しているGoogleなど、ほかのリターゲティング広告プロバイダーも、このようなオプションは提供していない。オンラインコンテンツとともに表示されるGoogleの広告には、「停止」機能がある。だが、停止する理由としてユーザーが選択できるのは、その広告に興味がないか、その広告が何回も表示されるか、不適切か、コンテンツを隠しているということだけだ。とはいえ、クリテオ(Criteo)やアドロール(AdRoll)などのプラットフォームを利用したリターゲティングの取り組みが、広告費の無駄遣いというわけではもちろんない。
優れたオプション
デジタルエージェンシーのジュース(JUICE)の共同創業者であるトロイ・オシノフ氏によれば、そうしたオプションがあれば、彼のようなアドバイヤーにとっても役立つはずだという。ただし、本当に役立つものになるかどうかは、Facebookがそのデータを広告主に提供してくれるかどうかにかかっている。
「『I already bought this(すでに購入済み)』ボタンは、Facebookがその情報を提供してくれるのなら、マーケターにとって役立つものになる。デジタルアトリビューションを分析できないオフラインの販売をチェックするのに利用できるだろう。たとえFacebookがこのような情報を提供しなかったとしても、(アトリビューションが失われれば)悪い影響がもたらされるため、広告の停止機能に代わる優れたオプションといえる」と、オシノフ氏は語った。
また、広告の製品をすでに購入したユーザーが、「I keep seeing this(引き続き表示する)」というオプションを選ぶ可能性もある。だが、広告主は、ユーザーがそのオプションを選んだ理由を知ることはできない。
「我々がこの機能を構築した理由は、Facebookでのユーザーの広告体験を優れたものにしたかったからだ。すでに製品を購入した人がそのことを伝えられるようにすることで、もっと関連性の高い広告を表示できるようになる。我々は、Facebookでのユーザーと広告主の体験をより優れたものにする方法を常に検討しているのだ」と、Facebookの広報担当者はメールのなかで述べている。
求められるシグナル
バッグの販売を手がけるダグネ・ドーバー(Dagne Dover)でコンシューマーグロース担当VPを務めるヴァディム・グリーンバーグ氏によると、彼のチームは既存の顧客に対し、新製品やギフト製品、それにプロモーション用の製品以外の広告を見せないように努めているという。さらに、Facebookで関連度についてのフィードバックを個別に得られるオプションがもっとあれば望ましいと、グリーンバーグ氏は付け加えた。
「十分な情報を得られないことで苦労することが多い。しかし、個別のフィードバックがなくても、Facebookの広告プラットフォームで関連度やインタラクションを測定するだけで、価値あるインサイトが得られる。最終的な目標は、適切なメッセージを適切な人に届けることだ。たとえ、彼らがまだ顧客ではなくても、コミュニティの一員になってもらい、我々が必要としているシグナルを与えてもらえるようにしたい」と、グリーンバーグ氏は語った。
ダグネ・ドーバーとチームはいま、もっぱら関連度スコアを利用してFacebook広告の質を判断している。関連度スコアは、Facebookユーザーが行ったアクションによって算出される値だ。たとえば、動画を視聴したことはポジティブなインタラクションとして、広告を非表示にしたことはネガティブなインタラクションとして算定される。
理論的には、バイヤーにとってもFacebookにとって、ポジティブなインタラクションがあれば、ユーザーが広告の製品をすでに購入したかどうか判断できるはずだ。
Kerry Flynn(原文 / 訳:ガリレオ)