Facebook が収益性を高め、動画クリエイター 獲得を狙う

Facebook自身も認めているが、パブリッシャーたちにとって同社は、信頼できる収入源とは言い難い。一方で、YouTube式のレベニューシェア・プログラムがFacebookでローンチされて2年になるが、動画クリエイターたちは増えており、これは動画ビジネスの希望としてFacebookは捉えているようだ。

動画クリエイターがより信頼して活用できる、安定したプラットホームになるための試みとして、今年Facebookは種々のアップデートを加えた。5月には動画ランキングのアルゴリズムを変更し、リピーターが多く、オーディエンスをキープできる、クリエイターやパブリッシャーの動画を優先するようになった。チャンネルを管理するための「クリエイター・スタジオ(Creator Studio)」ダッシュボードには、オーディエンス維持に関するアナリティクスが加えられようとしている。ここからも安定したオーディエンス数をキープすることの重要性が伝わってくる。個々の動画やチャンネル全体の推定収益をトラッキングできるようなマネタイズ・アナリティクスもクリエイター・スタジオに加えている。

これらの変更によって、クリエイターたちがFacebookを「より安定した、信頼できる」動画プラットホームだと考えるようになることが、自らのゴールだと、Facebookのメディア・マネタイゼーション・プロダクト・マーケティング部門ディレクターのケイト・オルセス氏は、Facebookが主催したクリエイター・デイ(Creator Day)のイベント中のインタビューで語った。クリエイター・デイは7月9日にFacebookがカリフォルニア州マリブで開催した、1dayサミットだ。150人から200人のクリエイターたちが集い、Facebookのエグゼクティブたちと会い、新しいプロダクト機能を学び、間に合わせのセットで動画を撮影した。

クリエイター・スタジオのアップデートに加えて、収益という点でも信頼性を高めるためのアップデートを発表した。そのひとつが、動画の再生前に流れるプレロール動画広告と再生中に下部に表示される画像広告だけを活用する、という選択ができるようになったことだ。動画の途中で再生されるミッドロール広告の場合、オーディエンスが途中まで再生してくれなければ広告収益は得られない。その不満に対応した形だ。昨年、FacebookはFacebookスターズ(Facebook Stars)の仮想通貨を使ってゲーミング・クリエイターにチップを支払える機能を導入した。この機能をゲーミング分野以外のクリエイターにも拡大している。またクリエイターのFacebookチャンネルに月額料を支払ってサブスクライブする人々に限定したグループを作ることができるようにもなった。オルセス氏は、このファンのサブスクリプションというモデルを「クリエイターたちにとって、収益の流れが予測しやすくなる」と形容している。

収益の上下に翻弄される

しかし、「信頼できる」「予測できる」「安定している」という言葉はあくまでも相対的なものだ。特にアルゴリズムが常に変わり続けるプラットホームに動画を投稿することで収益を見込んでいるインデペンデントのクリエイターたちにとっては切実だ。

昨年、Facebookで50万人以上のフォロワーを抱えるクリエイターの場合、ひと月に1万ドルから6万ドル(約100万円から600万円)を定期的に得られていた。しかし、今年はその収益が減っており、FacebookよりもYouTubeを優先するようなレベルにまで至っているという。「Facebookはお金を生むのに有効なプラットホームとはもう考えていない」と、ひとりのクリエイターは答えた。

同様の収益の上下を経験しても、異なる結論に至るクリエイターもいる。200万人のフォロワーをFacebookページで抱えているクリエイターのひとりは、過去1年でFacebookにおける収益がひと月で4万5000ドル(約470万円)から次の月には2万2000ドル(約230万円)といった具合に上下したという。最も低い月で1万ドル、最も高い月で6万ドルの収益だったという。このクリエイターにとっては、収益が上下することはどのようなプラットホームにおいてもビジネスの基本となっているとのことだ。「(収益が)良い月があれば、『よし、毎月これくらいのお金が獲得できる』と考えてしまい、するとそれが原因で問題が起きてしまう」という。

シェティ氏とマルキアン氏

Facebookクリエイターのジェイ・シェティ氏はそんな問題に直面しかけたクリエイターのひとりだ。彼はFacebook上で2400万人のフォロワーを抱えているが、2019年のはじめ、短いあいだだったが、いつもよりも再生回数が低い時期があったという。彼は昨年7桁の収益をFacebookから得ているが、2019年初頭の彼は、このままではかなり収益が落ちてしまうと考えたという。しかし、その後しばらくして、これらの動画からの収益は上昇した。

シェティ氏にとってこの再生回数の減少は不安を生んだが、これがFacebookのみから所得を得ている人物であればもっと大きな懸念となっただろう。シェティ氏の場合は、Facebookに動画を投稿することに加えて、スピーカーとしての職も持っている。彼はオンライン・コーチングのビジネスを運営し、今年はポッドキャストをローンチして本も執筆中だ。また、Facebook動画からの収益は、これよりも低いことがあった。

シェティ氏が動画をFacebookにアップロードし始めたのは2017年のことだ。当時の彼はコンテンツからの収益は一切、得ていなかった。「100万回の再生回数もあったけれど、破産してしまうような状況まであと4カ月持つかどうか、というところだった」と、彼は言う。彼が動画マネタイゼーション・プログラムに参加したのは2018年前半のことだ。Facebook動画から収益を得ていなかった時期のことを振り返り、彼は「あれがあって本当に良かった」と語る。それによって広告収益に頼らずにお金を生むにはどうしたらよいか、を考えることになったからだ。

人気Facebookクリエイターであるマルキアン(Markian)氏も同じスタンスを取っている。彼は300万人のフォロワーを抱えているが、Facebookチャンネルに加えて、インスタグラム(instagram)やYouTubeへと多様化をしようとしている。「私は常に多様化について考えている、(ビジネスが)いつも自分のコントロールの外にあるからだ。CPMはいつでも変えられる可能性がある。オーディエンスも変わる。私の価値観も変わる」。マルキアン氏もまた、今年はじめ、動画のパフォーマンスに減少が見られたという。

Facebook動画にコミット

シェティ氏とマルキアン氏のようなクリエイターがFacebookの外へと多様化を図る一方で、Facebookから離れようとしているわけではない。むしろ、その逆だ。

今年初頭には、マルキアン氏はFacebook動画やプランのために、エディター、ライター、そしてプロデューサーを雇った。チームの大きさは2倍にする計画だ。チームを編成してからFacebookに投稿するビデオの数はすでに3倍になり、Facebookからの収益も「おそらく3倍になるだろう」と、彼は言う。

シェティ氏もまた、ビデオグラファーとエディターからなるチームを持っており、それによって1週間に1本の投稿だったのが、3本の動画投稿へと増えたとのことだ。「Facebookでコンテンツを作ることにコミットしているが、それによってさらに多くのチャンスが訪れることも理解している」と語った。

Tim Peterson(原文 / 訳:塚本 紺)