Facebookはあまりにも巨大だ。そのため、同社が善意で行った改変であっても、巻き添え被害に遭うところが出てくる。Facebookは6月28日(米国時間)、APIの変更を発表。記事が公開された後はリンクのメタデータ(見 […]
Facebookはあまりにも巨大だ。そのため、同社が善意で行った改変であっても、巻き添え被害に遭うところが出てくる。Facebookは6月28日(米国時間)、APIの変更を発表。記事が公開された後はリンクのメタデータ(見出しや説明文など)をカスタマイズできないようにした。Facebookによれば、変更の目的はフェイクニュースの拡散に対抗することにある。だが、オーディエンス開発に取り組む人たちにとって、今回の動きは愉快なものではない。
今回の変更によって、パブリッシャーがFacebookで特定のオーディエンスセグメントを狙うために重宝していた機能が制限される。変更前なら、オーディエンス開発担当者は、ひとつの記事を使って複数のユーザー層にアピールすることができた。ユーザー層に合わせて記事の見出しを変えることで、そのユーザー層のエンゲージメントとリーチを最大限に高めることができたのだ。たとえば、米大統領選挙の争点をまとめた記事に、ドナルド・トランプ氏に焦点を当てた見出しを付けて、共和党を支持する読者を狙う。次に、その同じ記事に、ヒラリー・クリントン氏に焦点を当てた見出しを付けて、民主党支持者を狙うといったようにだ(もちろん、順序を逆にしてもよい)。
「今回の変更は、オーディエンス開発担当者やソーシャルメディア担当チームにとって不安材料となっている。公開済みの記事に手を加えられる範囲が大幅に制限されるからだ。そうした行為は、ほとんどのパブリッシャーにとって、公開した記事をソーシャルメディアでプッシュするための標準的なワークフローになっている」と説明するのは、米テックメディア「ザ・ネクストウェブ(The Next Web)」のソーシャルメディア責任者、マット・ナバラ氏だ。
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クリックスルー率への影響
ただし、今回の発表は何の前触れもなく行われたものではない。Facebookは、2017年4月に行った開発者会議「F8」で、「Graph API」を刷新する意向を明らかにしていた。今回の改変は、これから数週間かけて実施されるさまざまな変更のひとつにすぎない。
パブリッシャーが特定のグループをターゲットにすることはいまも可能だが、見出しや記事のメタデータを、ターゲットグループごとに変えることはできなくなる。ただし、お金を払えばそうした機能を手に入れることはできる。サードパーティーのオーディエンスターゲティングツールを手がけるキーウィー(Keywee)で最高戦略責任者を務めるジャレド・ランスキー氏は、「Facebook Ads」を使えば、今後もクライアントは見出しを書き換え、その見出しをテストできると指摘する。
ランスキー氏によれば、特定のオーディエンスセグメントを狙うパブリッシャーにとって、記事の見出しは記事の中身と同じくらいクリックスルー率に影響を及ぼすという。
肯定的な関係者もいる
とはいえ、オーディエンス開発に取り組むすべての人が、今回のニュースに否定的な反応を見せているわけではない。「多くの同業者が恐れを抱いているが、私は正直なところ、Facebookの今回の試みは賢明だと思っている」と、米紙ボストン・グローブ(The Boston Globe)のオーディエンス開発担当ディレクターであるマット・カロリアン氏は語る。「今回の動きは、記事の見出しや写真がサードパーティーによって勝手に書き換えられないようにしたいと考えるパブリッシャーを支援するものだ。その点で建設的な取り組みといえる」。
実際、今回のFacebookの決定が厳しく受け止められている要因は、決定された内容の問題だけでなく、Facebookに対するフラストレーションが高まっていることもあるのかもしれない。Facebookはこのところ、パブリッシャーとのあいだで高まっている緊張を和らげるために注目すべき取り組みを行っている。それでも、Facebookがパブリッシャーとうまくコミュニケーションをとっていないという感覚は、いまも多くのパブリッシャーが共有している。
「Facebookによるパブリッシャーのサポートや情報の提供は改善されてきたと思う」と、ザ・ネクストウェブのナバラ氏は話す。「だが、大手のパブリッシャーや広告支出の多いところ以外は、意思の疎通が十分にとれているとは思えないだろう」。
Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)