2018年に「転換点」を迎える、Facebookの動画戦略

2017年2月、FacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏は、投資家との収支報告会談のなかで、同社が動画に大きな投資をしている理由を概説し、「動画はメガトレンドだと思う。系列アプリで動画を最優先していくのはそれが理由だ」と語った

ザッカーバーグ氏の言葉どおり、Facebookは、動画に対する投資を2017年を通して増やしてきた。パブリッシャーなどの動画制作者に資金を支払ってコンテンツを制作しはじめた2016年よりも多額の予算を注いで、YouTubeやNetflixのような既存の大手企業に対抗できる動画サイトになった。ベライゾン(Verizon)が自社ストリーミングサービスのゴー90(Go90)に投資しはじめた頃を彷彿とさせる勢いで、Facebookは多くのオリジナルコンテンツを購入して、YouTube風の新しい動画視聴セクションWatch(ウォッチ)に投入した。

だが、ベライゾンがゴー90から教訓を得て、Facebook自身もライブ動画の実現失敗から学んだように、何かを構築するからといって、視聴者が大挙して利用するとは限らない。パブリッシャー関係の複数の情報筋によると、多くのWatch番組は視聴回数を伸ばし、業界はFacebookの3秒間の視聴指標のおかげで慣れてきたが、こうした視聴の大多数はまだニュースフィード内で行われているという。FacebookはユーザーにWatchにアクセスしてほしいと思っているが、ユーザーはそうした希望に応えておらず、Facebookは、Watchへの予算増額と、さらに大がかりなプロジェクトの推進を迫られてきた。

だが、Facebookには投入する資金があり、動画に関する夢を実現するために、2018年に10億ドル(約1100億円)を費やす計画だと報じられているものの、予算を掛けるだけでは、動画ストリーミングプラットフォームは構築されない。ザッカーバーグ氏は、Facebookが将来、動画最優先の企業になることを夢見ているのかもしれないが、2018年に動画への取り組みがどのような成果を上げるかが、同社がどういったタイプの動画会社になるかを大いに左右するだろう。

FacebookはYouTube、またはNetflixになろうとしているのか?

Facebookは、Watch向けライセンス番組を開始したときには、ショートフォームの動画シリーズを主に求めていた。ザッカーバーグ氏自身が、2月の収支報告時にそう認めている。Facebookは、何本の番組に出資したか明らかにするのを避けたが、ATTNやBuzzFeed、グループ・ナイン・メディア(Group Nine Media)、マッシャブル(Mashable)、Vox Mediaなどのパートナーに、100本を優に超える番組の制作を委託してきた。こうした番組の大多数は、大まかに分ければ、台本なしのライフスタイルジャンルに分類される。制作費が安く、YouTube全体で見られるフォーマットだ。

Facebookの場合は、そうしたアプローチはうまくいっておらず、現在、動画の販売元に対して、2018年はもっと予算を掛けた、さらに大がかりな番組を求めていると告げている

「ニュースフィードから離れて、YouTube風の動画ネットワークを構築するのが目標なのは非常に明白だったが、失敗に終わった」と、Watchのパートナーであるパブリッシャーの幹部は語る。「質の高い動画を制作する術を知らない多くの人たちと作業していると打ち明けられた。だからいまは、『Facebookの看板を掲げてYouTube風にするのではなく、Facebookの看板を掲げてNetflix風にする』のが、彼らの目標だ。だが、そのほうが、成功するのがはるかに困難な課題であり、費用ももっと掛かる」

Facebookがこの分野で成功するかどうかは、ユーザーにPCやスマートフォンで定期的にWatchセクションを訪問させることよりも、人々を説得して、インターネット接続されたTV機器向けのFacebookアプリを起動させることにかかっている。人々はまだ、TVサイズの画面でTV番組を視聴したいと考えており、いまのところ、Facebookにはそうしたことを期待していない。

Watchパートナーは次のように語る。「そういうことが可能な状態にはほど遠い。だが確かに、OTTをサポートしてHuluやNetflixのようなサービスの次期バージョンになりうる動画モデルを考えだそうとしているように思える」。

だが、Facebookはどう関与しているのか?

Facebookはすでに、永久に番組へ出資したいわけではないと述べている。ザッカーバーグ氏が動画への野心を話した前述の投資家との会談で、Facebookの最高財務責任者(CFO)であるデビッド・ウェーナー氏は、最終的にWatchコンテンツの収益配分モデルへ移行したいと強調した。ウォールストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)の昨秋の報道によると、Facebookは、2018年を通してコンテンツに最大10億ドル(約1100億円)を支出する用意があるが、2019年以降も番組に支出し続けるかどうかは、まだはっきりしないという。

当然ながら、多くのWatchパートナーは、Facebookがコンテンツへの出資を続けることを希望する旨を表明したが、変更される可能性があると認めてもいる。これについては、Facebookのニュースフィードとライブ動画のライセンス契約に起きたことを見ればわかる

こうした動きを受け、Facebookから完全に手を引くことができないが、Facebookに公開するコンテンツの削減を少なくとも検討しているパブリッシャーのあいだでは、反感が高まっている。ライブ動画の契約を結んでいるトップクラスのニュースパブリッシャーのある幹部によると、系列のパブリッシャーは2018年にFacebookに公開するコンテンツを減らす計画だという。大手TVメディア企業の別の幹部は、傘下にあるふたつのデジタルブランド以外では、Facebookについてあまり考えていないと語る。

「Facebookは、実際にパブリッシャーの役に立つ製品をローンチできることを証明しなければならない。Facebook向けコンテンツで稼ぐべき金額を稼いでいないなら、あるいは、Facebookに公開するせいで、所有・運営するプラットフォームから得る価値が下がるなら、Facebookに公開する理由は何か?」とTVメディア企業の幹部は指摘する。

2018年にFacebook動画はどうなるのか

Facebookは結局のところ、動画事業を手がけているだろう。だが、パブリッシャーがパートナーであるとは限らない。たとえば、Facebookのスポーツ中継への関心を例に取ろう。同社は、スポーツ中継の配信に喜んで数十億ドル(数千億円)費やすと報じられている。NFL(全米フットボールリーグ)やNBA(米プロバスケットボール協会)との契約を勝ち取れば、プレミアム料金で広告を販売できる、質の高い動画コンテンツを手にすることになる――たとえ、それが独占契約でなくても(Facebookが独自のスタジオを立ち上げたり放送事業を開始したりするよりも、このほうがはるかに可能性が高い)。

そうした契約から取り残されるのは、パブリッシャーだ。

そのため、現在、Facebook向けの番組を制作している多くのパブリッシャーやスタジオは、2018年以降もFacebookがオリジナルコンテンツを購入し続けることを願っている。だが、その場合でも、Facebookは、1エピソードあたり100万ドル(1億円)単位で多額の費用が掛かるプロジェクトを求めているので、動画制作者はジレンマに直面するだろう。Facebookに販売して、制作者が番組で稼げる制作マージンで満足し続けるのか? それとも、(番組の販売先があれば)ほかへの販売を検討するのか?

Facebookに番組を販売したことがあるハリウッドのスタジオのベテラン幹部は、次のように語る。「これは、一夜にして起こるわけではない。何年も掛かり、Facebookが数十億ドルを喜んで支出する必要があるだろう。Facebookはそれに気づいており、同社の幹部から聞いた話では、その気がなくなるまではそうすると思う」。

あらゆる兆候が、Facebookが動画広告で儲けられる動画事業を優先することを指し示している。これまで同社は、番組に対する広告販売をメディア企業に認めてこなかった。大手エージェンシーのある広告バイヤーによると、Facebookはそのバイヤーに、Watch内の各番組やパブリッシャーを買い付ける権限を与えず、その代わりに支出全体の増額を求め、その一部はWatchに配分されることになっていたという。

最近の報道から、Facebookは、Watch内の広告枠に対する管理の手を緩める気があることがうかがえる。また、比較的大手のTVネットワークやスタジオの一部は、Facebook向けに制作する番組をめぐって、何らかの形の所有権を要求するだけの力がある。

だが、それがうまくいくのは、人々がFacebookにアクセスしてTVを視聴する場合だけだ。

「このプラットフォームに20分の番組があることを人々に知ってもらうには、長い道のりがある。ニュースフィードをスクロールして、いたずら動画を視聴するのとは、わけが違う」と、ハリウッドの幹部は語った。

Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)