Facebookが抱える効果測定の悩みは、解決には程遠いのかもしれない。過去6カ月にわたり、一連の測定ミスを告白したFacebookは、広告バイヤーからの圧力を受け、第3者の監査機関に効果測定を委託するようになった。そこでエージェンシー9社それぞれの幹部に話を聞いてみた。
Facebookが抱える効果測定の悩みは、解決にはほど遠いのかもしれない。
過去6カ月にわたり、一連の測定ミスを告白したFacebookは、広告バイヤーからの圧力を受け、第3者の監査機関に効果測定を委託するようになった。
そこで、エージェンシー9社それぞれの幹部に話を聞いてみた。数カ月前から、Facebookの新たな監査機能を利用しはじめた、これらのエージェンシーでは、Facebook上の動画キャンペーンのビューアビリティが20%、高くても30%というのを知って驚愕しているという。デジタルメディアの品質評価をおこなうインテグラル・アド・サイエンス(Integral Ad Science)によると、これは一般のサイトにおける動画広告のビューアビリティ平均値(約50%といわれる)をはるかに下回るという。
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「全体的に一貫性がない」
Facebookとの関係を損なう恐れがあるとして、匿名を条件に話を聞いたメディアエージェンシーの幹部は、この数値に対して懸念をもっている。ブランドキャンペーン向け予算を再検討する必要性について言及した幹部もいた。あるメディアエージェンシー幹部は、「我々はブランディングキャンペーンのビューアブルインプレッションごとにコストを明確に見極め、プランニングを適切に見直していく」と語った。
一部のエージェンシー幹部は、数値が20%よりもさらに低いのではと疑念を抱いている。さらに、モート(Moat)やインテグラル・アド・サイエンスといった効果検証企業は、効果数値の正確性を保証できるほど、迅速にFacebookにアクセスできているのだろうか、と疑問視している。別のエージェンシー幹部は「これは大きな問題だ。広告主は正当な分け前を得ないまま、予算をとられている」と話した。
動画の測定結果によって、広告全般の数値に一貫性が欠如していることがわかった、と話すものもいた。「Facebookが発表する数値は、MRC(Media Rating Council:メディア調査機関を評価するアメリカの業界団体)の基準の5倍になることもあれば、5分の1になることもある。発表される数値が過小もしくは過大になる際の明確なパターンがない。全体的に一貫性がないことが懸念される」と述べた。
Facebookはこの件に関して、コメントの公表を控えた。
ビューアビリティ問題
MRCが設定した動画のビューアビリティの業界基準は、「動画広告枠のピクセルの50%以上が2秒間連続して視認可能となる」ものとなっている。また、生活用品メーカーのユニリーバ(Unilever)および広告エージェンシーのグループM(GroupM)がパートナーに要求している基準は、動画広告枠が100%見える位置にあって、音声あり(自動再生なし)で尺の半分は視聴されるという、さらに厳しいものとなっている。
ビューアビリティにはふたつの要素がある。ユーザーが広告を見ているか、それと、広告がWebサイトやアプリで視認可能か、というものだ。ユーザーによる視認性という点ではFacebookのスコアは99%と高い。問題は動画再生率だ。あるメディアエージェンシー幹部によると、動画再生率はわずか22%にとどまり、そのエージェンシーでは全社的に幹部が頭を悩ませているという。
Facebookのディスプレイ広告のビューアビリティ問題が表面化したのは2016年12月。野村證券主催の投資フォーラムでの、インターネット調査企業オムニコム(Omnicom)のデジタル広告トレーディングデスク、アキュエン(Accuen)のディレクター、ドルー・ヒューニング氏の発言がきっかけだ。彼は、同エージェンシーがテストした結果、Facebookのディスプレイ広告ビューアビリティが業界最低基準(広告枠のピクセルの50%以上をブラウザウィンドウで1秒以上連続表示されること)を満たしていなかったと言及したのだ。ヒューニング氏は、すべてがユーザーの目に触れるシステムを構築した点についてはFacebookを評価したものの、ユーザー、とくにモバイルユーザーは、ニュースフィードをすぐにスクロールしてしまう、と話した。
現在、同じ問題が動画にもあることが知られており、広告主はFacebookなどのプラットフォームに割り当てられている支出額が妥当なのか、という疑問に直面している。リサーチ会社のeマーケター(eMarketer)によると、アメリカではマーケターの3分の2以上がFacebookに動画広告を掲載しているという。
混乱する関係各社の反応
エージェンシーの幹部とその周りでは、ビューアビリティの落ち込みに対して異なる反応をみせた。ある幹部は、広告主たちが力を合わせてこれらの測定値についてFacebookに詰め寄る必要があると述べた。
エントロピーコンサルティング(Entropy Consulting)の創始者で、ユニリーバの元ディレクター、アレックス・テート氏は「さまざまなメディアのタイプのメリットについて、広告主に提示されるメッセージの数はおびただしく、その多くは混乱を招いている場合がある」と話す。「しっかり情報を整理し、事実に基づいたプランニングを行なうなら、第3者検証が不可欠だ。そうすればメディアオーナーが、効果を自己測定するようなこともなくなり、さらにオーディオビジュアルに対して中立性のある動画プランニングへの論理的なアプローチをとることが可能となる」。
そのほかは皆、諦めの念を示した。あるエージェンシー幹部は、Facebookのビューアビリティについては掘り下げていないと話した。クライアントはそれを求めていない、もしくは余計な調査費用がかかることを望んでいないのだという。「第3者機関が広告のビューアビリティを明らかにしたとして、だから何ができるのか?」と話す幹部もいる。「そうなればFacebookやSNSへの投資をやめるしかない。しかし、いまSNSがデジタル戦略で果たす役割は非常に大きい。ブランドがそんな決定を下すのは極めてハードルが高いだろう」と語った。
Facebookのようなプラットフォームで、高いビューアビリティを期待するのは甘い考えで、キャンペーンの成果を図る最良の手段がビューアビリティだとは限らないという意見もある。
また別のエージェンシー幹部は「この数値は低いのかもしれない。しかし実のところ、これはFacebookがプラットフォームとして、いかに機能しているかを反映しているに過ぎない」と語った。「それを利用するうえでの最善策は、何かしらの手段で多くのオーディエンスにリーチすることだ。ビューアビリティに固執するなら、視聴回数が保証される方法で(広告枠を)購入すればよい。そうすればその数字は改善する。ただ、ビジネスの成績は悪化する。インプレッションの最大化のみを軸に購入するなら、おそらく15~20%、さらに30%程度までビューアビリティを得られるだろう。数字はひどく見えるが、現実ではまだまだうまく機能する」。
Facebookが出した声明文
Facebookは後ほど、次の声明文を発表した。「広告の価値はバイナリ(2進法)ではなく、その広告が画面に映されたその瞬間に生み出されるものであると考えている。独立機関であるフォースマーシュグループ(Fors Marsh Group)の調査によると、非常に多くの人々がたった0.25秒広告を見ただけでそのニュースフィードの内容を思い出すことができるとの統計結果が出ているとのことだ。そして、最新のニールセン(Nielsen)の研究では、ブランドを思い出す場合の38%、ブランドを認識する場合の23%、購買意欲が生まれた場合の25%が2秒以下の動画インプレッションによって促進されていることが示された。これは、モバイルデバイス上とニュースフィードではコンテンツの受け取り方が異なるためだ。ニュースフィードを素早くスクロールすると、広告にさらされることになる。つまり、その時間は短くとも価値を生み出しているということだ」とFacebook代表のトムチャンイック氏は述べた。
Jessica Davies (原文 / 翻訳:Conyac)