Facebookは、クリエイターがフォロワーから直接収益を得られる「ファンサブスクリプション(fan subscription)」サービスを提供する。2018年3月に開始された同サービスには、1000人のクリエイターがいて、まだベータテスト中だ。現在は、サブスク収益の100%がクリエイターのものになっている。
Facebookは、クリエイターにプラットフォームを利用して、サブスクリプションを伸ばしてほしいと思っている。だが、一部のクリエイターは話に乗ろうとしていない。
Facebookは、サブスクリプション収益の一部をFacebookに分配する代わりに、クリエイターがフォロワーから直接収益を得られる「ファンサブスクリプション(fan subscription)」サービスを提供する。2018年3月に開始されたファンサブスクリプションには、1000人のクリエイターがいて、まだベータテスト中だと、Facebookの広報担当者は述べている。現在は、サブスクリプション収益の100%がクリエイターのものになっている。だが、米DIGIDAYが入手したクリエイター向けサービス利用規約でFacebookが概説しているように、それが近々変わって、Facebookがサブスクリプション収益の30%を受け取る可能性がある。
憤るクリエイター
収益の取り分が、ファンサブスクリプションサービスをめぐる論争の主要なポイントだ。風刺サイト「ザ・ハード・タイムズ(The Hard Times)」の開設者であるマット・セインカム氏は、2月25日にTwitterのスレッドでこの規約への不満を表明した。Facebookはセインカム氏に接触し、サービスを早期に利用できるようにしたが、同氏は関心がないと述べている。
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「彼らは、『友人や家族』にフォーカスすることに決め、我々のトラフィックを一夜にして70%減少させた。そして、閲覧するためにすでにサインアップした人々向けの投稿を『あと押しする』代金を求めている。チーム全体が、Facebookで創造的なものをこれまでに二度も構築したという考えをただ笑っていた。彼らはまず、我々の信頼を取り戻すために何か行う必要がある。『収益を100%手にすることができる』という言葉で誘い込んでから、『我々が最大30%もらうかもしれない』と言わないようにすることだ。冗談みたいな話だ」と、セインカム氏はメールに書いている。
セインカム氏が米DIGIDAYに語ったところでは、Facebookが接触して話を持ちかけてきた理由はわからなかったが、おそらくページのゲームとのつながりに関係があると思ったという。
「最大のページではない。ザ・ハード・タイムズのページもあり、そちらは『いいね!』が25万件を超えている。Facebookが『ハード・ドライブ(Hard Drive)』をターゲットにしたのはおそらく、それまで配信が統合されていて、ストリームを同期してきたゲームのページだからだと思う。ゲーム関係に力を注いでいるようだ」と、セインカム氏はメールに書いている。
ゲーム関連がメイン
Facebookの広報担当者によると、プログラムに参加しているクリエイターの多くはゲームに携わっているという。プログラムについてFacebookと話したクリエイターも、今のところ、ゲームを大いに重視していると述べている。

Image courtesy of Matt Saincome
自身のチームは、所有・運営しているサイトの広告から収益の大部分を得ていると、セインカム氏は語る。
「Facebookが以前のようにオーガニックでコンテンツを広めさせないと決めたときに、我々は多くの収益を失い、その穴埋めのために懸命に働かなければならなかった。我々は小規模なDIY型企業で、Facebookは世界最大規模の企業だ。Facebookはたえず我々の取り分を奪おうとする。オーディエンスとの関係をFacebookに再び支配させるなんてとんでもない。金やサブスクリプションが絡んでいるとなれば、なおさらだ」と、セインカム氏は語る。
ファンサブスクリプションは、YouTubeやAmazonのTwitch(ツイッチ)、Snapchat(スナップチャット)、TikTok(ティックトック)と競争するなかで動画クリエイターをプラットフォームに誘導しようとするFacebookの最新の取り組みだ。
競合パトレオンの動き
Facebookはファンサブスクリプションで、パトレオン(Patreon)とも競合している。パトレオンは、特定の配信プラットフォームに縛られず、むしろクリエイターが会員プログラムを管理して5%の取り分を受け取る手助けをしている。ザ・ハード・タイムズはパトレオンを利用して、新しいポッドキャストネットワークへの資金支援に手を貸していると、セインカム氏は語る。パトレオンのアカウントへの支援者は、ザ・ハード・タイムズのサイトの記事とポッドキャストの広告のないエピソードに名前と顔を載せてもらえる。
セインカム氏のようなクリエイターはパトレオンをFacebookのプログラムと比較しているが、パトレオンの製品担当シニアバイスプレジデントであるワイアット・ジェンキンス氏は、Facebookを主要なライバルと見なしていないと述べている。
「我々とは、ビジネスモデルがかなり異なる。Facebookは、広告主とエンドユーザー、そして最後にクリエイターという3つの構成要素がある。我々がモデルを構築するときに支配権を持つのはクリエイターだけだ。FacebookやYouTubeは、どれだけの機能を組み込もうと、広告収益を最優先するだろう」と、ジェンキンス氏は指摘する。

Image courtesy of Matt Saincome
いまはまだベータ版
Facebookは、ベータ版プログラムでの一部クリエイターの成功を宣伝してきた。たとえば、英国のクリエイター、LadBabyの事例について書いている。Facebookは2月、このプログラムを欧州や中東、アフリカに地域初の「クリエイター・デー」の最中に拡大した。Facebookはまだ、ベータテスト段階が終了して正式版になる時期を発表していない。広報担当者によると、年内の可能性がもっとも高いという。
Facebookはまだ、サービスの開始時に最終的な広告収益の配分をどうするか決定していないが、業界のほかのサービスに準拠し、クリエイターが収益の大部分を確保し続けると、広報担当者は述べている。ちなみに、Twitchの取り分はサブスクリプションの50%で、YouTubeは広告収益の45%を受け取る。YouTubeは、YouTubeプレミアム(YouTube Premium)でもクリエイターとサブスクリプション収益を分かち合っているが、このプログラムは広告支援型コンテンツに有利になるように変更されつつある。
Facebookはベータ版プログラムに参加しているクリエイターに対して、サブスクライバーから受け取る収益は、収益分配の対象にはならない、対象になるのは新規サブスクライバーからの収益だけだと述べてきたと、広報担当者はいう。だが、米DIGIDAYが調べ直したところ、そのことは契約に明記されていない。
動じないパトレオン
一方、パトレオンはいまのところ、現在の割合を変更する計画はない。
「クリエイターに配分される既存の割合の変更は、今後の計画にはない。我々には新しいサービスがある。人々が利用できる新サービスを提供するために、商事会社のキット(Kit)を買収した」と、ジェンキンス氏は語った。
Kerry Flynn(原文 / 訳:ガリレオ)