Facebookが落胆し、ロシアが注目されている。Facebookがリーチ数を多く見積もって公表していたというニュースに引き続き、先週水曜日、同社はロシアのトロールファーム(ネットで故意に偽情報を流し、荒らし行為を行なう組織)が2015年6月から2017年5月までのあいだに、同プラットフォームに10万ドル(約1100万円)相当の政治的な広告を掲載し、大統領選挙中のアメリカの政治情勢に影響を与えていたことを認めた。
Facebookが落胆し、ロシアが注目されている。Facebookがリーチ数を多く見積もって公表していたというニュースに引き続き、同社は9月6日、ロシアのトロールファーム(ネットで故意に偽情報を流し、荒らし行為を行なう組織)が2015年6月から2017年5月までのあいだに、同プラットフォームへ10万ドル(約1100万円)相当の政治的な広告を掲載し、大統領選挙中のアメリカの政治情勢に影響を与えていたことを認めた。
このふたつのつまずきは、Facebook全体の広告ビジネスから見るとマイナーなつまずきにすぎない。しかし、ロシアの偽アカウントを運用していたトロールファームの行為は注目すべきであり、できるだけ多くの広告主を獲得したい広告プラットフォームは脅威に直面している。
ロシアの工作員はおそらくエージェンシーを介さず、Facebookのセルフサービスの広告購入ツールを使ったのだろうと、匿名のアドバイヤーは語る。少額での広告購入のためにバイヤーが必要なのはクレジットカードのみだ。キャンペーンが小規模な場合、Facebook専業エージェンシーに依頼することなく、一般のFacebookアカウントのeメールアドレスのみ活用していたのだろうと匿名のバイヤーは述べた。Facebookはこれについてコメントを拒否している。
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同プラットフォームに提出された広告クリエイティブのほとんどは、数時間以内に承認される。簡易的な広告の設定システムによって、Facebookは大手ブランドだけでなく、中小企業からも広告費を得ることが可能で、それがFacebookの広告ビジネスの成長要因のひとつとなっている。
政治広告を大量に購入できたカラクリ
セルフサービスの広告ツールのおかげで、トロールファームはわずかに違うクリエイティブを何百も提出することができたと、エピックシグナル(Epic Signal)創設者のブレンダン・ガーン氏は語る。類似したクリエイティブを大量に提出することで、Facebookに発見されることなくA/Bテストを行なうことができたのだ。
たとえば、Facebookの広告ポリシーはショッキングな画像や人種や性的指向など、個人の特性に対する差別を禁止している。大量のクリエイティブを投入してA/Bテストをすることによって、トロールファームはどんなクリエイティブがポリシーに違反するのかしないのかのボーダーラインを見極められ、スイートスポットを探し出すことができる。また、類似した多様な広告のなかに、プロパガンダを含むクリエイティブを差し込められる可能性も高まる。
発見されるのを避けるため、工作員はバーチャルプライベートネットワークでIPアドレスを隠すことで個人の特定を防ぐことができると、マーケティングテクノロジーアドバイザーのネイト・エリオット氏は語る。VPNを使うことでコンピューターがFacebookアドを購入して配信しても、特定されないようになる。そうすることで、同じビル内においてオペレートすることが可能になる。
無数の偽アカウントが隠れ蓑に
Facebookによると、約1100万円分の政治広告の購入は470の偽Facebookアカウントを通して2年間行われていた。これは言い換えれば、それぞれのアカウントで購入された額が少額なため、四半期で約1兆円規模を稼ぐFacebookにとっては気にも留めなかった額といえる。
Facebookは間違った情報を発信している唯一のプラットフォームではない。Twitterもロシアの動向についての分析レポートを議会に提出する予定だというニュースもある。
エリオット氏は「通常ならば、Facebookの広告クオリティのチームはこれらの広告が存在していたことすら知らないだろう」と述べる。
Facebookへの厳しい反応
ブランドウォッチによると、Facebookの声明では、5万5000人以上がこのスキャンダルに対してコメントし、その80%以上がFacebookに対してのネガティブなコメントだった。
コメントでは、現状では偽アカウントを防ぐことができないFacebookへの憤り、調査に時間がかかってしまったこと、そしてマーク・ザッカーバーグ氏が、大統領選挙後にFacebook上のフェイクニュースが候補者の選挙活動に影響を及ぼしたのではないかという意見を一蹴していたことに対する憤りであった。
あるTwitterのユーザーは、「恥を知れFacebook」とツイート。「意図的に誤った情報をアメリカ国民に向けて発信していたにも関わらず、その事実を拒否し続けている」と、続けてツイートした。
しかしブランドは崩れない?
しかし、こうしたネガティブなコメントにも関わらず、Facebookのブランドは損なわれていないとブランディングの専門家は語る。
「最終的に、Facebookのブランドはダメージを受けることはないだろう」と、ブランディングエージェンシーのランダー(Landor)でグローバルマーケティングディレクターを務めるトレバー・ウェイド氏は述べる。「もし何かあるとしても、ブランドはいい影響を受けるはずだ。なぜなら、Facebookはプラットフォームのサービス向上と透明性のために努力しているからだ」。
「ブランドの視点から見て、Facebookが公式の声明をブログで公開したことは良い決断だった」と、ホークメディア(Hawke Media)のCEO兼ファウンダーのエリク・ハバーマン氏はいう。「理由を知っている人であれば、Facebookが一度にすべてをコントロールすることは不可能であることは理解するだろう」。
先手を打って取り組みを強化
昨年、広告主とユーザーのために透明性を高めるために、Facebookは積極的に広告効果測定における自社のミスを開示し、偽アカウントへの対処を更新してきた。
4月、同社は大統領選挙に影響を及ぼすような活動が見られるFacebookアカウントに関するホワイトペーパーを公開した。そして9月6日、大統領選に関して、ロシアとの関係を調査する元FBI長官で特別検査官ロバート・ミューラー氏に、発覚した偽アカウントを含むすべてのデータを明け渡した。
「Facebookが積極的に情報を公にして早期の問題解決に取り組む姿勢を見せている限り、消費者は満足するだろう」と、カンターフューチャー(Kantar Future)の取締役会長、J・ウォーカー・スミス氏は述べる。
コミュニケーション企業、レビック(Levick)のCEO、リチャード・レビック氏は、Facebookがロシアでの選挙に関わる広告に対して、議会のメンバーたちと面会を行っているということは、同社がプラットフォームとして成長していることのサインであり、プラットフォーム各社が言明することをこれまで拒否してきた「メディアパワーハウス」としての立場を理解しはじめたということだろう、と語った。
「これはいままでとはちがう態度だ。自由放任主義から、街に保安官がいる状態にきた(中立的立場として統制をとる立場をわきまえるようになった)ということだ」。