Facebook の パブリッシャー支援、その良い点・悪い点 : 数百億ドル規模の投資への反応

Facebookは、これまでにパブリッシャーを支援するため、さまざまな取り組みを行ってきたと強調している。なかでも対象として取り上げられることが多いのが、ローカルニュースを報道するパブリッシャーについてだ。だが同時に、パブリッシャーの役員たちはこうした取り組みが業界の救世主となるほどの役目は果たせないとも感じている。

Facebookは3月18日に、ローカルニュースに関するふたつの取り組みを発表した。Facebookジャーナリズム・プロジェクト・コミュニティ・ネットワークと名付けられた取り組みでは、パブリッシャーがコミュニティを作り、オーディエンスと直接的な関係を築くための相互の情報共有を支援する。3月19日にはおよそ100のパブリッシャーや研究者、学者らがデンバーで2日間にわたって開催されるカンファレンスに集った。テーマはローカルニュースやサブスクリプション、会員やオーディエンスの拡大で、さまざまなケーススタディが行われる。カンファレンスではたとえばシアトル・タイムズ(The Seattle Times)が、Facebook外で実施するサブスクリプション促進について話を行った。

Facebookの率直な姿勢

Facebookはこれまで何年にもわたってパブリッシャーに対しFacebookの新商品や新機能を試すように呼びかけてきたが、最近はより直接的に、Facebookのニュースフィードをはじめとする機能にあまり頼りすぎないようにと伝えるようになってきている。

Facebookはローカルニュースへの投資を行ってきたが、これは事業としての投資と慈善寄付というふたつの側面を持っており、前述のメッセージを反映させた投資となっている。またFacebookはこれと同様にFacebook Watch(ウォッチ)のニュース番組についてもテレビ局と同じアプローチを行っており、昨年Facebook Watchに関連して投資したニュース番組のうち、今年も継続する番組は全体のわずか3分の1とする予定をパートナーである番組制作企業に対し伝えている。

Facebookのこうした率直な姿勢は、以前のパブリッシャーとの向き合い方とは対照的だ。以前はパブリッシャーに対し、オーディエンスを増やすための新商品を利用させようとするのが常だった。オーディエンス開発コンサルティング会社、トゥエンティファースト・デジタル(Twenty-First Digital)の創設者であるメリッサ・チョウニング氏も「Facebookからの連絡にいつも『Facebookはいま、こんなことに取り組んでいる』と書いてあって、まるで文章のオチのようだと指摘するパブリッシャーもいた」と指摘する。

慈善事業のようなプログラム

同時に、Facebookが行っている、まるで慈善事業のようなプログラムは、良い結果をもたらしたものもあれば、そうでもないものも存在する。Facebookが提供するサブスクリプションツールに対するパブリッシャー各社の評価は「普通」だ。だが、Facebookが実施したアクセラレータープログラムはシアトル・タイムズや、ミシガン州のローカルニュースを報道するNPOであるブリッジ・マガジン(The Bridge Magazine)といった参加企業から、絶賛を受けている。

絶賛の要因のひとつに支援金を無償提供している点も挙げられる。このアクセラレータープログラムの参加企業は12週間のプログラムの最後に支援金を受け取り、プログラムで学んだ内容を実践するために使用できる。

レンフェスト・インスティテュート(The Lenfest Institute)でCEO兼エグゼクティブ・ディレクターを務めるジム・フリードリッヒ氏は、支援金をFacebookに使った企業は少ないと明かす。同氏によると大半の企業はオーディエンスとサブスクリプションを獲得するためFacebook広告には少額を使ったのみで、Googleへの投資額のほうが大きい参加企業すらあったという。

「広告マネージャーは優秀だ」

現在、Facebookについて「価格が右肩上がりとはなっているが、カスタマーへのターゲティングにおいては効果的な存在」とマーケターと同じような見解を持つパブリッシャーは多い。「いまFacebookでゼロからオーディエンスを獲得しようとしてもうまくいかない」と考えるチョウニング氏も「だがFacebookの広告マネージャーは非常に優秀だ」と指摘する。

Facebookをパフォーマンス広告のチャネルとしてのみ活用したくはないパブリッシャーも存在しており、Facebook上でのオーディエンスとのつながりが持つ価値について把握しようとつとめるパブリッシャーも多い。

ローカルニュースを報道するスタートアップのウェアバイ・ユーエス(Whereby.US.)の共同創設者であるクリス・ソファー氏は次のように指摘している。「当社はこれまで、トラフィックのコンバージョン以外に価値を測定する方法は何かを模索してきた。生産的なコンバージョンの価値はどのように測定できるのか? これまでメディアはそうした側面を十分に捉えきれていなかった」。

パブリッシャーにとって渡りに船

Facebookによる慈善的な取り組みはほかにも存在する。Facebookは、ローカルニュースのコミュニティ創設の取り組みを行いたいと考えるパブリッシャーの支援金要請を受け入れていく構えを見せている。レンフェスト・インスティテュートがこうした提案の評価を支援し、Facebookが支援金の費用を支払う。

こうした取り組みはFacebookが今後数年かけて作ると確約したローカルニュースに関する数百億ドル規模の投資計画の一部だ。Facebookによる投資は、Facebookが支配するデジタル広告市場への依存を減らし、収益源を多様化することを試みてきたパブリッシャーにとっては渡りに船だ。

サブスクリプションや会員の分野におけるアクセラレータープログラムなど、Facebookによるいくぶんか利他的な投資は参加企業から好評だ。スピリテッド・メディア(Spirited Media)のCEO、ジム・ブレイディ氏は「プログラムから帰ってきた社員は4人とも目からうろこが落ちるような発見の連続だったと言っていた」と明かす。

データとアルゴリズムの問題

だが、こうした新たな投資によって、Facebookが破壊したメディアのエコシステムに対して負う重大な責任をすべて果たしたわけではないと指摘する観測筋も存在する。

パブリッシャー2000社が所属する業界団体、ニュースメディア連合(News Media Alliance)でCEOを務めるデイビッド・シャバーン氏は「Facebookのアクセラレータープログラムはもちろん応援するし、どの支援金も良い取り組みだと思う。だが、それが答えになるかといえばそうではない」と指摘し、次のように述べた。「事業支援のために業界と本当に協力したいのであれば、Facebookは収益をもっとパブリッシャーとも共有し、データをいまよりも共有し、アルゴリズムを安定させるべきだ。そのほうが慈善活動よりもよっぽどパブリッシャーのためになるだろう」。

MAX WILLENS(原文 / 訳:SI Japan)