ソーシャルメディアをスクロールしながら読むとき、はたして消費者は広告を見ているのだろうか? 広告がコンテンツと競い合う環境のなか、企業は自ら出稿した広告がどれほどのインパクトを持っているかを知りたがっている。
いま広告主がプラットフォーム側に求めているのは、いかにビュー(閲覧)をカウントするのかという明確な定義だ。このプレッシャーに対して、媒体社の対応は分かれているが、特に広告売上を伸ばしているFacebookの定義づけに注目が集まっている。
Facebookは2015年9月17日、米国での新しいインプレッション規定を発表した。それによれば、画面に広告の全体(100%)が映し出されば、1インプレッションとしてカウントされ、料金が発生するという。
ソーシャルメディアをスクロールしながら読むとき、はたして消費者は広告を見ているのだろうか? 広告がコンテンツと競い合う環境のなか、企業は自ら出稿した広告がどれほどのインパクトを持っているかを知りたがっている。
いま広告主がプラットフォーム側に求めているのは、いかにビュー(閲覧)をカウントするのかという明確な定義だ。このプレッシャーに対して、媒体社の対応は分かれているが、特に広告売上を伸ばしているFacebookの定義づけに注目が集まっている。
広告枠が100%画面上に表示されたら1インプ
Facebookは2015年9月17日、米国での新しいインプレッション規定を発表した。それによれば、画面に広告の全体(100%)が映し出されば、1インプレッションとしてカウントされ、料金が発生するという。
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上記緑色部分のように広告枠が100%画面上に表示されると、1インプレッション(表示)とカウントされる。たとえ、スクロール操作などで、ゼロコンマ数秒しか表示されていなかったとしても、1インプレッションになる。出典:Facebook for buisness
広告主にとって、この新たな定義は自ら出稿した広告が閲覧される保証となる。しかし、Facebookは時間を要素として考えておらず、読者が記事を素早くスクロールして、広告を認知したかどうかあやふやな場合でも、閲覧されたとカウントするという。
コンマ数秒のビューに価値はあるか
広告業界で働く役員たちの一部は、このFacebookのインプレッション定義が業界を満足させられるのか懐疑的だ。これまでの広告業界は、動画広告が閲覧されたとカウントされるまでの最低秒数の設定を求めていた。
「人々がコンマ数秒でも広告を認識できるとは笑ってしまう」と、匿名を条件に話を聞かせてくれた広告代理店の役員は語る。「確かに、莫大な予算があり、名が知られている企業の広告であれば、ゼロコンマ数秒の表示でも認知は可能だろう。しかし、たったコンマ数秒しか認識されないのであれば、広告のメッセージは本当に伝わるのだろうか?」
大手広告代理店WPPや大口スポンサーの食品大手ケロッグ、生活用品大手ユニリーバも、Facebook動画広告の「ビューアビリティ(Viewability:表示された広告が実際に目視可能であった回数または割合)」に苦言を呈していた。その基準では、広告枠面積の50%が表示され、最低3秒再生されれば「1回の視聴」とされている。
PinterestやTwitterを含む、ほかのフィードを軸としたプラットフォームでも、同様の問題に直面しているようだ。また、ユーザーが画面の上から下ではなく、左から右にスワイプするSnapchatでは、コンマ数秒でも動画広告がロードされれば閲覧されたと見なすという。
Snapchatは広告主に対して、たとえユーザーが即座に広告をスキップしたとしても、同サービスにおける広告配信は価値があると説明する。このようなメッセージアプリでは、たとえゼロコンマ数秒でも画面全体に映し出されるため、広告は100%閲覧可能だという。これはFacebookのビュー保証規定と似ている。
ソーシャルメディア側は、広告主に対して、ユーザーが広告をスキップしたくなくなるような広告の制作を促している。広告がプラットフォームのスタイルと合致すれば、ユーザーのエンゲージが増えるからだ。
例としてFacebookの無音の広告を見てみよう。広告主は字幕や人を惹きつける映像を駆使して、人々が広告をスキップするのを阻止している。
新しいクリエイティブの可能性
「私はこの新たなキャンバスに対する広告業界の適応を楽しんでいます」と、メディアエージェンシー「MEC」にて業務執行とデジタルコンテンツマーケティング部門の役員を務めるジアン・ラベッチア氏は話す。「思わず見てしまう字幕、インパクトの高い映像、動画の賢い開始方法など、いま我々は新たな話法の技術の誕生を目撃しようとしているのです」。
Facebookは、フィードのどこで指が止まるのか、ユーザーの行動分析を行っている。どの投稿に、どれくらいの時間で、どれくらいの速さでスクロールするのか、などを調べているという。現代のメディア消費者は、瞬時に広告のメッセージを理解することができるため、価値のあるインプレッションはコンマ数秒で決まると主張したいのだろう。
Adobe Digital Marketingで、主席プロダクトマーケティングマネージャーを務めるモニカ・レイ氏は、多くのネットユーザーは読みたいコンテンツと読みたくないコンテンツを瞬時に判別することに長けてきていることは、明確だと話す。「入手できるコンテンツが大幅に増加するなか、消費者がコンテンツを反射的に読み飛ばしてしまうのは、性質として明らかだ」。
Facebookは第三者による広告効果測定が求められていたのに対応し、ビューアビリティに特化した効果測定企業のMoatが、企業広告の閲覧数を測定することも発表している。
Garett Sloane(原文 / 訳:小嶋太一郎)