Facebook Watch 、独自ニュース番組を続々とローンチ:果たしてユーザーに受け入れられるか?

Facebookが昨秋ローンチした動画セクション「Watch(ウォッチ)」。そのニュース番組群の第1弾が発表された。

これらすべての番組が、Facebook向けに制作された独占オリジナルコンテンツとなっている。参加している会社はABCニュース、地方紙チェーンのアドバンス・ローカル(Advance Local)(アドバンス・ローカルはコンデナストの親会社であるアドバンス・パブリケーションの傘下)、Attn、CNN、FOXニュース、マイク(Mic)、そしてユニヴィジョン(Univision)が名を連ねる。コンテンツのなかには、アンダーソン・クーパーホルヘ・ラモスといった人気アンカーが出演するものもある。番組配信の頻度やフォーマットは、それぞれ異なるようだ。BuzzFeedを含め、今後数週間に渡って、続々と番組が追加でアナウンスされることになっている。

Facebookがニュース番組にあてている予算は、9000万ドル(約99.6億円)と言われている。フェイクニュースがFacebook上で広まってしまったことに対して、彼らが本気で対処しようとする姿勢が伺えるようだ。番組発表のプロモーションからも、Facebookがこの問題を重要視しているというメッセージが伝わってきた。

ユーザーたちの視聴習慣

しかし、Facebook Watchの視聴は、いまだユーザーたちに習慣化されていない。ニュース専門のセクションを追加したからといって、その状況がどう変わるのかは明確ではない。

Watch用のコンテンツ制作に参加したパブリッシャーたちによると、視聴のほとんどはニュースフィード上で起きていると語っている。つまり、わざわざWatchの専用タブをクリックして見るのではなく、フィード上で受け身になって視聴しているわけだ。ビジネスインサイダー(Business Insider)によるとローンチ直後はオーディエンス数が上昇したものの、その後大きく減少しているという。

Facebookのユーザーたちはニュースを読むためにFacebookにログインするわけではない。動画を見たりニュースを読むといった行為は受け身の体験であると、CEOのマーク・ザッカーバーグ自身も指摘している。しかし、それでもFacebookは、何らかの理由でニュースコンテンツに対するチャンスがあると睨んだわけだ。それが実現するためには、フィード上で偶然、動画を見つけるのではなく、ニュース番組を見るためにFacebookにログインするという習慣をユーザーたちに身につけてもらう必要がある。

Facebook担当者の見解

「ニュースは、ほかと異なっている。Watchの本質は、ユーザー自らの能動的な視聴にある。それを考えるとニュースは、相性が良いことがわかる。人々はニュースを毎日読むからだ。毎日のアップデートが欲しいと思うものだからだ」と、Facebookのグローバル・ニュース・パートナーシップの責任者であるキャンベル・ブラウン氏は言う。

Watchで展開されるこれらの新番組をどうプッシュするのか、詳細についてはブラウン氏は言及しなかった。「パブリッシャーたちがプロモーションを行っていく」、そして「我々もプロモーションに関してベストを尽くす」という言葉に留まった。

これらの番組は、ただ受け身で視聴するのではなく、相互のやり取りを生み出すこともFacebookが強調するポイントのひとつだ。CNNによる、アンダーソン・クーパーが司会を務める番組では、オーディエンスが質問をし、投票を行う機能も計画しているという。

パブリッシャーの見方

参加しているパブリッシャーの名前を見ると、どこが参加し、どこが参加しなかったかが目につく。参加企業のほとんどが新しい動画番組やデジタル新企画をはじめられる余力を持った大手放送局となっている。しかし、NBCニュースやワシントン・ポスト(The Washington Post)、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)といった名前が含まれていない点も注目に値する。いくつかのパブリッシャーにとっては、プロモーションに関する不確定要素はあっても、Facebookから制作資金が出るという一点で参加を決められるようだ。

「プレミアムコンテンツに対して、プラットフォームが正当な価格を支払う必要があると、我々は常に声を上げてきた。Facebook側の取り組みとしてこれは非常に重要だ。我々パブリッシャーが持っている懸念について、Facebookは多くの議論を重ねてきた。Facebook Watchを先に進めるうえで、メディア・アウトレットにマネタイズさせることの重要性を理解してもらうことは非常にポジティブな前進と言える」と、CNNのエディトリアル部門エグゼクティブバイスプレジデントでありデジタル部門のゼネラルマネージャーであるアンドリュー・モース氏は言う。

アドバンス・ローカル(Advance Local)が抱えるアラバマ・メディア・グループ(Alabama Media Group)は、Watchのための番組「チェイシング・コラプション(Chasing Corruption)」を制作している。アラバマ・メディア・グループ、コンテンツ部門バイスプレジデントであるミシェル・ホルムズ氏によると、スタッフの負担という意味ではFacebookのための番組制作は大きいものであり、オーディエンスが獲得できるかはわからないとのことだ。それでも、番組を制作することで収益を得られ、彼らの新ブランドであるレッコン(Reckon)を構築でき、そして将来の資金獲得につながるかもしれない。

「制作資金が供給されるタイプの番組制作に移行するチャンスを受け取っていると考えている。そのため、今回のプロジェクトは、ほかのパートナーたちと協働する招待状であると捉えている。我々のローカルジャーナリズムというミッションをシェアすることができ、さらに資金も供給されるとなれば、それは我々にとって非常に良い機会だと言える。このような形で直接資金供給されているローカルジャーナリズムはほとんど存在していない」と、彼女は言う。

険しい道を辿ってきた関係

契約内容はケースバイケースのようだが、毎日のニュース番組の場合は、年間500万ドルから1000万ドル(約5.5億円から約11億円)、毎週のニュース番組の場合は100万ドルから200万ドル(約1.1億円から約2.2億円)の制作予算を1年間に渡って提供すると考えられている。また広告収益の一部もパートナーたちは受け取るかもしれない。一定期間、番組が制作された後の権利はパブリッシャー・パートナーたちが所有することが予想される。

ニュース番組をパブリッシャーたちに発注しているプラットフォームはほかにも存在しており、高品質のコンテンツを作ることができるニュースパブリッシャーにとっては売り手市場となっている。そうした競合のひとつがTwitterだ。ブルームバーグ・メディア(Bloomberg Media)やBuzzFeedに、毎日配信のニュース番組を制作させようとしている。Netflix(ネットフリックス)は、Vox Mediaやタイムズ(The Times)といったパブリッシャーたちからドキュメンタリーコンテンツを購入している。Apple Newsも同様の取り組みを行っている。

Facebookとニュースパブリッシャーとの関係は、これまで険しい道を辿ってきた。1月にはフィード上に表示されるコンテンツは、ユーザーによるものを優先すると発表。ユーザー投稿の方がエンゲージメントが高いことが理由だが、これによってニュースはフィードから大きく排除されてしまった(しかし同時に、権威あるパブリッシャーたちは優先するとも述べている)。選挙広告は「政治的」とラベル表示をするポリシーを発表した。パブリッシャーたちが料金を支払ってプロモーション表示させるニュース記事も同様の扱いとなる。これにはパブリッシャーたちも反対した。ラベル表示されることで偏向報道のような印象を与えるからだ。Facebookはトップニュース記事を表示していたトレンディングトピックス機能を廃止した。これはアルゴリズムによって運用されたニュース選択サービスだったが、陰謀論的な記事も表示されてしまい問題となっていた。Facebookのためにリソースを割いていたパブリッシャーにとっては、こういった一連の動きに対する印象は悪い。最終的に優先度を下げられてしまったわけだから当然だ。

「試験的」「実験的」という言葉

パブリッシャーがFacebookに対して、正しい程度の期待を持つこと。そのことにもFacebookは取り組んできた。ブラウン氏は先日、Facebook上での配信が上手くいかないのであれば、パブリッシャーは去ればよい、という発言をしている。2月に行われたとあるイベントの席で彼女は「ハード・ニュース動画は、マネタイズが非常に難しい。それが変えられない現実だ」とも発言した。そして、ハードニュース関連の動画はユーザーがFacebookに期待しているものでもない、とのことだ。

今回のWatchにおけるニュース番組に関してもブラウン氏は、「試験的」「実験的」という言葉を何度も使っている。そこに底流しているメッセージは、「これは試験的なプロジェクトなのだから、失敗しても仕方ない」というものだろう。

Lucia Moses(原文 / 訳:塚本 紺)