Facebook 、オーディエンスネットワークのモバイルWeb部門を閉鎖へ

Facebookは、オーディエンスネットワーク(Audience Network)のモバイルWeb部門を4月11日に閉鎖する予定であることを、先日認めた

この決定が正確にどのような理由でなされたのかは明確ではない。だが、情報筋によると、モバイルWeb環境でCookieを制限しはじめたブラウザ企業の最新動向や新たなデータ規制、さらにブランドセーフティ問題による潜在的なマイナス影響への対処に社内リソースが割かれるため、この決定は後押しされた可能性が高いという。

「我々はパートナーからどのような需要が増しているかに基づいてビジネス判断を行う。モバイルアプリ群のほかのフォーマットに需要がある。今後はリソースをそこに集中させていく」と、Facebook広報担当者は語った。

FANがたどった道のり

Facebookはオーディエンスネットワークを2014年にローンチした。Facebook広告キャンペーンをサードパーティのアプリネットワークへと拡大する方法を広告主に提供するものだ。2016年には、このネットワークを拡大し、モバイル用Webサイトも含んだ。クライアントにはTikTok(ティックトック)、ティンダー(Tinder)、アクティビジョン(Activision)、そしてパンドラ(Pandora)といった大手アプリ開発企業が含まれている。

最近では、Facebookはオーディエンスネットワークの独立した財務状況を公開していない。しかし、その収益は数十億ドルに及ぶようだ。公に入手できる推計や我々の情報源によると、2019年12月31日に終了した会計年度におけるFacebookの全体収益707億ドル(約7.7兆円)のうち、モバイルWebからの収益は、とても小さい割合しか占めていない可能性が高い。

FacebookのWebサイト向けオーディエンスネットワークによると、オーディエンスネットワークは2018年にパブリッシャーとディベロッパーに対して15億ドル(約1650億円)以上を支払った。2015年の第4四半期では、まだモバイルアプリのみの対応だったが、「年間10億ドル(約1100億円)の収益を生むペース」と、Facebookは発表している。しかし、それ以降、数字を公開していない。野村(Nomura)元アナリストであるアンソニー・ディクレメンテ氏は、2016年にFacebookの収益にオーディエンスネットワークが追加する収益は20億ドル(約2195億円)だろうと推計している。

英国の公正取引委員会(Competition and Markets Authority)は2018年7月から2019年6月にかけて、英国におけるサプライサイド・プラットフォーム(SSP)市場において、Facebookのオーディエンスネットワークは5%から15%のシェアを占めていると推計している。これはシェアの10%から20%を占めるGoogleのアドモブ(AdMob)、同じく25%から35%を占めるGoogleのAdX(アドエックス)に続く形だ。

オーディエンスネットワークにおけるウェブとアプリのあいだで収益の割合がどうなっているかは分からない。しかし、複数の情報源によると、アプリ部門の方が、はるかに大きな割合を占めているとのことだ。今回の決定は、インスタントアーティクル(Instant Articles)にオーディエンスネットワーク広告を差し込むパブリッシャーの能力に影響はないだろう。

オープンWeb環境の変化

オーディエンスネットワークがローンチしてからの数年間に、Facebookの領域外におけるオープンWeb環境は大きく変化した。ブラウザの大部分はデフォルトでサードパーティのWebトラッキングを停止している。そしてブラウザ市場で最大のシェアを誇るGoogleは先月、2年以内にサードパーティCookieの対応を停止する計画を示した。この決定はFacebookのオーディエンスネットワークの妨げとなっただろう。

オープンなリアルタイムでの入札環境も規制当局からの精査の対象となっている。特に、ヨーロッパでは、英国のデータ保護当局は繰り返し、アドテク企業が事態を改善させないと、EUの一般データ保護規則(GDPR)の下で罰金を受けると述べている

先月行われたアナリスト対象の報告では、FacebookのCFOであるデイブ・ウェナー氏は、カリフォルニア州の消費者プライバシー法、そしてオペレーティングシステムやブラウザにおける変更で、特に逆風を受けると予想している。Facebookは自社のプライバシー設定も強化している。Facebookがユーザーに関してシェアしてきたアカウント情報を切り離すことができる、「Off-Facebook Activity」ツールを1月に導入した。

インスグラムが成長株

オーディエンスネットワークの縮小決定は、サードパーティのサイトやアプリへの広告配置という初期の取り組みを停止したときのことを思い出させる。2016年にはFacebookは動画広告エクスチェンジと広告サーバーのライブレイル(LiveRail)を閉鎖した。ライブレイルは、その2年前に4億ドルから5億ドル(約440億円から550億円)で買収したばかりだったが、閉鎖の原因としてアドフラウドとビューアビリティ問題を挙げていた。同年、Facebookは自社で構築したデスクトップ広告エクスチェンジFBXも停止。同年後半には2013年にマイクロソフト(Microsoft)から買収したアトラス(Atlas)アドテクプラットフォームも縮小を開始した。2019年には、オーディエンスネットワークのコネクテッドTVサービスを閉鎖している。

「Facebookには、自社で所有している膨大な在庫があり、収益化を望んでいることは間違いない」と、グループ・エム(GroupM)のビジネス・インテリジェンス部門グローバル・プレジデントであるブライアン・ウィーザー氏は語る。「ほかのプロパティにおいて広告を販売することは、収益分配契約を結ばなければならないため、一般的に収益性が低い」。

その代わりにインスグラム(Instagram)は、Facebookのコアプロダクトに対する「リスクヘッジ」として、比較的有望なものとなってきている。少なくともオーディエンスネットワークにフォーカスしていた時期に、Facebookが予想していたのと比べると良いものだろうと、ウィーザー氏は言う。Facebookはインスタグラムの財務数字を報告で明らかにしていないが、先週、ブルームバーグ(Bloomberg)はインスタグラムが2019年に広告収益で約200億ドル(約2.2兆円)を生み出したという関係者の証言を報じている。

「とても健全な判断」

「オーディエンスネットワークのモバイルWeb部門の閉鎖は『とても健全な判断』だ」と、匿名希望のマーケターのひとりは評した。「Web部門はリスクがもっとも高い。ブランドセーフティ、アドフラウド、ビューアビリティなどの問題が目白押しだ。そして、Googleなどの他社が圧倒している部門でもある。加えて、Facebookによるプレースメントと、ランダムにバナー広告を出すことの差別化が薄れ、彼らのコアなプロダクト価値を下げてしまう」。

Facebookのアプリポートフォリオは長いあいだ、ソーシャルネットワーキング、そしてメッセージ分野が牽引的な存在となってきた。「Facebookは、ユーザーが可処分時間の大半をモバイル端末で過ごす上位のタイトル、ゲーム、出会い系、音楽アプリなどに[ソフトウェア開発キット]をあてがうことで、パフォーマンス広告主の膨大な需要を割り当てることができる」と、モバイルにフォーカスしたアドテク企業アドコロニー(AdColony)の戦略、ビジネス開発責任者であるマット・バラシュ氏は言う。「Webベース環境においては、類似の比較は存在しない。費やされた時間は完全にふたつに分岐している」。

Lara O’Reilly(原文 / 訳:塚本 紺)