Facebookがテレビ電話デバイスのPortal(ポータル)の知名度を上げるため、多額の投資を行っている。調査会社によると、10月からの1カ月半でFacebookはアメリカ国内で、およそ4860万ドル(約55億円)相当のテレビCMを購入した。CMの大半はテレビ通話デバイスのPortalの宣伝だという。
Facebookがテレビ電話デバイスのPortal(ポータル)の知名度を上げるため、多額の投資を行っている。
OTT(オーバー・ザ・トップ)広告の分析を行っているiSpot.tvによると、10月1日から11月13日までのあいだにFacebookはアメリカ国内で、およそ4860万ドル(約55億円)相当のテレビCMを購入した。CMの大半はテレビ通話デバイスのPortalの宣伝だという。これによりFacebookは同期間中、テレビCMのバイヤーとして上位20社に名を連ねた。これはテレビCMを多く打ち出しているパラマウント(Paramount)やウォルマート(Walmart)、サムスン(Samsung)などの企業より上位だ。
Portalのエントリー機種の価格はおよそ199ドル(約2万2500円)で、ビデオ通話以外にも写真やメッセージのやりとりも可能となっている。また、Facebook Watch(ウォッチ)やYouTubeにアクセスできる機能も搭載されているほか、Amazon Alexaとの統合も可能だ。
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FacebookのPortal担当者は、公式発表前のコメントは差し控えるとしていた。
FacebookとテレビCM
ブラックフライデーと年末商戦の時期が近づくなかで、FacebookがPortalのマーケティングに多額の投資を行うのは理に適っている。Facebookによる今回の支出額は、ほかのデバイス販売のトップ企業に並び立つ。iSpot.tvによる推定金額を見ると、たとえばAppleはiPhoneのテレビCM費用だけをとってもおよそ5270万ドル(約60億円)、GoogleのPixelへのテレビCM費用はおよそ5050万ドル(約57億円)だ。
だが、Facebookが今回のような規模でテレビCMを購入するのは珍しい。iSpot.tvによると、たとえばFacebook WatchのテレビCM費用は2017年初頭から通算しても、わずか550万ドル(約6億円)程度だという(iSpot.tvのデータによると、Facebookによる今夏のテレビCM支出は、680万ドル[約77億円]近い。この時期に同社はアメリカでの選挙におけるFacebookの影響とフェイクニュース、ユーザーのプライバシー関連のデータ漏洩について謝罪する「ヒア・トゥギャザー(Here Together)」キャンペーンを行った)。
FacebookはテレビCMに不慣れなわけではない。同社はアメリカ国内で既存のテレビ番組向けにCMを放送してきた。Facebookプラットフォームを椅子と比較した不思議なCMや、前述の謝罪CMなどだ。
FacebookがPortalを一般家庭に普及させようと強くプッシュしていることは明らかだが、組織としてのFacebook自体が障害となってしまう可能性がある。ユーザーのプライバシー保護に関していえば、Facebookの信頼は崩壊してしまった。フォーチュン(Fortune)誌に掲載された世論調査企業のハリス・ポール(Harris Poll)の調査によれば、Facebookの個人情報保護能力を信頼していると回答したのは、たったの22%である。カメラやマイクが搭載されたデバイスを販売する企業としては、いささか旗色が悪い。
テレビの力はまだ大きい
それはともかく、ほかの大手テック系プラットフォームと同様に、Facebookは新製品の発売時にアメリカ国内の既存テレビ局のCMを活用するようになったといえるだろう。これは競合他社にとっても一般的な戦略となっている。iSpot.tvによると、たとえばAppleは10月のはじめから総額で、およそ1億910万ドル(約123億円)のテレビCMを購入したと見られている。また、Googleの場合は同期間で、およそ1億2090万ドル(約137億円)だ。
TVRevの主席アナリスト、アラン・ワーク氏はこれについて次のように語った。「もうテレビなんて誰も見ないと主張する人は多いが、一番悲観的なデータですら、アメリカの全家庭のうち4分の3はなんらかの形でサブスクリプション形式のテレビ契約をしていることが分かる。年齢層が一定以上になると、その割合はさらに上がるのだ。テレビの力はいまでも大きい」。
Sahil Patel(原文 / 訳:SI Japan)